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(書籍発売中!)逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜  作者: うちうち
IF ~もし魔法使いちゃんが世界樹で長命種であることを告白しなかったら~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

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【2期】10話 「この空の向こうにいる君と」(下)(終)

カクヨムで書いていた別ルートVerが完結したので、こちらにも貼っておきます!

2期の最初から、全11話です。一気に貼ったので、もしよろしければ、こちらの章の2期1話からお読みください。

(章立てにできる機能なんてあるんですね)

 1000年後の砂浜。

 そこには打ち寄せる波の音と、パチパチとはじける焚火の音以外、何もない。


 少女はひとり砂浜に座ったまま、夜空を見上げる。


 星はあまりにも多く、静けさはどこまでも深い。少女は、夜の底みたいな海の前で、降るような星空を見上げていた。







 やがて、どれほど時間が経ったのか。

 空の端が、ほんのわずかに白みはじめる。群れていた星々が、ひとつ、またひとつと、薄れていく。焚き火の火は、もう小さかった。


 少女は立ち上がり……目を閉じて「うーん」と考え込んだ。そのまま少しだけ海を見つめたあと、突然、宙から杖を取り出した。





 そして杖の先で、濡れた砂をざりざりとなぞる。


 ゆっくりと、ひとつずつ、文字を刻んでいく。


 ひとつ。

 もうひとつ。


 文字とも、記号ともつかない形が、砂の上に残っていく。


 それは短い言葉のようにも見えた。

 誰かに宛てた印のようにも見えた。

 あるいは、ここに来たことを告げる、ささやかな返事のようにも見えた。


 少女は最後の線を引き終えると、杖先についた砂を軽く払った。






 そして、軽やかにぱっと身を翻す。





「――さあ、次は、どこに行こうかな?」





 カメラは去っていく少女を追わない。


 ただ、砂に残された謎めいた文字だけが、画面の中央に映っている。





 波が寄せる。


 けれど、まだ届かない。





 朝の光を受けた浜辺の映像が、そのまますっと小さくなる。


 画面のまわりに黒い余白が生まれ、そこへ、エンドロールの文字が下から静かに流れはじめた。


 小さくなった浜辺の中で、波がまた寄せ、返す。


 砂に書かれた文字は、まだそこに残っている。





 やがて映像は、浜辺の端にある、消えかけた焚き火へ移る。


 灰の下に、赤い火がかすかに残っていた。

 そのそばには、低い木の卓。


 卓の上には、小さなカップが四つ、少し不揃いに並んでいた。

 ひとつだけ、飲み口に薄い茶の色が残っていた。

 残りの三つは、置かれた場所から動いた気配もなく、空のままだった。




 波の音に、静かな歌が重なっていく。





 エンドロールの横で、小さな映像がゆっくりと切り替わる。


 朝の光を受ける、紅玉のブローチ。

 机の上に置かれた、黒革のお守り袋。

 誰も身につけていない、青い石のペンダント。

 開かれたまま、風にページを送る日記帳。


 どの映像にも、人の姿は映らない。

 それでも、そこに映るものはすべて、誰かが確かにいたことを覚えているようだった。






 そして、映像はもう一度、浜辺へ戻る。


 砂に残された、謎めいた文字。

 波が寄せる。


 さっきよりも、少し近い。


 けれど、まだ届かない。






 少女の姿は、もうどこにも映っていない。


 波の音だけが続いている。


 朝焼けは、少しずつ海を明るくしていく。

 砂に残された文字は、まだそこにあった。










 そして、少女の声で、ナレーションが静かに流れ始める――。








「――呼べば、返事が返ってきそうな気がした。

 声をかければ、誰かが笑って振り返るような気がした。




『千年後にまた掘り起こそう』




そう言って笑ったあなたたちの声を、私はいまも聞いている――」













            【END】






* * * * * * * * * * * *







540:風の名無しさん

 魔法使いちゃん

 4人分のカップ用意してる……


543:風の名無しさん

 1つだけしか使いませんでしたね……


548:風の名無しさん

 やめろやめろ


550:風の名無しさん

 魔法使いちゃんが立ち上がった

 やばいどっか行く気だ


556:風の名無しさん

 何か砂浜に書いてる

 駄目だ読めん

 何語だあれ


563:風の名無しさん

 読めなくても分かるよ

 遅れてくる仲間のために

 行く場所を書いてるんだ……


569:風の名無しさん

 「千年後にまた掘り起こそう」

 「そう言って笑ったあなたたちの声を、私はいまも聞いている――」


578:風の名無しさん

 泣きそう

 魔法使いちゃんってこんなこと考えてたんだ


589:風の名無しさん

 魔法使いちゃんのモノローグ初めてだよね

 めっちゃダメージ受けてるやんけ……


596:風の名無しさん

 え? これで終わり?


604:風の名無しさん

 結局、救われなかったの?


615:風の名無しさん

 せっかく再会したのに

 同じだったじゃん……


631:長命種ニキ

 ただ、いくつか気になるところがあります


644:風の名無しさん

 長命種ニキ!


653:風の名無しさん

 どこが気になるんだ!?


670:長命種ニキ

 結局、話に関係なかった部分があったでしょう

 世界樹の話とか

 わざわざ描いておいたのに触れずに終わるなんて


687:風の名無しさん

 つまり?


695:長命種ニキ

 いや、わかんないんですよ

 違和感があるだけで

 何か掴めそうな気もするんですが


707:風の名無しさん

 でもさ、この時点では生まれ変わった仲間に会えなかったとしても、この後に会えてるかもしれないじゃん


719:風の名無しさん

 本編終わりなんだが?


735:風の名無しさん

 いや、結局、俺らが見てたのってさ

 あの世界のほんの一部なんだよ


742:風の名無しさん

 だからあの後も

 あの世界で、話は続いていくんだ……

 きっとそこで魔法使いちゃんは生まれ変わった仲間と再会するし幸せに暮らすんだ 

 俺は詳しいんだ


760:風の名無しさん

 それ前も言ってたやついたけどさ

 それってつまり、あのアニメの出来事が実際にあったってこと?


778:風の名無しさん

 なら疑問が1つある

 どうして異世界の出来事がアニメになってんだよ


795:風の名無しさん

 なー

 さすがに無理があるわ







802:風の名無しさん

 でも、最後に得られるものがなかったのはきついっす……

 何がしたかったんだこのアニメ

 結局、魔法使いちゃんが1人で謎の文字を書いただけじゃん

 どういうメッセージかも分からないし


811:風の名無しさん

 さっきから黙ってるけど

 長命種ニキは何か思いつかないの?

 あの文字読めたりしないの?


815:風の名無しさん

 いやあれって異世界の言葉だろwww

「ご視聴ありがとうございました」とかでしょww


822:風の名無しさん

 草

 お礼のメッセージを異世界語で書くな

 誰が読めんねん


828:長命種ニキ

 ……え?


835:風の名無しさん

 長命種ニキ?








841:長命種ニキ

 …………まさか






* * * * * * * * * * * *







 ……さて。どうしよう。


 夜空を見上げる。満天の星が静かに瞬いている。誰も来ないのは、分かっていたことだ。分かっていたけれど――。


 私は、膝を抱えて小さく息をついた。


 さみしい。

 隣に誰もいないのが、こんなにさみしいなんて、知らなかった。


 でも、これからどうするかなんて、分からない。







 背後で、フォン、と風を切る音がした。振り返っても、誰もいない。だが、その音には聞き覚えがあった。いつも戦場で聞いた斬撃の音。神殿で一日に幾万回も響いた、剣士の素振りの音だった。






 そして――。


『待ってるだけじゃ、奇跡なんて起きやしないわ』


 胸元で、優しく、力強い声が聞こえた気がした。見下ろすと、ブローチが月の光を反射してきらめいている。





 彼の剣筋と彼女の声が、夜の空気を震わせ響く。

 それは、彼と彼女が、今もこの世界に確かに息づいているような――そんな感覚だった。




 なら、あと足りないのは1人だけ。どこかで迷っているであろう、彼だけだ。たぶん、集合場所がわからないとかそういうあれなのだろう。もう、しょうがないなぁ。


 ちょっと気分が軽くなった私は、テーブルに4人分のカップを並べてみたりした。樹液に引き寄せられるクワガタみたいに、彼が迷い込んでこないだろうか。




 しかし、待ってみてもとんと誰かが現れるような気配はなかった。むむ。もうそろそろ夜が明けそうではないか。








 ……そうだ。来ないのなら、迎えに行けばいい。本当に、しょうがないやつ。


 私は、首から提げたネックレスをそっと手のひらに乗せる。これは、もう何百年も前に彼に渡されたもの。魔法で保護されていて、持ち主が生きていれば、対となる相手のいる方角を指し示すという。





 しばらく沈黙していたそれは、ふいに、空へ向かって引かれた。




 ネックレスの先は、夜空を指していた。






「……空の向こう、かぁ……」


 やはり天国に行ってしまったのだろうか? でも、勇者が天国にいるなんて、そんな……なんというか、納得しがたい。けど、やっぱり天国にいるの……? 私の知識だと、空の向こうにあるのは天国だから。




 しかし、勇者が天国にいるとなると、困った。私は行ける自信がない。この1000年で、もっと善行を積んでおくべきだったのか……?




 ぽつりと、口から恨み言が漏れた。





「生まれ変わるって、言ったじゃん……」










 生まれ変わりの話。世界樹で誰かが言っていたのだったか。確かに、私と一緒に聞いたのに。






『――生まれ変わりとは、魂が輪を描くように巡ることです』




 巡ってない。だって、この1000年、誰もいなかった。

 そりゃあ、世界の隅々まで見たわけじゃないから、断言できないけれど。たぶん、あっちが私を探そうと思ったら、もっと何か合図というか、動きがあったはずだ。私が探す側でもそうする。







『人は死ねば魂を手放し、魂は次の器へと流れ込む。こうして世界は循環を保っておるのです』




 だから、循環してない。してたとしても、人の数は増えてるんだから、魂がいつか足りなくなるはず。増えた分はどこから来るの、ってたしかあの時も……。






『魂はこの世界だけに閉じておらん。()()()()()()()()()()()()()()()から流れ込み、また他の世界へと溢れ出す。魂の輪は、ひとつの世界を越えて幾重にも重なっておるのだ』




 他の世界、だって。

 そういえば、召喚されて来たって子もいたっけ。案外、眉唾ものの話じゃない、の、かも……。






 いや、待てよ?


 他の世界。いや、ここで大事なことは魂の輪がどうこうじゃない。ここで大事なのは、他の世界が、『空の向こうにある』ということだ。空の向こうに。……空の向こうに!




 今大事なのは、「魂の輪」ではない。「()()()()()()()()()()()()()」――それだ。



 ……行けるのだろうか。

 空の向こうへ。別の世界へ。











 私は、ゆっくりと立ち上がった。


 そして、杖を取り出す。


「いざという時以外に杖は使わないこと」


 あの頃、みんなと約束した。

 でも今は、たった1人で、どうしようもなく寂しくて、そして今こそ「いざ」だった。


 







 私は杖を掲げた。魔力が走る。空間が震える。

 発動する魔法は――赤。寿命を捧げるうちの、最も重い魔法。




 赤い光が爆ぜる。


 私は、空へ向かって、跳躍する。


 







 だが――届かない。


 空は、高かった。

 世界の壁は、遠く、分厚かった。







 

 だから私は空中で、再び杖を掲げた。

 もう一度、赤。





 そして、飛び上がった状態で、さらにもう一度。


 赤、赤、赤――。


 燃え上がるたびに、世界が少しずつ遠ざかる。


 足元が、音もなく沈んでいく。海も山も、都市も森も、小さな光になっていく。









 百回近く、魔法を放った。

 そのたびに、魂の一部を削った。


 それでも、届かないのなら。


 私は、すべてを賭けて飛ぶ。


 向こうにいる、たった一人を探しに。


 






 不意に、空がひらく。世界の果てが、ひび割れて、光が溢れた。


 





 世界は、足元でくるくると回っていた。

 大地も空も、海も星も、みんな、ひとつの輪の中に収まって、小さくなっていく。


 まるで――私を送り出すように。


 






 私は、その輪に、背を向けて、手を振った。


 さよなら、私の世界。


 





 


 私は飛んだ。


 星々をかき分け、夜を越え。

 言葉も届かない遠くへ。


 


 赤い光は、燃えながら尾を引いて、幾重にも軌跡を描いた。

 その全てが、まるで願いごとのように、空に溶けていった。


 


 魔法がなくても、歩いていける気がした。


 ――でも、魔法があったから、飛んでいける。





 ずっと、遠くへ。


 あなたのいる、空の向こうの世界へ。










* * * * * * * * * * * *









「――呼べば、返事が返ってきそうな気がした。

 声をかければ、誰かが笑って振り返るような気がした。


『――千年後にまた掘り起こそう』


そう言って笑ったあなたたちの声を、私はいまも聞いている――」


 


 魔法使いの少女の静かな独白が終わり、映像がゆっくりと暗転していく。





 静かな余韻を残しつつ、少女が砂浜に何かの文字を描き、ゆっくりとその場を離れていく――文字が残された砂浜を映したまま、スタッフロールが流れ出した。


 











「監督~! これで本当に良かったんですか? バッドエンドもいいとこじゃないですか」


 深夜の試写室で。

 暗がりに明かりが戻ると、助監督が真っ先に口を開いた。椅子から立ち上がりながら、不満そうにスクリーンを振り返る。


「いいんだよ、これで。最後はこうするって、彼女との約束だったんだ」

「誰との!? 作品を私物化すんなよ!!」

「いや、彼女には助けてもらったからね。恩人なんだよ」


 監督が重々しい表情で言ったので、助監督は少しだけ勢いを緩めた。


「……恩人?」

「家に帰してもらったんだよ」

「いや1人で帰れや!!!!!」

「まあまあ、いいじゃないか。ともかく、放送も無事に終わったんだ。みんな、飲みにいこう。奢るよ」


 監督の気楽な一声に、スタッフたちがわっと盛り上がる。音響監督、美術のチーフ、王女様役の声優など、男女混ざった面々が「やったー!」「今日は飲むぞー!」と言いながら、笑顔で立ち上がる。


 






 ――だが、その喧騒の中で、ひとりだけ立ち上がり、控えめに手を上げる姿があった。


 それは、奥の席にいた、小柄で大人しげな少女。

 髪は墨に染めでもしたかのように黒く艶やかだった。年齢も若く、表情や雰囲気は柔らかい。だが、同時に妙な違和感のようなものも纏っている。


「すみません、私、この後は用事があって……」


 小さく会釈しながら、少女は鞄を手に、控えめに出口へ向かおうとする。


「この後!? 深夜なのに!?」

「彼氏!?」

「こら。やめろって。……じゃあまた、神代さん。今回が声優初めてだったんだろ? 主演、お疲れ様。……で、誰と会うの?」


 そう訊かれた少女は、鞄を肩にかけたまま振り返る。


 照れたように笑みを浮かべ、そっと頭を下げると、《《表紙に謎の文字がびっしりと書かれたノート》》を持ち上げて、口元を隠すように抱えた。


「私にも、わからないんです。誰が来るのか」





「……やっぱり止めた方がよくない?」

「監督! スキャンダルですよスキャンダル! いいんですか!?」

「無理に止めると全員この世から消されると思うけど……」

「ちょっと待って!? 神代ちゃんそんなヤバい人なの!?」

 






 そんなスタッフたちの会話を背に、少女は静かに試写室を後にする。


 廊下の向こう、夜の街に続く自動ドアが、ゆっくりと開いた。


 彼女の足元には、どこか砂を踏むような、懐かしい音が響いていた。






* * * * * * * * * * * *




(エピローグ)



 俺は、小さい頃から、なぜか海が好きだった。


 周囲から「なんでそんなに海が好きなんだ」と言われても説明できず、自分でもよく分からない。ただ、何かを探している気がした。けれど、どこに行っても、何か違う気がした。





 そんな違和感を持って、ずっと生きてきた。大学を卒業しても、就職しても、その違和感は消えることはなく。





 そんな中、深夜にやっていたアニメを見たのは、偶然だったのかどうか。聞こえてくる声が、何かを感じさせ、あっという間に引き込まれた。




 そして、ラストシーン。浜辺に書かれた文字。掲示板やSNSを見ても、「読めない」と言われていたが、あれは……場所だ。場所を示している。



 思わず、体が動いた。







 電車は走っていなかったので、原付で。海に近づき、何かを探す。今なら、何か。自分でも説明できない何かが、見つかる気がした。




 そうして辿り着いた砂浜の端に、誰かが座り込んでいるのが、月明かりに照らされて、見えた。浜辺を突っ切り駆け寄る。











 そこにいたのは、少女だった。木で囲いを作り、何かごそごそとしている。


 一瞬、頭の中を、覚えのない記憶がよぎった。山奥の渓流で、河原でしゃがみ込んで何かしていた、同年代の幼女の姿。


「何してるんだ?」


「……カニ牧場。大人の遊びだよ」


 振り向かずに答える少女の背中を見て、なぜか胸が熱くなった。何を、言えばいい? 何を……?









 思わず、口を開いた。言葉が勝手にあふれ出してくるみたいだった。


「俺、また旅に出ようと思うんだ。だから……」

「じゃあ、私も行く~」


 間髪入れず、ぱっと笑顔で振り向く彼女に、なぜか涙が溢れた。

 同時に、全てを思い出す。彼女を誘って旅に出て、仲間と出会って、魔王と戦い、そして――今、あの時と同じく、彼女と2人、ここにいる。





 ……振り返ってみれば、あの旅も、あの別れも、そして今日までの時間も。


 ――全部、ひとつの旅だった。


 なんとなく、そう思った。





「待たせてごめん」

「別にそんなに待ってないよ。でも、こっちの世界に生まれ変わってたとして、まだ3歳とかかもしれなかったから、賭けだったけど」

「そのくらいは、何とかできるんだよ。元勇者だからな」

「勇者ってすごいんだねぇ」







「じゃ、他の2人も探しに行くか」

「んー、2人はもう近くにいる気がするの。私がちゃんと分かってないだけで」

「いなかったの俺だけ? マジかよあいつら……」

「でもいちおう、探してみようかなって」

「お前、またアニメとか使うの絶対やめろよ」

「なんで?」

「演出に悪意があるんだよ……! 心を抉ってくるのやめろ」

「監督さんの趣味なんだって」

「よく知らねーけどそいつとは縁を切った方がいいと思う」

「人の曇った表情は芸術品なんだって」

「今すぐ切ろう! ……そういやさ、お前、もう杖持ってないよな?」

「…………。持ってないよ?」

「持ってるじゃん! 絶対持ってるじゃん!」











 月明かりの下、再会を果たした2人は、笑いながら、どこへともなく歩き出す。 波音は静かに続き、夜の風は砂を撫でていた。


 まるで――忘れかけていた物語の続きを、もう一度なぞるかのように。












 


 ……こうして、誰にも知られずに終わった、小さな旅があった。


 


 忘れ去られたはずのその足跡は、けれど、ある日ふと。誰かの想像の中で、また、語られ始める――。








* * * * * * * * * * * *







300:長命種ニキ

 わかりました! 皆さん、聞いてください!


307:風の名無しさん

 みんなー、長命種ニキが何か見つけたんだって


313:風の名無しさん

 さすが長命種ニキ!


321:風の名無しさん

 それでそれで?

 何が分かったの?


328:長命種ニキ

 やっぱりあれは現実に起こったことで、魔法使いちゃんは生まれ変わった仲間を探しに、こっちの世界に来たんですよ!

 それであの話を伝えたんです! だからきっと、アニメ関係者の中に魔法使いちゃんが……


334:風の名無しさん

 ……?


340:風の名無しさん

 ???


346:風の名無しさん

 お前は何を言ってるんだ


354:風の名無しさん

 やべぇよ・・・やべぇよ・・・


361:風の名無しさん

 ちょっと何言ってるか分からない


368:長命種ニキ

 いや

 信じられないと思うんですが、本当なんですよ!


380:風の名無しさん

 どうしてこんなになるまで放っておいたんだ……!


387:風の名無しさん

 はい

 お薬出しておきますね~
















399:風の名無しさん

 ……長命種ニキ!

 病棟に戻ろう!









 







(「逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜」 おわり)


 ということで、別ルート完結です!!

 辿る道が違っても結局同じ着地点になるのか……まあアニメになった時点でこうなるからね。しょうがないね。



 こちらのルートも最後まで、彼女たちのお話を見届けてくださってありがとうございました。

 もしこのお話を気に入っていただけましたら、書籍版も手に取っていただけると嬉しいです。書き下ろしもあったり、すごく素敵な挿絵も書いていただけましたので!

 彼女たちの旅の記録を、皆さまの本棚にも置いてもらえたら、作者としても、とても幸せです。(下記のリンクから飛べるので貼っておきます!)



https://kadokawabooks.jp/product/nigerumahotsukai/322512000274.html(書籍まとめページ)

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