仲裁
あれ以来、すみちゃんは少し距離を取るようになった。私からもあゆちゃんからも。
かろうじて日曜日は来るけれど、話しかけてもずっと何も答えず、ただひたすらに体育座りでうずくまっているだけ。
あゆちゃんも若干気まずいのか、いつものようにすみちゃんに話しかけにいくことはなく、ここ最近は大澤さんと行動している。
逆にすみちゃんは日南さんとよく一緒にいる。
「いぶっちゃん、最近すっちゃんと何かあった?」
「あゆっちも最近大人しいよな。いつもはイェーイ! って感じなのに。喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩ではないのは確実なんだけどね。なんて言えばいいのか、正直よく分からなくて」
特に、なんの事情も知らない小夏を巻き込むわけにはいかないし、すみちゃんが言わない事を私が勝手に言っていいはずもない。
「依吹っちも大変だな〜」
「私はそこまでだよ。むしろ今一番大変なのは七木さんだと思うよ」
すみちゃんの様子の変化は噂に回っていたのか、他クラスの人が時々野次馬として様子を観にくる。
ただ、あゆちゃんと喧嘩したみたいな感じで広まっているっぽく、明るめの子がよく、あゆちゃんに謝りなよと笑いながら話しかけていたりする。
逆にすみちゃんは、よく男子から話しかけられていた。
「ねえ、君らあの二人どうにかできない?」
学食から帰ってきた日南さんと大澤さんは、それぞれすみちゃんとあゆちゃんに目を向けた。
「どうにかって何がさ。よく分からないけどあたしらを面倒に巻き込まないで」
「だって気まずいんだもん。あゆは最近沸点低くなったのか、愚痴ばっかで聞いてる方が疲れるし」
「純蓮の方はもっと重症ね。ずっと静かで話しかけても特に反応もなくて。かと思ったら時折泣きそうになるのだもの。情緒不安定よ」
「話聞いても二人とも教えてくれなくてさ、心底困ってるんだよ。別に面倒だから見捨てるとかはしないけどさ、こっちだってストレス溜まるし。いつ爆発するかも分からないし。ウチらも険悪になったら最悪じゃん。ただでさえ入雲が二グループと対立しているせいでそこまでこのクラス仲良くないのに」
大澤さんのその言葉に白葉ちゃんはまず舌打ちで返事した。
「何? あたしのせいって言いたいの?」
「別に入雲のせいとは思わないけど。原因は向こうにあることは知ってるし。でもどこかが対立するだけで空気は悪くなるでしょ。あゆと純蓮のせいでその空気がさらに悪化してるし」
「とにかく、私達ではさらに衝突が増えそうだからあなた達にお願いしたいのよ。あの二人もあなた達ならそこまで強く出ないでしょう。白葉さんに関してはサポートに回った方が良さそうだけれど」
「こっちに何か利はあるわけ?」
「ファミレスくらいなら奢ってあげるわ」
「ファミレス! ──まあいいんじゃないか? やってみるだけやってみて。喧嘩はない方がいいからな!」
小夏のその一声で、不服そうだった白葉ちゃんもため息ついて渋々受け入れた。
「あゆの方はあたしとこなっちゃんでやるからさ、すっちゃんはいぶっちゃんお願い」
小夏がトイレで外している間に、白葉ちゃんが面倒そうにため息混じりで話しかけてくる。
「白葉ちゃんはさ、どこまで知ってるの?」
「今回の件に関しては何も知らないよ。知っているのはいぶっちゃんでしょ」
「ごめん、言葉が足りなかった。七木さんに関しては?」
「それに関しても本人から話されたことは少ないよ。恋愛相談をたまに受けるくらい。どこまで感情を出していいのかとか。今回に関しては本当に突っ込みたくなかったんだよね。絶対に面倒だから。喧嘩じゃない。それは分かってる。だからこそ面倒。すっちゃんが割り切ればとか、橋野が謝ればとか、そんな単純な話じゃない。変に拗れちゃったからややこしくなった。拗れた感情は内で育てられるから、外からどうこうとかそういう次元じゃないんだよね。でもまあ、すっちゃんの方はいぶっちゃんが頑張ればどうにかできると思うから。惚れた相手には弱いっていうしね」
白葉ちゃんが私とすみちゃんが付き合っていた理由を知らないとなると、アドバイスは期待できないし、今回の原因も話せない。本当に、白葉ちゃんの言う通り私一人でどうにかしないといけない。
でも、元はと言えば私のせいだし、覚悟決めて向き合わないと。




