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映画タイム

 今日は私がすみちゃんの家のチャイムを鳴らす。


「いらっしゃい。どうぞ、入って」

「お邪魔します」


 自分の家だからなのか、いつもよりもラフな格好をして私を迎え入れる。

 小学生以来のすみちゃんの部屋に入って、荷物を置かせてもらう。


「なんか、部屋スッキリしたね」

「そ、そうかな……」

「昔はぬいぐるみいっぱいあって、おままごととかよくしたよね。私がパパで、すみちゃんがママで。懐かしいね」


 そう言うと、すみちゃんは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに顔を逸らした。


「小学生の頃の話だから……」

「それでも楽しかったよね」

「──うん」


 すみちゃんは手をパンっと叩いて、顔を真っ赤にしたまま明るく何をしようかと切り替えてきた。


「私の家にはいぶが好きそうなものないけど……。ごめんね」

「謝る必要ないよ。私はすみちゃんと過ごしたかったから」

「そ、そうなの……えっと、じゃあ、映画でも見る?」

「いいね。すみちゃんが見たい映画見たいな。今のすみちゃんが何好きなのか分からないし」

「えっと、じゃあ、去年見に行った映画、サブスクにきたから見る?」

「うん、見る!」


 二人で下のリビングに移動して、ソファに並んで座って映画を観る。


 漫画の実写化の恋愛映画。原作との乖離があって批判されていたイメージがあったけど、そういう情報が入ってこないすみちゃんは楽しめたんだろうなって思った。私も原作知らないから、普通の恋愛映画で割と楽しめる。


「いぶ、つまらなかった?」

「ん?」


 映画の途中ですみちゃんは私の顔を覗き込んで聞いてきた。


「ううん。面白いよ」

「そっか。ずっと微妙な顔してたから」

「恋愛作品ってどんな顔で見ればいいのか分からなくて。特にキスシーンとか。だから微妙な顔しちゃってたんだと思う」

「そっか」


 すみちゃんはまた、映画に向き直った。

 すみちゃんに表情の事を言われたから、逆にすみちゃんはどんな顔をしているのだろうと、目線だけずらすと、羨望の中にほんの少し、辛さが混じっているように感じた。


「面白かったね、すみちゃん」

「うん、そうだね。──いぶはその、ドキドキしたりとかしないの?」

「ドキドキ?」

「その、自分を重ねてこんな事したいなとか」

「ないかな〜。すみちゃんはあるの?」


 すみちゃんはしばらく黙った後、ゆっくりと頷いた。


「そっか〜。それじゃあ、すみちゃんは早く好きな人見つけたいね」


 すみちゃんはうんともすんとも言わず、しばらくして、トイレに行くと言って、離れていった。


◇◆◇◆◇


 すみちゃんは戻ってくる時、一緒に飲み物も持ってきた。


「ありがとう」

「ねえいぶ。いぶはどうしたらドキドキするの?」

「え?」


 コップを受け取る手を止めてしばらく考える。


「ホラーかな? ホラー見た時は心拍数上がるよ」


 すみちゃんはそういうことじゃないんだけどと呟いた後、私にコップを渡してホラー映画を再生した。

 並んで一緒に見るが、先にすみちゃんの方にダメージがきたようで、目と耳を塞いでなお、完全には塞ぎきれていない音でびっくりしている。


「すみちゃん」


 すみちゃんの肩に触れただけで思いきりビクつき、私の顔を見てほっと息を漏らした。


「な、何?」

「おいで」


 私は自分の膝を叩く。

 すみちゃんは困惑しながら私の顔と膝を交互に見ている。


「ここに座って。そしたら、少しは怖さ和らぐと思うよ」


 すみちゃんは徐々に顔を赤らめて、耳まで真っ赤にして、私の膝に座った。

 後ろからすみちゃんに手を回して抱きしめる。


「すみちゃん、すごいドキドキしてるね」

「仕方ないでしょ」

「そうだね。でも、これで少しは和らいでくれたら嬉しい」

「無理だよ……」


 すみちゃんは震える手を私の指に絡ませて、両手とも握りしめた。すみちゃんの手は温かくて、ちょっとばかし力が強くてジンジンした。

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