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お化け屋敷

 今日は文化祭当日。私にとっては校内を普段着で過ごすという、少し変で、それでいてワクワクする日。


「いぶっちゃん、普段からこれ着てるの?」


 白葉ちゃんは腕を回したり伸ばしたりしながら可動域を調べている。


「うん、そうだよ」

「いくら趣味とはいえ、この服普段着にできるのすごいね。あたしは面倒でジャケット脱いじゃうよ」

「私も室内とかでは脱いだりするよ」

「多分いぶっちゃんが想像しているのとは違うよ。あたしは脱ぎ捨てちゃうから」

「私は流石に皺になっちゃうからできないな」

「偉いね〜」


 白葉ちゃんは私の頭を片手間に撫でる。

 そんな中、小夏が勢いよく教室に入ってきて、私に向かってくる。


「どうだ依吹っち! 似合うか⁉︎」


 飛びつこうとする小夏を、白葉ちゃんが片手で制御した。


「今日はダメ。人に服借りてるんだから、汚すような事しないの」

「仕方ないな〜」

「仕方ないじゃない」


 小夏は一歩下がり、両手を広げてくるくると回り始めた。


「似合うか⁉︎」

「似合う似合う。だから少し落ち着きなさい」

「うん、似合うよ。私が来ていた時よりずっと」


 小夏はピタッと止まり、両手を上に大きく伸ばした。


「依吹っちと白葉っちも似合うぞ!」


 小夏は倒れるように私達に寄りかかり、二人で小夏を支える。


「文化祭楽しむぞー!」

「そうだね」

「でも暴れすぎないこと」


 私達のシフトは午後からの為、午前は三人で色々回った。


「お化け屋敷だ!」

「一体この学校にはお化け屋敷が何個あるのやら」


 白葉ちゃんがそう零すくらい、どの学年の出し物を見ても、必ずお化け屋敷があった。


「一個くらい入ってみる?」

「いいな!」

「え、いや、いいよ」


 白葉ちゃんは気が進まないみたいだったけれど、小夏に引っ張られて入らされたので、私も後ろからついていく。


 しっかりと暗く、意図的に光量が弱い懐中電灯にしているのか、足元がギリギリ照らせるくらいだった。そのおかげか、仕掛けがうまく見えないので、人がいきなり出てきた時や何かが触れた時の驚きがしっかりとある。


「雰囲気見たでしょ。もう出ようよ」

「そんな広くないから大丈夫だ!」


 小夏はどんどん進んでいき、ゆっくりと動く白葉ちゃんはいつの間にか置いてかれたのか、後からついてきた私の腕をしっかりと掴んだ。


「白葉ちゃん、もしかしてホラー苦手?」

「ちょっと……」

「ごめんね、知らなくて。引き返す?」

「引き返しても引き返さなくても多分同じくらいの距離だから大丈夫」


 白葉ちゃんはそう言って、さらに強く腕を握る。

 脅かしがあるたびに、白葉ちゃんは声こそあげないものの、身体が強く反応していた。


「はぁ……疲れた……」

「お疲れ様」

「白葉っち、文化祭のお化け屋敷もダメなんだな〜」


 白葉ちゃんはこの〜と言いながら、小夏の頬を引っ張ったりしていた。


「そろそろ時間だから戻ろうか」

「あ、ほんとだ。こなっちゃん行くよ」

「おー!」

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