表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/100

カラオケ

 こんな大勢でのカラオケは初めてでちょっとワクワクしている。


「そういえば、あゆ今日部活は?」

「サボりサボり。部活よりも遊びだよ遊び」

「じゃあなんで部活入ったんだ?」

「青春だよ青春。部活も青春、サボりも青春。これぞ高校ライフ!」


 部活……中学でも入らなかったからあまり良さ分からないけど、入った方が楽しかったのかな。

 でも入りたいのあるかと問われると答えられないし。


「あゆちゃんはどうしてバレーにしたの?」

「中学の頃友達に誘われたから、ずるずる続けてる感じだね。割とゆるい空気だし」

「楽しい?」

「楽しいよ。やっぱ勝てると嬉しいし、負けてもそのあと打ち上げあるしね。なになに興味ある? 入っちゃう? 入っちゃうバレー部?」


 あゆちゃんは目をキラキラさせて私に迫ってくる。


「ちょっとやめておきます」

「ざんねーん」


 部屋に入ってソファーに座ると、いつも通り横に小夏、もう一方はあゆちゃんが座った。

 すみちゃんは小さくあっ……と声を出したが、何事もなかったかのようにあゆちゃんの隣に座った。


「なに純蓮? 今なんか言った?」

「気のせいじゃないかな。ストレス発散するんでしょ。歌いなよ」

「ではお言葉に甘えて歌わせていただきましょーう!」


 あゆちゃんをトップバッターに、順にマイクを回していく。


「小夏って意外とオタク趣味だよね。中学の時とか友達がそっち系だったの?」

「違うぞー。中学は話できる友達はいなかったな。話入ろうとすると皆そそくさと逃げちゃうんだ」


 偏見かもしれないけど、そういう系統の趣味を主に持つ人達は小夏のようなタイプは元気すぎて少々気疲れしてしまうのではないか。故に皆避けてしまっていたのだろう。


「じゃあなんでこんな趣味してるの? 小夏の周りにいるタイプじゃないでしょ?」

「あたしいつも夜中ずっとテレビ付けてるから、自然に目に入るんだ」

「へーなんで?」


 小夏が答えにくそうにしていると、白葉ちゃんが歌うのを中断して会話に入ってきた。


「別にいいじゃんこなっちゃんがどんな趣味してようが」

「別に趣味悪いとか一言も言ってないじゃん」

「そもそもそんな根掘り葉掘り聞く必要ないでしょうが」

「なに? 最近やたら突っかかってきて。別に大した意味のないコミュニケーションじゃん」

「人のプライベートのこと無遠慮に聞くなって言ってるんだよあたしは」

「わたしら一般人で共通趣味もこれといってないのにプライベート聞くなとか意味分からないんだけど。じゃあ何? 永遠に学校の話しとけっての?」

「別にそこまでは言ってないじゃん。線引きしろって言ってるんだよ」


 立ち上がりそうになったあゆちゃんをすみちゃんと二人で阻止して座らせたままにする。

 白葉ちゃんの方は小夏が胸に手を当てたら素直に座り直したっぽい。


「もういいぞ白葉っち。白葉っちが気にすることじゃないしな。次はあたしの番だな。マイク借りるぞ。──辛気臭いぞ皆ー! ストレス発散しにきたのに溜めてどうする! 全て外に追い出すぞー!」


 小夏のマイクを通したその一声で、白葉ちゃんとあゆちゃんは二人して黙った。ただ、若干まだわだかまりはあるっぽい。


「依吹ちゃんはさ〜、わたしのこと、考え無しの軽い人間だと思う?」


 小夏が歌う明るい曲調とは反対に、あゆちゃんは少し暗い声色で投げかけてきた。


「沙雪はさ、結構俯瞰しているタイプで大人に見えて、大澤は結構リーダーシップ発揮して皆を引っ張って、純蓮は自己主張あんましないけど頭がいいからさ、なんていうか、皆結構周りから人が出来ているみたいに思われているのに、わたしはそういうの無くて、とにかく楽しいことやっている感じだから、周りから見たら子どもっぽいみたいで……」


 すみちゃんの方に視線を投げると、首を横に振られた。すみちゃんは特に口出ししないということだろう。


「誰にでも声をかけられるあゆちゃんはすごいと思うよ」

「大澤だってそうじゃん」

「でも、こうして私をカラオケに誘ってくれたのはあゆちゃんで、小夏の勉強会をお願いした時、瀬野君の提案に一番に乗ってくれたのもあゆちゃんだよ。人を輪に入れようとすることができるのは、あゆちゃんの良さだと思う。人は大人っぽい人に安心感を抱くと思うけど、時として子どもっぽい人を欲する時があるから。もし、あゆちゃんが自分以外大人っぽいって思うなら、卑下するんじゃなくて、そのあゆちゃんにしかない良さを大事にして」


 あゆちゃんは私の肩に両手を重ねて置き、さらに顎を乗せた。


「ありがと、依吹ちゃん」


 あゆちゃんはそのまま私の頬に柔らかで湿っぽい唇をつけてキスをした。

 それを見た白葉ちゃんは思いっきり息を吸い、小夏は口を開けたまま声を出さずに固まり、すみちゃんはそっと立って部屋を出ていった。


「わたしビッチとか尻軽とか言われてるけど、おかしいね。これがファーストキスなのに。あ、口じゃないからノーカンから。でも、どっちにしろわたしのはじめて依吹ちゃんにあげちゃった」


 一体私はどんな反応をすればいいのだろうか。

 カラオケが終わっても尚、答えは分からなかった。


「じゃあまた学校でね〜」


 解散してすみちゃんと二人になると、人が見えなくなった時、不意にあゆちゃんと同じ場所にキスされた。


「これは上書きだから。前言ったちゃんとしたキスはまた別だから。そういうことだから、じゃあね」


 すみちゃんはそう言って、早足で家の中に入ってしまった。

 本当に私はどんな反応をすればいいのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ