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表と裏側

 日曜日。今日もいつものようにすみちゃんがやってきた。


「いらっしゃい、待ってたよ」


 いつものようにすみちゃんのスペースを作り、私は少し離れてラノベを読む。

 以前と比べたら少しは仲が戻ったと思う。でも、遠慮なくペラペラと話せるようになるには、時間も距離も空きすぎてしまっている。

 私達にはまだ、話す理由が、隣にいる理由が無くてはならない。


「ねえ、いぶ」


 でも、最近のすみちゃんはその理由が必要な意味を無くそうと頑張っている。


「どうしたの?」

「いぶは自分の事、モテない人だと思っているの?」


 この前の白葉ちゃんとの会話のことだろう。すみちゃんもこういう恋バナ的なのは好きなんだろうな。


「うん? まあ、そうだね。私は特に秀でているところはない、ただの人間だから。すみちゃんみたいな明るくて、優しくて、愛らしい人が側にいると、より一層陰に隠れてしまうね」

「そんな事ない。いぶは、私にとっての太陽だから」


 言葉に似合わぬ苦しそうな横顔をすみちゃんは見せている。


「すみちゃんにそう思ってもらえて光栄だよ」

「私だけじゃない。他の人にとっても、きっといぶは太陽だよ」

「そうかな。もしそうなら嬉しいな。でも、そうだね、小夏は私の事、太陽って言ってくれそう」


 すみちゃんはさらに強く拳を握りしめた。腕全体が震えるくらいに。


「いぶにとっての太陽は誰なの?」

「え、うーん」


 まるで太陽のような人。とか思ったことも考えたこともないから、少し悩んだけれど、窓から差し込まれる日差しを見ていると、一人の人物が浮かんできた。


「小夏かな。明るくて、元気で、真っ直ぐなところは太陽みたいな安心感と温かみがあるよ」

「そうだよね」


 すみちゃんはまるで答えが分かっていたかのようだった。

 一つため息をついて、諦念したかのように一言呟いた。


「いいな、小夏ちゃんは」


 すみちゃんも、誰かにとっての太陽になりたかったのだろうか? 嘘でも私にとっての太陽はすみちゃんだと言うのが正解だったのだろうか。でもきっと、すみちゃんはその嘘を見抜くだろうから喜ばない。

 私はすみちゃんを理解していないのに、すみちゃんは私をよく理解しているから。


「すみちゃんは、私にとっての月だよ」

「月?」

「いつも同じ形ではないけれど、どんな形であろうと同じ月なのには変わらない。静かで暗い夜をそっと照らしてくれる。正直ね、すみちゃんは変わったと思うよ。でも、すみちゃんの本質は全く変わらない。私達の関係はぎこちなくなってしまったけど、それでも今も変わらず側にいてくれる。その事に私は、喜びと安心感を覚えるんだ」


 すみちゃんは頬を染め、大きく深呼吸をした。


「ありがとう」

「こちらこそ」


 すみちゃんは立ち上がり、珍しく自分から私の隣に座った。


「でもねいぶ、私は、いぶが思うほど綺麗な人間じゃないよ。地球から見える綺麗な月とは違って、月の裏側のように激しくボコボコしているの。誰にも言ってない。私だけの秘密。ずっと、隠そうと思っていた。でもね、私は一人で抱えられる程強くなかったみたいなの」

「たとえすみちゃんが綺麗だけじゃない人だとしても、私はすみちゃんの事好きだよ。私が知る綺麗な部分もすみちゃんの一部だし、私の知らないすみちゃんの部分も、私はきっと、好きになるから。私はすみちゃんの一部が好きなんじゃなくて、すみちゃんが好きだから」


 すみちゃんは私の肩に頭を乗せる。


「いぶはそうだろうね。でも、いぶだけは私の裏側を見ないで。綺麗な人間だとも言わないで。私はきっと、耐えられなくなる」


 私は床についているすみちゃんの手を上から握りしめる。


「すみちゃんがそう言うなら、私はすみちゃんが見せたい部分だけを見続けるよ」


 すみちゃんは何も言わず、そっと目を閉じた。

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