魔法の矢
「…シラセも、頑張ってきたんだね」
エイムはつぶやいた。
「努力はしたよ。…でも、こんな程度の力じゃあ、何もできない…」
シラセは力なく答える。
「そんなことないよ!きっと何かの、誰かの役に立つ日が来るよ!」
「はは、ありがとう…でももうわかってんだ、俺は守護英雄様のようにはなれないって。
たくさんあがいてあがいて…気づいちまった。」
「シラセ…」
エイムはかける言葉が見つからず、少し沈黙が流れた。
「そういえば、シラセの魔法ってどんな感じなの? まだ見てなかったよね!」
エイムが、少し暗くなった雰囲気をほぐそうとして言った。
「え、見たいのか?エイムの魔法も見せてもらったし、いいぜ、見せてやるよ!」
シラセは少し元気が戻った様子で答える。
「いくぜ、見てろよ…」
シラセは右手を開いて前に突き出した。
そして、右手のひらに集中するそぶりを見せた。
瞬間。
右手に淡い光が浮かび上がったかと思うとほぼ同時に、そこには矢が出現していた。
温かみのある柔らかな白色で、まるで大理石のような質感だった。
「…すごい…」
エイムは思わず口からこぼした。
「すごいね!こんな風に物を作り出すことができるなんて!」
「まあ、こんなもんだな!」
シラセは少し得意になった様子で言った。
シラセが魔法を解くと、矢は淡い小さな光とともに霧散した。
「実際に見ると、本当にびっくりした!それにとても綺麗だった!」
「え、そうか?あんまり自分では思ったことなかったな」
シラセは笑いながら答える。
「それにさ!あんなに一瞬で作り出せるってすごいと思う!
私は人形に魔法を込めるのに時間がかかるけど、シラセの魔法は一瞬だった!
これってすごいことだよ!」
エイムは興奮した様子で言う。
「え、そうなのか…?
今まで、魔法が使える人間にほとんどあったことがなかったから、全然気づかなかったな…!」
シラセは少し戸惑いながらも、照れながら微笑む。
(今まで人と比べたことがなかったからわからなかったけど、俺の魔法にそんな特徴があったなんてな…)
シラセは少し、自信を取り戻したようだった。
「作るものは、全部あんな感じの色なの?」
「ああ、この魔法で作った物は、みんな白い石みたいになる。
守護英雄様は、しなるような材質も作れたみたいだけど…俺はまだそこまではできない。」
「そうなんだ!きっともっと奥が深いんだね。
まだまだシラセ、成長するんじゃない?」
エイムはお姉さんぶって、少しからかうように言う。
「そうだ、俺にはまだまだ伸びしろがあるぜ!
マナが少なくたって、やれることはあるんだ!」
シラセに、いつもの勝気な言葉が戻ってきた。
二人は賑やかに話しながら、川の上流を目指して平原を進んでいった。
そしてあたりが夕焼けに包まれる頃、ついに山のふもとまでたどり着いたのだった。
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