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亀裂

 朝一番に学校で白葉ちゃんに本気で頬を叩かれ、胸ぐらを掴まれる。

 その勢いで机がかなり動き、ぶつかった小夏の机から物が色々と落ちてくる。


 少し広がったスペースに、私は横に倒れ、その上に白葉ちゃんが馬乗りになった。


「元に戻すからって言うからあたしは協力したんだよ! なんで悪化させてるの!」


 白葉ちゃんの唾が私の顔に掛かる。私は笑顔を浮かべて白葉ちゃんを見る。


「協力ありがとう白葉ちゃん」


 そう言うと、白葉ちゃんはもう片方の頬も叩いた。


「ふっざけるな!」

「白葉ちゃんは私を信じすぎなんだよ。あまり人を信じすぎないほうがいいと思うよ」

「お前が簡単に人傷つける奴だって知ってたら協力なんてしなかった!」


 白葉ちゃんが振り上げた拳は私に当たる事はなかった。


 日南さんと大澤さんが白葉ちゃんの腕を止め、あゆちゃんが私に覆い被さった。


「何やってんの入雲! よく分からないけど友達殴るな!」

「そうよ。なんであなた達まで喧嘩してるのよ!」


 白葉ちゃんが身体を引っ張られて私から退いたので、私はスカートの埃を落としながら立ち上がる。


「入雲まじサイテー。依吹ちゃん大丈夫? 保健室行く?」

「ううん。大丈夫」


 私は白葉ちゃんを見下ろし、その白い頬に手で赤い跡をつけた。


 その瞬間を見た小夏が、急いで私達の間に入ってきた。


「なんで白葉っち叩くんだ依吹っち! 友達だろ!」


 小夏は私の頬に目を向けてハッと息を飲み、白葉ちゃんの手を見た。


「どうして……。どうして二人ともお互い叩いたんだ……」


 白葉ちゃんは日南さんと大澤さんの手から逃れ、行こうと小夏の手を取って離れていく。

 あゆちゃんは私の手を取って、トイレでハンカチを濡らして私の頬に当てた。

 日南さんと大澤さんは、荒れた教室を直していた。

 すみちゃんはただ、自分の席で萎縮していた。


◇◆◇◆◇


 この日から、私達の関係はちょっと変わった。

 すみちゃんとあゆちゃんの間には、相変わらず会話はない。

 すみちゃんは日南さんと大澤さんと。あゆちゃんは私といるようになる。


 白葉ちゃんは小夏と。たまに小夏が私に話しかけようとしてくるけれど、白葉ちゃんがそれを阻止している。

 そう。三月にして、関係性の崩壊が起きた。


 そして、この崩壊はそのまま二年に引き継がれた。

 全員文系選択だったからか、騒動を知らない先生達は相性や成績を考えてなのか、私達を全員同じクラスにした。


「依吹ちゃん同じクラスだね。いぇーい」

「イェーイ」


 あゆちゃんと両手を合わせてハイタッチしている様子を、白葉ちゃんが遠目から伺っており、小夏はそんな私達を気まずそうに見ていた。

 そんな様子に痛む心を無理やり縛る。


 でも──小夏を巻き込んでしまったのは本当に申し訳ない。


 この感情だけはどんなに縛っても消えない。

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