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出かける予定

 翌日、登校して一番に、いつものように荷物を下ろした後ロッカーから教科書やノートを取って机に入れる。


 すみちゃんは相変わらず皆の中心で笑っている。名前呼びに戻ったところで、学校での私達の関係は変わらない。あれは二人の時だけのものだから。


「依吹っちおはよー!」


 座っている私に飛びつく勢いで抱きつきにきたのは、いつも通り元気いっぱいの小夏だ。


「小夏は元気だね〜。小夏を見ているとこっちまで目が覚めてくるよ」


 いつものよう小夏の頭を撫でる。心なしか元気に横揺れする尻尾が見える気がする。


「ふっふっふっ。小夏ちゃんが元気なのは朝だけで授業を聞くと眠くなるのです!」

「誇るところじゃないよ」

「そんなことより依吹っち! 日曜日ちゃんと空けた⁉︎」

「空けたよ。今週の日曜日は丸一日小夏さんのものです」

「イェーイ! デートだー!」

「そうだね。で、何するの?」

「服見て〜食べ歩きして〜映画見て〜カフェ行って〜カラオケ行って〜夕飯食べて〜何かする!」

「一日で足りるかな〜」

「足りるかなじゃない! 足りさせるのだ!」

「まあ私は小夏についていくよ」


 小夏は思いっきり立ち上がって親指を立てた。まかせろ。という意味でしょう。


「それに、足りなかったらまた出かければいいし! あたし遊園地も行きたい!」

「事前に言っといてくれたら空けとくよ」

「ほんと⁉︎ じゃあ夏休みは〜」

「それはちょっと先過ぎるよ」

「依吹っちとやりたい事たくさんあるもん! 海行って〜プール行って〜夏祭り行って〜花火見て〜お泊まり会もしたい!」

「夏休みは小夏との予定で埋まりそうな勢いだね」

「あたしは全部依吹色に染めてもいいのだ!」

「私とだけなんて勿体無いよ。小夏は友達沢山いるんだから」


 小夏は天高くあげた腕に指を一本だけ掲げ、その指をゆっくりと下ろして私を指した。


「でも一番好きなのは依吹だ!」

「ありがとう」

「依吹は⁉︎」

「私も小夏好きだよ」


 小夏は私の膝に座って、顔を上げて目を合わせてくる。


「両思いだ!」

「そうだね」


 そして小夏はいつもの通り、ホームルームになっても戻らず、先生による戻れ指示によって、渋々いつものように芝居がかりながら自分の席に戻っていった。


◇◆◇◆◇


 学校から帰宅し、家の門に手をかけると後ろから声をかけられた。


「いぶ」


 手を合わせ握りながら、落ち着きなく指を摩り合って、目を合わせないよう伏目になっているすみちゃんがすぐ後ろにいた。


「すみちゃん! 電車とか同じタイミングだったんだね。全然気づかなかった。声かけてきてくれて嬉しい」

「夏休み、小森さんと遊ぶの?」

「……あー! 朝の聞こえてたんだね。うるさくしちゃってごめんね」

「それは別に良くて。仲良いのはいい事だし。それより夏休みの事……」

「小夏と遊ぶかって事? あれはまあ、やりたい事羅列したみたいなもので確定って事じゃないけど、小夏が遊びたいっていうなら一緒に遊ぶよ」


 すみちゃんが何か喋った時、ちょうど後ろにトラックが通ってよく聞き取れなかった。


「ここだと危ないしうち上がる? 大したおもてなしはできないけど、外で話すよりかはいいよ」

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