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文化祭準備

 小夏が勢い余って私の肩に足を掛けて立ちあがろうとし、ティーチャーストップが掛かった体育祭からまもなくして、今度は文化祭の話し合いが行われる。


「体育祭は敗退したが、文化祭では絶対に人気獲得するぞ!」

「おおー!」


 中原君の気合の入った掛け声により、一部を除いて皆声を出して意志を表す。


「で、何するの?」

「あたしカジノやってみたいぞ!」


 小夏は前のめりになりながら立ち上がり、手を高々と上げながらそう口にした。


「お前カジノとか知ってたんだな」

「調べてきたからな! 交換品お菓子にして、余ったお菓子を貰うんだ!」


 おそらく小夏的にはカジノとかどうでもよくて、タダでお菓子を貰うことが狙いなのだろう。


「小夏、交換品お菓子にするのはクロ寄りだからできないよ」

「そうなのか⁉︎」

「参加者全員に、参加賞として同じ量配るとかならいいと思うけどね」

「じゃあ余分にいっぱい用意すればいいな!」

「こなっちゃんはお菓子にしか興味ないんだね」

「理由はともかく結構面白そうね。反対意見がないなら別にいいと思うわ」


 そういうわけで、私達のクラスはカジノをすることになった。

 内装班、小物班、買い出し班に分かれて、かなりの期間を費やして準備をした。


◇◆◇◆◇


 日曜日。今日もいつも通りすみちゃんが来た。ただ、今日は他にも大勢やってきた。小夏や白葉ちゃんだけでなく、橋野さん達もいる。


「うぇーい──うぉっ⁉︎ な、なんだなんだ、このJK集団は⁉︎」


 バイトが休みで珍しく家にいる兄が、いつものように何の意味もなく私の部屋を訪れ、クラッカーを鳴らしながらそんなことを言った。


「お邪魔してます」


 皆が口を揃えてそう言うと、兄はどうぞごゆっくりと言って、開ける時同様静かにドアを閉めた。


「依吹っちの兄ちゃんか⁉︎」

「うん、そうだよ」

「雰囲気いぶっちゃんと似てないね」

にいはどちらかと言うとお調子者だからね。いつも私をからかってくる」

「でも依吹ちゃんからかうためにわざわざこういうの買ってるって思うとなんだか可愛いね」


 橋野さんは兄が落としていったクラッカーを拾って、紙テープだけ丁寧に回収した後、隣の大澤さんや白葉ちゃんの頭に乗せたりして遊んでいる。


「いぇーい、赤い糸〜」

「あゆが運命の人とか勘弁して」

「酷〜い。じゃあ依吹ちゃん小指出して〜」


 すみちゃんはさりげなく私の手を抑えると、少し前のめりになって話す。


「そんなことより早く服決めよう。時間かかっちゃうかもしれないし」


 そもそも何故我が家に皆集まったかというと、カジノの雰囲気に合わせて、皆なんちゃってでもいいから正装しようという話になった。けれど、学生がよくイベントごとに利用するようなレンタル業者では正装を取り扱っておらず、正式な場所でレンタルすると高額になる為、その類の服を多く持つ我が家に皆来た。


「はえ〜高そうな服〜」


 白葉ちゃんはクローゼットの中の服を見ながらそんなことを口にする。


「でも中古も混じってるから、思ってるほどじゃないよ」

「じゃああたしはできれば中古借りたい」

「別に汚してもそんなに気にしなくていいよ。基本洗濯機で洗える物だから」

「なら、まずは洗濯機で洗えない物を取り出してちょうだい。それは選ばないようにするわ」


 日南さんに言われて洗濯機不可の物を取り出していき、物干しスタンドに掛けていく。


「見ろ依吹っち! ブカブカだ!」


 小夏は適当に取ったジャケットを着て、両手を広げる。かろうじて指の先が出ており、思わず苦笑いをする。


「小夏はこっちのサイズだね」


 私は小学生時代に着ていた物を指す。


 小夏が意気揚々と選んだ服を着て、ぴったりだ! と、皆に見せびらかす。ただ、すみちゃんだけはどこか複雑そうな表情をしていた。

 それに、他の皆はデザインで結構悩んでいたが、すみちゃんだけは着目している点が違うように感じた。

 服を摩る。目を瞑る。裏面を見る。デザインというよりは生地で選んでいるかのよう。

 皆が続々と決める中、すみちゃんだけは残ってずっと悩んでいる。


「純蓮〜いつまで悩んでるの。日が暮れるよ」


 すみちゃんはハッとしたように後ろを振り返り、暗くなり始めている空を見て焦っている。


「ご、ごめん! すぐ決めるから!」


 すみちゃんが適当に取り出そうと伸ばした手を握って止める。


「大丈夫だよ七木さん。焦らなくていいよ。遅くなっても送っていくから安心して」

「ずるいぞ依吹っち! あたし達のことも送れー!」

「こなっちゃんに関しては移送になりそうだけど」

「どういうことだ?」

「そういうとこだよ」


 白葉ちゃんは私の背中に飛び乗った小夏を指した。


「ちょうどいいし、小夏をこのまま送っていってもいいよ。皆それなりに離れているだろうしね、暗くなる前に帰った方がいいと思う」

「じゃあそうしますか。すっちゃん、先行くね」


 白葉ちゃんが部屋を出たのを皮切りに、皆すみちゃんに別れを告げて帰路に着く。


 駅まで送り、皆が改札に入っていったのを見届けて家に戻る。


「どうすみちゃん、決まった?」


 ワンセットを手に持つすみちゃんにそう声をかける。


「うん、決まった」


 すみちゃんが見せてきたものは、数回しか着たことがない、比較的新品と呼んでもいい代物だった。


「それなら良かった。じゃあ、帰ろうか」

「うん」


 家を出た後、いつものように手を繋ぎ、すみちゃんを家まで送り届ける。

小夏の靴は白葉が回収してます。

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