表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/27

意志

 小夏は呼び込み兼受付を行い、私と白葉ちゃんはディーラーの役を行う。


「来てやったわよ! 小森小夏!」


 カードを配っていると、そんな声が廊下から聞こえてきた。

 ディーラーは各ゲーム二人一組なので、ちょっとお願いして、一旦抜けさせてもらった。


 白葉ちゃんも気になって抜けたのか、二人で廊下に出た。

 小夏は私服を着た、茶髪に黒目の女の子に仁王立ちされている。


「何よその格好、高校デビューとでもいいたいの? しばらく顔見せなかったくせに、随分と楽しんでいるみたいね」


 キッと睨まれて、あの小夏ですら苦笑いを浮かべている。


「あの、すみませ──」

「何やってんの美浜みはま!」


 白葉ちゃんは女の子に近づき、音を立てて頭を叩いた。


「白葉ちゃん⁉︎」

「痛った〜! 何するのお姉ちゃん!」


 …………お姉ちゃん?


「迷惑かけるなって言ったでしょ」

「別に迷惑かけてないでしょ!」

「業務妨害。いいからとっとと離れなさい」

「なによなによ! 久しぶりに顔を見せてあげたんじゃない! 元はと言えばお姉ちゃんが──」

「いいから、邪魔するな」


 白葉ちゃんが何度か手を握って開くと、罰が悪そうな顔で小夏を指す。


「また来るから逃げるんじゃないわよ!」


 そう言って、逃げるように去っていった。


 小夏は後ろから私の服の裾をギュッと握り、顔を背中につけた。


「小夏?」

「ごめんねうちの妹が。ちょっと気が強すぎるというかなんというか。素直じゃない気持ちが先行しすぎちゃう子で。とにかくお騒がせしました」

「美浜っち、悪い奴じゃないけど厳しいから苦手だ」


 怖かったというよりは、親に怒られた子どもが、味方になってくれそうな人の背中に隠れるみたいなものだったようで、とりあえず安心した。


「美浜の方もこなっちゃんが嫌いとかじゃなくて、むしろ逆だから、いぶっちゃんも安心してね」

「白葉ちゃんがそう言うなら大丈夫だね」


◇◆◇◆◇


 役割に戻ってしばらくすると、美浜ちゃんが顔を出した。今度はちゃんと出し物に参加しにきたみたい。

 白葉ちゃんがいる方の席につき、結構大胆にチップを賭けているよう。


「お姉ちゃんイカサマしてるでしょ!」

「するわけないでしょ。そもそもそんな技術持ってるわけない。単にあんたの運が悪いだけ。はい、座った座った」


 結局次のゲームで全てのチップを失ってしまったのか、悔しそうにお菓子をもらって出ていった。

 そしてしばらくして、また入ってきた。今度は私の方に来た。


 しばらくは勝てたのもあって普通に楽しんでいたけれど、負けた瞬間、空気が変わって私に話しかけてきた。


「あなた、小森小夏と親しげにしていたわね。一体なんなの?」

「小夏とは友達だよ」


 美浜ちゃんは軽く舌打ちをし、呼び捨てなんて馴れ馴れしい云々呟いていた。


「そう。あなたの事はお姉ちゃんから聞いているわ。色んなことを聞いてきた。その上で聞くわ。あなたは本当に小森小夏の友達だと言えるの?」


 凄く棘のある言い方で言葉を紡ぐ。


「私はそう思っているよ」

「でも、結局あなたも小森小夏にうんざりして最終的には離れるのでしょう。やっぱり、小森小夏の側にいられるのは私だけなのよ。それなのに──」


 美浜ちゃんはトランプを強く握りしめて、折り目がつきそうだったので、流石に丁寧に扱ってほしいと注意した。


 美浜ちゃんはトランプを強めに置くと、私を指差す。


「私はあなたの事認めないから!」

「えっと……。多分、何かあったんだよね。だから心配なんだよね。私のこと知らないだろうから、安心してなんて言えないけど、私は小夏と友達でい続ける。これだけははっきりと言える。私にとって小夏は、かけがえのない友人だから」


 美浜ちゃんは手を強く握りしめ、口を震わせる。


「信じられるわけないでしょ。お姉ちゃんですら、一度小森小夏を見捨てたのに、あなたみたいな意志の弱そうな人間が、側にい続けられるわけないじゃない! 藍川依吹! 私はあなたを信じない!」


 その叫びを聞き、白葉ちゃんが飛んできて拳骨を喰らわせた後、うちの愚昧がお騒がせしました〜と、廊下の外まで引きずって行った。


 白葉ちゃんは戻ってきた後、あまり真に受けないでと言ってくれて、その場では当たり障りない返事を返したけど、家に帰ってからも、やっぱり言われた言葉が忘れられない。


 私が今までずっと人の本音を抑えつけさせてしまっていたのは、意志が弱そうで、自分をあまり持っていない人間に見えたからなのだろうか。だから、信頼できない人間になってしまったのだろうか。


「すみちゃんなら、何か分かるのかな」


 私の事を私以上に理解しているすみちゃんなら。

 でも、すみちゃんはきっと、答えない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ