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逃げる魔法使い 〜寿命を削って魔法を使っていただけなのに、なんだか周囲の様子が変です〜  作者: うちうち


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29/41

『逃げる魔法使い』第2期 エピローグ

もともとこの話って、魔法使いちゃんが草原で手を振る(1回目)か、再放送くらいで終わるかなって思ってたんですよね。ところが、やっぱりもう少し書こうかなとなりました。(これは皆さんが感想とかブクマとか評価とかいいねとか、たくさん応援してくれたおかげです! ありがとうございます!)


ということで、あまり筋が定まっていない関係で、更新速度はややゆっくりになると思います、ごめんなさい! いちおう、大枠のラストシーンだけは決まっています。


では本編です!



(エピローグ)



 ――海といえば……遥か昔のことになるが、今も、思い出す光景がある。



 そのとき、私は、広い砂浜でカニ牧場を作っていた。カニ牧場とは、砂で囲いを作った中に、カニを入れて動きを観察するという非常に高尚な遊びである。何匹も入れるとより楽しいがカニたちが喧嘩をしてしまうので、集中力も求められるのだ。


 私の牧場には、4匹のカニが仲睦まじく並んでいた。珍しい。ひょっとしたら家族か、仲良しの友達なのかもしれない。


 私が微笑ましく眺めていたとき、隣にいた知り合いが、真面目くさった顔で口を開いた。彼は、いつも、自分が話したい時に、話したいことを話す。


「※※※……君がこの先も生きていけば、この砂浜はなくなってしまうかもしれないね」


「砂浜が? どうして?」


 それは、困る。カニ牧場が作れなくなってしまう。私はこの遊びが大好きだった。きっと千年経っても飽きない自信があった。


「海がもっとこちらまで来てしまうからさ。まあ、数千年はかかるだろうが」


 私は海を振り返った。ちょうど引き潮なのか、海は遠くに引っ込み、ざざーん、と時折控えめに存在を主張している。あんな遠くにある海が、この、見渡すばかりに広がる砂浜を全て飲み込む……?





「海辺の景色ってそんなに変わらなくない?」


「だから数千年だと言ったろう」


 彼は、呆れたような表情を浮かべた。私が話をよく理解できない時、彼は決まってこんな顔をした。「なんて頭が悪いんだ」と言われているような気がして、私はちょっとむっとする。


「じゃあ、数千年経って、なくなってるかどうか見に来る。もし嘘だったら、謝っても許してあげないから」


「そうかい。まあ、僕も、言った手前、一緒に見届けようか」


「数千年も生きるの? 人間なのに」


 彼が数百年近くも生きているのは知っていた。なぜかは分からない。魔法か、私の知らない何かなのか。だが、おそらくもうすぐ死ぬだろうな、という予感があった。いくら人間が長く生きても、必ず終わりがあることを、私は知っていた。


 彼は動かなくなった足の代わりに、金属でできた杖のようなものを愛用するようになった。1日のほとんどを眠って過ごすようになった。変わらないのは、ぺらぺらとよく回る口くらいではないか。






 しかし、彼は自信たっぷりに笑った。


「信じていない顔だな。よろしい、じゃあ、また、数千年後にここで」


 言い切る彼の態度に、少し自信がなくなってしまう私。


「数千年後、君が来て、ここで会えたら、僕の勝ちとしよう。じゃあね、※※※。まだ長いんだ、ゆっくりと敗戦の弁を考えておくといい」















 それから、千年経ったころ、私はその砂浜に行ってみた。確かに、以前に来たころと比べて、海が近くに見えるような気がした。しかし、まだまだ砂浜は広大だった。この砂浜が全部なくなるなんて、信じられなかった。


 あれから、あの砂浜は訪れていない。まだ彼が言っていた数千年後には時間があるからだ。そして、風の噂で、彼が死んだらしいと聞いた。……ほら、やっぱり。





 だが、おそらく私は数千年後、あの砂浜を訪れるだろう。……彼と会うことはないので、「私が数千年後、砂浜に来る」「彼と会う」という条件は、1つしか叶えられないことになる。それがどちらの勝ちなのかは、またその時に考えるとしよう――。










* * * * * * * * * * * *










 久しぶりに、昔の夢を見た。


 夢の中の知り合いは、あの頃のまま、少しも変わらない笑顔で、砂浜を歩いていた。

 くたびれたローブの裾を砂に引きずって、いつものように、どうでもいい話を得意げに語っていた。

 私はその隣で、言葉の半分も聞かずに、うんうんと頷いていた。


 窓を開けると、どこかべたついた潮風と、打ち寄せる波の音が入ってきて――あの時と、同じ匂いがした。







 さて、私は、勇者達と海に遊びに来ている。1日目は砂の大きなお城を作ったり、ボール遊びをしたりと、非常に充実していた。さあ、今日は何をしようか。




 その後、遠くから聞こえる波の音を聞いていると、私はさっき見た夢のことを、なんとなく思い出した。そして、ふといいことを思いつく。




 ――そうだ。勇者たちとも、何か約束をしよう。



 ちょうどすぐそこに砂浜もある。私の中では、砂浜といえば約束である。せっかくだから、何か埋めようか。




 掘り出すころ、「逃がさない」と言っていた勇者やみんなが、もういなくなっていたら――そのときは、私の勝ちだと笑って、全部もらってしてしまえばいい。まだ隣に誰かがいれば、賞品として、その人にあげよう。









 思い立った私は、さっそく3人を呼びに行った。3人はまた朝から食堂で暗い顔を突き合わせていたが、半ば無理やり砂浜まで引っ張っていった。待っていたら1000年くらい経ってしまいそうなほど、みんなの腰が重かったからだ。


 「砂浜を見られるうちに見ておきたい」と主張したら、3人はなぜか涙した後、何かを決意したような顔で立ち上がった。







 そして、私が先導し、全員で砂浜にやってくる。その後、「みんなで思い出の品を埋めたい」と言った時も一悶着あったのだが、なんとか賛成して貰えることができた。……人間は、あんなに泣いて水分がなくならないのだろうか……?







「このあたりなら、たぶん大丈夫です~」


 埋める場所は、波打ち際からずっと離れた、小さな砂の丘を選んだ。


 王女様が「本当にここでいいの?」と首を傾げたけれど、海の方を見て、すぐに納得した顔になる。最初は3人の顔も硬かったけれど、次第に笑顔も混じり始め……全員でその丘に腰かけ、何を埋めるか、あーでもないこーでもないと話し合った。








 皆で囲むのは、瓶に入った一枚の手紙。


 王女様が「未来のわたしたちへ」と挨拶を書き。

 勇者は、どこかのんきな近況を書いた。

 剣士は「くだらん」と言いながらも、一言だけ添えた。

 最後に私は、4人が肩を寄せ合って笑っている絵を描いた。






「じゃあ千年後に、みんなでまた掘り出しましょう!」



 王女様が言うと、勇者が「いいな、それ!」と笑い、剣士も「……覚えていればな」とつぶやいた。



 ――夏の風。海の匂い。



 私だけが、この日の声を千年後も覚えている自信があった。























(~千年後~)





 あの頃と比べて、遥かに手前まで打ち寄せるようになった波打ち際を眺めながら、1人、私は、みんなで埋めた瓶の埋まっている場所を振り返った。波が近くまで来ていて、かつて私たちが腰を下ろした砂の丘も、いまはもう跡形もない。


 海から吹く風が砂をかすかに巻き上げる。あの時と同じ匂いがした。どこか懐かしくて、胸の奥がくすぐったくなる。


 今も、呼べば返事が返ってきそうな気がした。

 声をかければ、誰かが笑って振り返るような気がした。





 ――もちろん、誰も、いない。








 私は、それでもそっと、手を振った。


 けれど返ってくるものは何もなく、風が静かに吹き抜けていくだけだった。

 砂の匂いと潮の音だけが、まるで記憶のように、そっと私の頬をなでていった。



 かつて、昔の知り合いの彼が言った、「また数千年後に会おう」という、あの言葉の意味が、今なら少し、分かる気がした。


















 ――千年後にまた掘り起こそう。















 そう言って笑ったあなたたちの声を、私はいまも聞いている。








エピローグから始まってますが、次から本編です

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― 新着の感想 ―
でもなあこの魔法使いちゃんはとんでもない数の出会いと別れ経験してんだろうな。
続投嬉しいんですがw どっかに応募しません? 多分速攻で書籍化すると思うw
始まる前に終わってたー!?Σ このお話好きなので続投嬉しいです。 勇者頑張れ、どうか寿命の壁をぶち破って、振り返った後ろではなく、横に寄り添ってやってくれ…… 魔法使いちゃんの寿命を伸ばす手段を捜す…
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