表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

元娼婦のセカンドキャリア

作者: purapura

元娼婦のアーデンのその後です

R15です

お仕えしていた方が亡くなった。

一緒に暮らした期間は約2年。

暮らしはじめた時から、彼は麻薬中毒で廃人同然だった。あまり会話は成り立たなかったが、いないと寂しい。とても寂しい。

愛人兼世話人としての仕事は終了した。

私は20代半ばだ。余生を送るのには長い。

この別荘も頂いて、口止め料込みの手当ては潤沢。平民として生きるには十分すぎる財産だ。

彼が亡くなってしばらく呆けていたが、すこしずつ現実に戻ってきた。


つまり、退屈だ。することがない。


平民だったり娼婦だったり世話人だったり、ずっと忙しくしていた。

今さら娼婦に戻るのも年齢的に厳しいし、他の仕事はほとんどしたことがない。

商売を始めるほどの資金はない。

恋愛や結婚は無理だろうしなあ。


「ご結婚ですか。おめでとうございます。」

お嬢様が別荘にお越しになって、お話をしていた。お父様の葬儀以来、3ヶ月ぶりにお会いした。

側にぴたりと付き添っているルーカスさんの顔を見る。表情は変わらないけれど、彼はそれでいいんだろうか。

恋人同士の空気が漂っているのだが。

「お姉様、ブランデル伯爵とご縁があって。来年結婚する予定なの」

ブランデル伯爵子息のお相手はしたことがある。マナーの悪い男だったとだけ言っておく。あんなのか。

「お姉様だなんて。お嬢様、あの、ブランデル伯爵はかなり年上だった記憶があるのですが。」

40歳代くらいだった気がする。

「お祖父様くらいのお歳ね」

まさかの父親の方だった。

お嬢様のことだから、何かの理由があるはず。お嬢様とルーカスさんを見比べる。

うーん。聞いていいものだろうか。


「それでね、お姉様。ご不快なら断って頂いてかまいません。わたくしに閨教育をお願いしたいのです。母がいなくて、受ける機会がございませんでした」

お嬢様は頬を赤らめて言った。可愛い。

「もちろん、私で良ければお引き受けします。もうひとり、した方がいいですか?」

ルーカスさんと目が合った。

彼の肩がびくっとはねた。

「した方がよさそうですね」


「それで、どの程度しましょうか。座学はご一緒に?実技もご一緒に?」

私は全開の笑顔で聞き、ふたりとも真っ赤になった。からかい甲斐がある。


「大事なのは相手への気遣いです。デリケートな部分を触るので、絶対に痛くしないこと。事前の歯磨き、入浴をできるだけすること。体の洗い方はまた後で言います。相手の体を変な角度に曲げない。相手の嫌がることをしない。」

真面目にノート取ってる。真面目だ。

「特に男性ですが、手足の爪は切り、やすりをかけて下さい。髭は痛くないように整えること。」

とりあえず、自分が相手に要求する最低限のマナーなどを教えることにした。

思っていたより楽しい。私は、子どもの頃に家が没落したので基礎的な教育しか受けていない。私はもっと勉強したかったのか。

実技はどうしようか。


「この体位ですが、視覚的効果が高いので喜ぶ男性が多いです」

「こういったことは一般的ではありませんが、する方もいます。絶対に歯をあてないように」

男娼を呼び、下着姿で講義することにした。最初は目を逸らしていた2人が、段々真剣になっていく。気づいたらわりと上級者な内容になってきた。いいのだろうか。

男娼が続きをしたいと訴えているが知らない。


「お姉様、ありがとうございました」

「お役に立てたら嬉しいです」


その後、お嬢様を通して数名の方に閨指導をした。匿名の方が多く、女性だけ、男性だけのこともあった。男性だけの時は護衛を入れた。お嬢様の評判が落ちるので、依頼者との実践はしなかった。


「アーデン先生、わたくしね、女は寝て身を任せろ、って教えに疑問があったのです。」

とある貴族の奥方から言われた。 

「何も教えられず結婚して、夫からつまらない、下手などと言われました。」

「夫人。教えられなかったものは仕方ありません。純潔で結婚しておいて閨の上手さを求めるのは間違っています。私の個人的意見ですが、夫人はセンスがあると思います。」

「センス?」

「ええ。閨事にも才能というものはあります。相手の反応をみて、それに応じることなのですから。夫人はもっと伸びるお方です」

「まあ。うふふ」

閨指導は好評だった。

『アーデン先生』宛に感謝の手紙が届く。

その後は口コミで仕事が舞い込んだ。

一部の貴族から、裕福な平民、新人の男娼、娼婦の指導など仕事の対象は広がっていった。現在は指導の合間に、教育内容を執筆している。

私の寂しさは少しまぎれた。

そして、あの人を廃人にした罪悪感も。


海を見下ろす丘の上に、小さな墓碑があった。前伯爵のお墓とは思えないほどひっそりとしている。私はお花を供えて語りかける。

語りかける内容は秘密だ。


R15大丈夫ですよね

一応削りました

アーデンさんは数十年後に「女性解放の母」みたいな石像が立つと思います。没にしたifルートでは、鹿を投石で仕留める女傑になってました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ