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雲一つない快晴。まさしく絶好の体育祭日和である。
いつもとは違い、配られたクラスTを着て、会話を弾ませながら校庭に出る。
「それにしてもいぶっちゃん、なんでその言葉入れようと思ったの?」
白葉ちゃんは私のクラスTに書かれたメッセージを指した。
「実は、クラスTに入れる言葉を聞かれている時、兄ともやり取りしていて。兄に送るはずの言葉を間違えて送っちゃったの。既読ついちゃったから取り消すに取り消せずで」
「なるほどね〜。まあ面白いから良いと思うよ。それに」
白葉ちゃんは写真撮影に一区切りついて、こちらに走ってくる小夏を指差した。
「優勝するぞ依吹っち! 白葉っち!」
小夏は私と白葉ちゃんの肩に腕を掛けた。
「こなっちゃんで隠れるしね」
「なんの話だ⁉︎」
「クラスTのメッセージの話だよ」
「おお! あたしは友情努力優勝だ!」
「やっぱ無難が一番だよね」
そういう白葉ちゃんのメッセージは平和が一番で、あまり理由を知る気がおきないメッセージだ。
「依吹っちはどんなのだ? えーっと、勝手に食べるな? 狼さんに襲われているのか?」
「私は赤ずきんじゃないよ。間違えた言葉送っちゃったの」
「そうか! でも味があって良いと思うぞ!」
「ありがとう」
「ヘイヘーイ」
いつの間にか近づいていた橋野さんが、小夏と同じように私達の肩に腕を掛けて話しかけてきた。
「せっかくの体育祭、写真を撮りましょー!」
「いいけど勝手にイムスタにあげないでよ」
「入雲ノリ悪くなってんじゃ〜ん」
「あんた見境なしに承認するからフォロワーにクズらいるじゃん。あいつらにあたしの近況知られたくない」
「しゃーないから後で個人的に送るだけにしてあげるよ〜。ほら、藍川さんと小夏も。せーの、イェーイ!」
撮った写真を受け取る為に、橋野さんと連絡先を交換した。
「藍川さんイムスタやってないの?」
「うん。あまり入れる機会がなくて」
「えーもったいない〜。イムスタ入れようよ! JK生活の必需品だよ!」
「いぶっちゃんは橋野みたいにバカスカ写真撮って逐一投稿したりしないから不要だよ」
「入雲ひど〜い!」
「あとあたしもイムスタ入れてないぞ!」
「えー意外! 小夏は入れてるかと思ってた。でも確かにフォロワーに小夏いなかったわ。なんで入れないの?」
「何度もパスワード忘れたからめんどくて消したぞ!」
「小夏らしい〜。そういえば純蓮もイムスタ入れてないんだよね〜。入れればいいのに頑なに入れないの。純蓮の訳あり彼氏との匂わせ投稿みたいのに〜」
すみちゃんが頑なに入れない理由は橋野さんの最後の言葉が原因だろう。
橋野さんは声からも分かるようにつまらないという表情を浮かべた。
「あゆっちはどんな投稿してるんだ?」
「最近告白したけど振られて病みストーリー連投してた」
白葉ちゃんは面白がるように意地悪な表情を浮かべた。それに対して橋野さんは、少々大袈裟に怒りを表現した。
「入雲最悪! 余計なこと言わないでよ! 友達と遊びに出掛けているキラキラ投稿でいいじゃん!」
「あゆっち惚れっぽいもんな〜。すぐに次見つけられるだろ」
「なんか全然嬉しくないんだけど〜」
「でも、病んじゃうぐらい好きだったんだよね。それだけ人を思えるなんて素敵だと思う。今回は残念だったけど、橋野さんならきっと良い出会いができるよ」
「うぅ〜藍川さん〜」
橋野さんは私の腰に手を回して抱きついてきた。
「入雲も小夏も藍川さん見習え〜。藍川さんが男ならわたし藍川さんと付き合いたかった〜」
「そう思ってもらえて嬉しい。橋野さん、人の輪に入っていくのも空気を和らげるのも上手だし、明るいし、そんな橋野さんに好きになってもらえるのは幸せだって思えるよ」
橋野さんはさらに強くぎゅっと私を抱きしめて、小夏と白葉ちゃんの方を見た。
「わたし。この子。好き。もらう。じゃ!」
橋野さんがそのまま私を連れていつものグループに戻ろうとすると、小夏が私の腕に抱きついて引き止める。
「ダメだー! 依吹っちはあたしのだー!」
「おいおい、いぶっちゃんは誰のものでもないでしょうが」
どうすればいいのか分からず、引っ張られるがまますみちゃん達の方に連れて行かれる。
小夏も踏ん張りが効いておらず、砂埃を上げて一緒に連れて行かれ、白葉ちゃんはやれやれと言いたげに小夏が転ばないように片手を添えながらついてくる。




