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七幕 蓋勲の受難その一



 (りょう)(しゅう)(かん)(よう)(ぐん)(ろう)(けん)

 (こう)(きん)の乱が勃発した(ちゅう)(へい)元年(西暦一八四年)。

 この地でも静かな混乱が起こっていた。



 中平元年(西暦一八四年)の二月。

 (たい)(へい)(どう)教祖・(ちょう)(かく)が黄巾軍の決起を宣言した。

 それに対し、(かん)の動きは素早かった。

 首脳陣を縮小して、黄巾軍を討伐するため、有力な者たちに連絡を取った。

 一方、(かん)の首脳に選ばれなかった重臣たちの中でも、その反応は二極化していた。

 いつもの辺境の反乱じゃないことに怯え、動揺した者と、たかが民衆の反乱だと侮った者たちだ。

 そういった認識しか持てないが故に、どちらの者たちも首脳陣として呼ばれなかったのだが。それでも混乱は起きていた。

 その混乱の一端として起こったのが、動揺した者たちによる各地に散っていた有力者を(らく)(よう)に呼び寄せる動きだった。

 そして、涼州にも洛陽に呼び出された男がいた。

 (こう)(しゅん)(あざな)(えい)(しゅん)という。

 彼は、先代の皇帝である(かん)(てい)に厚遇された男だ。

 皇帝の親族ではない。

 絶大な功績を上げた訳でもない。

 それなのに、桓帝は黄雋に爵位を与えて(かん)(だい)(こう)に封じた。

 その地位は、現在の皇帝・(りゅう)(こう)の代になっても未だ変わらないままだった。

 そんな高位な男を、洛陽に呼び出しておこうとした者がいた。そういう話だ。



 黄雋は報せを受け取って顔をしかめた。

 民衆の反乱が起きた。

 規模が大きいので、高官たちを洛陽に集めておきたいのだ。

 それは、保護の名目もあるだろう。

 しかし、有事の際に協力させるためでもある。

 「ったく、ふざけるなよ。国の失策に巻き込まれてたまるものか」

 黄雋は勝ち馬に乗るだけの男だ。

 真に、国に危難が訪れているのならば、身の振り方も考えなければならない。

 黄雋は、洛陽までの旅支度を行いながら忌々し気に指を噛んだ。



 「訴えたいことがあるとか」

 漢陽郡隴県。

 隴県は涼州の(しゅう)()(しょ)だ。

 故に、隴城には隴県の(けん)(ちょう)が詰めている県長府と()()が詰めている刺史府が、ひとつの城内に存在しており、他の城よりも官吏の数も多かった。

 そして、そんな刺史府で話をしている男が二人いた。

 涼州刺史・(りょう)(こく)が自分の部下である男に相対している。

 梁鵠。(あざな)(もう)(こう)

 そして、梁鵠の前で勢いよく報告をしている男は刺史府に勤めている(じゅう)()で名を()(かく)(あざな)(せい)()という。

 刺史は任地である州の監督をする役目を負っており、従事とはその補佐を行う役職だ。

 そんな者の訴え。

 それは。

 「はい。罪人を発見しました。()()(ぐん)(たい)(しゅ)(こう)(えい)(しゅん)は罪を犯しております」

 罪を犯した者の発見を報告するものだった。

 「………………罪?」

 梁鵠はその言葉に緊張する。

 来るべきものが来てしまった。

 それは梁鵠にとって、頭を覆いたくなる事実だった。

 刺史の職務を遂行しなければならない時だった。

 罪を犯した者がいれば、その者を告発し、しかるべき罰を与えなければならない。

 しかし、死罪になるような重大な犯罪ならまだしも、大体の者たちは贈賄や豪族との癒着程度の罪だ。

 そのような者の罪を摘発しても、ただ、恨みを買うだけだ。

 ならば、あえて摘発せずに泳がせておくのもひとつの手。そう考えていた。

 「………いったい、どのような罪を」

 梁鵠がその内容を確認しようと口を開く。

 揉み消せる程度のものなのか。

 それに対して、蘇格は拱手をしながら答えた。

 「はい。黄英俊は先代皇帝からの厚遇を得ており、現在、関内侯の位に封じられ、漢陽郡太守の任を与えられています。今年に入ってから、太平道という新興宗教が武装蜂起を行ったらしく、高官を洛陽に呼び寄せているそうで。黄英俊も呼び出されました。しかし、太守殿は未だに理由をつけて出発を遅らせています。これは、立派な罪です」

 梁鵠は今度こそ頭を抱えた。

 洛陽からの招致を軽視しているこの状況は、確かに罪になり得る。

 辺境で完結していないのだ。揉み消しなどはできない。

 「………なるほど。わかった。情報感謝する。こちらの方で彼に宣告を行うので、貴殿は引き続き、領内の監督に戻れ」

 「わかりました。よろしくお願いします、刺史殿」

 そう言って、蘇格は執務室を去っていった。



 「んぁああぁぁあ。ややこしいことになってしまったぞ、おい!」

 蘇格が去った後、梁鵠は居室でひとり、地団太を踏んだ。

 状況はまったくもってややこしいことになっている。

 梁鵠にとっては。

 俯瞰してみると当たり前のことが当たり前に起こっているだけだ。

 罪を犯した者がおり、その罪人を発見した者がいる。

 それならば、罪人を捕まえればいいだけ。のはずだ。

 しかし、今回、黄雋の立場が状況を複雑にしている。

 黄雋は先代の皇帝に厚遇され、高い爵位をもっている。

 黄雋ほどの地位にあれば蓄財も十分だろう。

 仮に梁鵠が蘇格の訴えを受けて動き、黄雋を捕えたとしても、すぐに黄雋は釈放される。そうなれば、次に待っているのは黄雋による報復だ。

 一時とはいえ獄に繋がれた屈辱を、梁鵠に晴らすのだ、と言われても何も不思議ではない。

 ならば黙殺してしまえばいいかというと、これもまたそうではなく。

 仮に、黄雋を捕えずに放置したとすれば、今度は蘇格が騒ぎ出す。

 罪人を放置する刺史を、今度は洛陽に向けて告発するだろう。

 刺史という地位を狙っている者はいくらでもいる。

 蘇格が声を大にして訴えたら、人々はすぐに動き出す。

 梁鵠には黄雋のように庇ってくれるような後ろ盾もない。

 すぐに罷免されてしまうだろう。

 (………それならば、腹を決めるしかない、か)

 梁鵠は、暗い瞳を、蘇格が帰った先へ向けた。



 梁鵠のもとに蘇格が訪れてから三日後。

 隴城の太守室に呼び出された(がい)(くん)は首を傾げた。

 「私が、刺史府に呼び出された、と?」

 「そうなんだ。済まないが、行ってきてほしい」

 蓋勲の前には漢陽郡太守・(はん)(しん)がいた。范津も事情を理解できていないようで困り顔である。

 范津は(あざな)(ぶん)(えん)といい、辺境の地でありながら篤実な性質で漢陽郡を治めている男だ。荒事を苦手としていたため、太守になることが決まると武に秀でた者を探し始めた。

 そして、蓋勲を見出し、(ちょう)()として自分の補佐につけた。

 長史とは、他の地域では(ぐん)(じょう)と呼ばれる、太守の補佐官のことである。辺境にあって、より、国防に寄与することになる場合、郡丞を長史と呼んだ。

 徳政を范津が行い、外敵と戦う役目を蓋勲に与えたのだ。

 蓋家は、蓋勲の父も、祖父も、地方高官を歴任した者が多い。それだけ、辺境を治めるのに向いた素質をもっていると思えた。

 そして、現に、蓋勲はその素質をいかんなく発揮して、范津の補佐を行っている。

 彼が刺史に突然呼び出されたとしても、何も心配はいらない。

 そう思って、范津は蓋勲を送り出した。



 刺史府に足を運んだ蓋勲が見たものは、神経質そうに部屋の中を歩き回る涼州刺史の姿だった。

 ただ事ではない。

 そもそも、執務室周辺が人払いされており、人気が無い。それだけで、蓋勲はその身体を緊張させていた。

 その上、刺史が冷や汗を流しながら落ち着きのない様子を見せているとくれば、事態の深刻さはさらに上がる。

 「おお。来てくれたか、蓋殿」

 刺史・梁鵠が蓋勲の姿を認めると、顔を綻ばせた。

 部屋に入る前に声をかけたはずだが、耳に入っていなかったようだ。

 「漢陽郡長史・(がい)(げん)()です。何か御用でしょうか、刺史殿」

 「………………………………」

 蓋勲が拱手をしながら名乗ると、梁鵠は蓋勲に向き直り、歩き回るのをやめた。しかし、目が落ち着きなく動き回っている。

 「………刺史殿? どうかなさったのですか?」

 蓋勲の言葉に押されるようにして梁鵠は顔を上げた。

 意を決したように口を開く。

 「蓋殿。貴殿は、()(せい)()を知っている、と聞いた」

 「………蘇正和、ですか」

 その名前を聞いた蓋勲の目が細くなる。

 「………彼が、どうかしたのですか?」

 蓋勲の父も太守の任に就いていた。

 蘇格は、蓋勲の父の犯した罪を密告した。

 しかし、その罪は事実ではなく、冤罪だった。その冤罪を晴らす前に、蓋勲の父は死んだ。蓋勲もその時の騒動では酷い目にあった。

 蓋家をめちゃくちゃにした原因の男だ。知っているなんてものではない。仇敵だった。

 「実はな。ひとつ、頼みたいことがある。蘇正和の暗殺だ」

 そんな因縁のある相手の名前が、予想もしない形で出てきたことに、蓋勲は目を剥いた。



 蘇格の訴えを聞いても黄雋を罰することはできない。

 蘇格は、今度は黄雋を放置した梁鵠を告発するだろう。

 そうなれば、梁鵠は今の地位を失うことになる。

 それを避けるためには。

 蘇格の口を封じてしまうのが確実だ。

 それによって、黄雋の罪を知っている者はいなくなる。

 それで面倒なことはすべて消えるのだ。

 だから、梁鵠は決断した。

 「蘇正和を始末したい。他の者に任せようかとも思ったが、蓋殿は何やら奴と因縁があると言うではないか。ならば、貴殿に任せようかと思ってな。どうだ。引き受けるか?」

 梁鵠の言葉に、蓋勲はゆっくりとまばたきをした。

 蓋勲は思い出す。

 父の無念な最期を。

 母の悲痛な泣き声を。

 祖父の怒声を。

 そして、自身の屈辱を。

 ゆっくりと、たっぷりと、過不足なく思い出した。

 そして、蓋勲は梁鵠と視線を合わせた。

 蓋勲は手を胸の前で組んで(きょう)(しゅ)をすると、口を開いた。

 「蘇正和を殺すとは、穏やかではありませんね。彼はあなたが見出した従事のはずです。一体何があったのですか?」

 梁鵠は蓋勲の言葉に自信の予想が外れたことを感じた。

 仇を暗殺する機会だ。

 一も二もなく飛びつくと思った。

 しかし、蓋勲は自身の激情を、まるで最初からないかのように泰然と構えている。

 気迫すら感じさせる蓋勲の視線に、梁鵠は思わず実情を詳らかにしてしまった。

 「い、いや、実はだな。蘇正和が黄英俊殿が罪を犯しているのを見つけたのだ。というのも、洛陽に呼び出されているにもかかわらず、期日に遅れている。つい先日、ようやく出発したという状況だ。半月近く、洛陽からの呼び出しを無視していたことになる。これは立派な罪だ」

 蓋勲はそれを聞いて、頷く。

 それは、罪だった。

 そしてこうも思う。

 蘇正和の密告癖は今の職務だと随分と有効に使えるらしい、と。

 「しかし、黄英俊の罪を裁いてもそこまで重い刑にはなるまい。皇帝直々の招致ならばまだしも、洛陽の臣からの呼び出しに遅れる、というだけではな。それでも彼の経歴には傷がつく。もしかしたら私は恨まれて、失脚させられてしまうかもしれない」

 蓋勲はそれにも頷いた。

 十分にあり得ることだった。

 そして、梁鵠が板挟みになっていることにも理解が追い付いた。

 「―――だから」

 「そうだ。だから、蘇正和を殺そうと思ったのだ。奴の口を封じてしまえば全てがうまくいくではないか」

 「なるほど」

 蓋勲は事情を把握して、頷いて、こめかみを揉んだ。目を強く閉じていて、眉根は寄せられ深い皺が彫られている。

 「………刺史殿。進言よろしいでしょうか」

 「うん? なんだ?」

 蓋勲は、自身がこれから言おうとしていることを吟味し、頭の中で整理して、口を開いた。

 「刺史殿。人が鷹を育てるのは、その攻撃性を必要とするからです。鼠や雀などの人に害をなす鳥獣を捕えるには、その攻撃性は必須です。鷹があまりに鼠を捕りすぎるからと言って殺したりはしないでしょう? 聞いた限りですと、蘇正和はただ職務を果たしただけに見えます。正しく職務を果たした者を処断してしまえば、この涼州において、今後職務を正しく行う者は出てこなくなってしまいます。そうなれば、この地は犯罪の飛び交う劣悪な地となり、刺史であるあなたはどちらにせよ裁かれるでしょう」

 「では! では、どうしろと言うのだ!?」

 「簡単なことです。まず、そもそも、黄英俊の犯した罪ですが、彼ほどの高貴な人間であれば、減免対象になります。遅刻程度の罪でしたらないも同然です。もちろん、褒められた行為ではないですし、注意は必要でしょうが、そこまで大きな問題にはならないでしょう。よって、刺史殿は黄太守に対して、注意喚起を行いさえすればよく、それだけならば向こうも目くじらを立ててこないでしょう」

 蓋勲の言葉に、梁鵠はゆっくりとまばたきした。

 そして、その言葉の意味を理解すると、途端に破顔して蓋勲の両手を取った。

 「おお。おお! その通りだ! わ、私はなんと愚かしいことをしようとしてしまったのだ。貴殿に救われた。ありがとう。ありがとう!」

 「いえ、刺史殿。よいのですよ」

 蓋勲は梁鵠に柔らかな笑みを浮かべる。

 普段郡内の軍事を担う蓋勲がこのように優しげな男だと知った梁鵠は呆気に取られてしまった。

 「しかし、蘇正和は貴殿にとっても仇なのだと聞いた。貴殿にとっては恨みを晴らす絶好の機会だったであろう。それなのに、良かったのか?」

 気が抜けた故だろう。聞かなくてもいいことを聞いた。

 聞いた後で、梁鵠もまずいと思ったらしい。顔を引きつらせている。

 それを見て、蓋勲は短く息を吐いた。

 自分は、やはり、間違っていないのだと、そう思えた。

 「いえ。彼は私の父を間接的にとはいえ死に追いやったのです。仇ですよ。しかし、今回、彼は仕事をしただけだ。仕事をこなした優秀な人間を(はかりごと)で殺してしまうのは国に誓った忠義に反する行いでしょう。それに、危機に陥っている状況に乗じて仇を討ったとしても何も満たされません。死んだ父も喜びはしないでしょう」

 そう笑顔で言い放つと、梁鵠は僅かに顔を引きつらせながら「そ、そうか」と頷いた。



 梁鵠の前を辞した蓋勲が刺史府を出ようとすると、入り口の扉に背を預けている男がいた。

 蘇格だ。

 「やっほ。蓋くん。いやいや。まさか君に命を救われるなんてねぇ。びっくりだぜ」

 そう言いながら両手を広げて歩み寄ってくる。

 「なぜここに」

 蓋勲が顔をしかめ、広げられた両手を躱しながら問うと、蘇格は肩を竦めてみせた。

 「いやね。俺も呼ばれてたのさ、刺史殿に。そんで、執務室に向かったら、まさかまさかの俺を暗殺しようっていうんだ。しかも、涼州の武闘派筆頭ともいえる、蓋元固にそれを唆してる場面ときた。いや参ったね。さすがに殺されると思ったさ」

 「そうか。それは、期待を裏切ってしまって申し訳なかったな」

 「いやいや。いやいやいやいや。君のお父上のことに関しては大変申し訳なかったと思っているよ。本当だ。君には命を救われた。だから、君の想いに報いたい。できれば、友人になってはくれないだろうか」

 「随分と、厚かましい男だな、蘇正和。いいか。俺はお前を助けるために刺史殿を止めたわけではない。刺史殿が道を誤らぬように止めただけだ。勘違いをするんじゃない」

 そう言って、蓋勲は蘇格の横を通り過ぎる。

 「あっはははぁ。すげえ。いいね、蓋元固! あんた最高だ! あんたが何か面倒ごとに巻き込まれた時はぜひ呼んでくれ! いつでも駆け付けるからさぁ!!」

 声高らかに調子づく蘇格を残して、蓋勲は太守府に帰った。



 それからまた数日後。

 「あー、蓋くん。あのね。また呼び出しだよ」

 太守府の執務室に顔を出した蓋勲は、范津から開口一番にそう言われた。

 「またですか。刺史殿ですか? 刺史府に向かえば?」

 「いやあ、違うんだ。いやはや。耳がお早いことだ。黄英俊殿からだよ」

 「――――――は?」

 范津は届けられた書簡を蓋勲に手渡す。

 そこには確かに黄雋の署名がされており、助けられたことに対して礼がしたい、と書かれていた。

 ついては申し訳ないが、洛陽まで足労願いたい、と。

 洛陽までは二週間ほどの距離だ。

 蓋勲はがっくりと項垂れる。

 上目遣いに范津を見るが、范津も申し訳なさそうに頬を掻いた。

 「済まないね。喫緊で動かなければならない戦線はないようだ。ありていに言ってしまえば、君がしばらく洛陽に向かったとしても、問題がなさそうなんだよなぁ、これが」

 「そう、ですか。では、行ってまいりましょうか」

 蓋勲はため息を吐くと執務室を出ようとする。

 「蓋くん」

 「はい?」

 「彼は君に褒賞を与えるだろうね。で、君はどうするんだい?」

 「はぁ………」

 蓋勲は改めて向き直り、間髪入れずに答える。

 「そもそも、私は黄英俊が(はち)()に該当するので弁護したにすぎません。私の名を売ろうとしたわけでも、褒賞に目が眩んだわけでも、黄英俊を救おうとしたわけでもない。道理を守ろうとしただけです。故に、何かを渡されることがあっても辞退しますよ」

 「はっはぁ。なるほどなぁ。八議、ねぇ」

 八議。

 それぞれ、

 親。皇帝の宗室。

 故。皇帝の旧知の人。

 賢。徳に優れた人。

 能。能力に優れた人。

 功。功績のある人。

 貴。高位の人。

 勤。国家に尽力した人。

 (ひん)。国家に賓客として扱われている人。

 を指しており、この性質をもった人間は罪を減免するという特例がある。

 黄雋は八議の内の『貴』に属している。

 それによって黄雋の罪は正当な権利として裁きを受けなくてもよくなったのだ。

 それは、蓋勲からしてみれば、ただ物事を正当に判断していったにすぎない。

 けれど、そんな蓋勲の言葉によって、三人の人間が救われたのも紛れもない事実なのだ。

 (英雄たる資質だな)

 范津は身内贔屓ながらもそう感じてしまう。

 そうとは知らない蓋勲は、呼び出しに応えるため、洛陽への旅を始めるために、直近で処理しなければならないことをまとめていた。



 彼が洛陽に向かった先で徴兵され、范津の許可もあったために黄巾討伐軍に従軍することになるのは、半月ほど先の話であった。

今回の部隊である涼州の混乱を書いたエピソード。

これ、起こってることも言ってることも史実なんですよ。ある程度違約はしてますけども。

梁鵠とか、なんで自分が暗殺する理由をペラペラ喋っちゃうんだろうね。基本悪いことに向いてない人なのではなかろうか。

ちなみにこの梁鵠。

後に曹操から呼び出された時も殺されるって疑心暗鬼になって自分を縛って出頭したとか。

曹操はなんでや、って縄を解かせたらしいよ。可愛い人やね。


表記ゆれの修正を行いました。(2025年8月3日)

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