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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー誘惑の森編ー
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アシュクラの魔法

地面に、セイレーンたちの骨が乾いた音を立てて散らばった。


それを呆然と見下ろしていたアシュクラは、ふいに顔を伏せ――次の瞬間、肩を震わせて笑い出した。


「……クッククク……アッハハハハ!」

笑い声は次第に大きくなり、愉悦を隠そうともしない。

「いやあ、予想以上だよシラセちゃん! とても……楽しませてもらったねぇ!」


シラセは眉をひそめた。

耳には何も届かない。それでも、歪んだ笑顔と誇張された身振りだけで、言葉の内容は嫌というほど伝わってくる。


「……この状況で、まだ笑うかよ……」

低く吐き捨てるように呟き、視線を鋭く向ける。

「言っとくけどな……おまえ自身も包囲されてるんだぜ!?」


その瞬間――

木々を這っていた白い蔦がまたものすごい勢いで急成長し、アシュクラの両足に瞬時に絡みついた。


「少しでも妙なそぶりを見せたら……セイレーンと同じだ。棘で足を貫く!」


こいつが、一連の事件に関わっていることは明白だ。

捕らえて、情報を吐かせる。

そのためには、こいつに傷を負わせることも、いとわない。


シラセはそう自分に言い聞かせていた。

だがその胸の奥では、別の感情が蠢いている。


――人を、傷つける恐怖。


人々を喰らい、苦しめる魔獣なら、迷いはない。

だが、同じ人間相手に攻撃をすることは、シラセにとっては初めてだった。

どうしてもーー躊躇してしまう自分がいた。


シラセ自身、その怯えを自覚してはいなかった。

それでも無意識のうちに、彼は致命傷にならない“両足”だけを拘束していた。


そんな内情を知ってか知らずか。

両足を封じられたままのアシュクラは、貼りついたような笑みを崩さない。


「……ふふ……すごいねえ。一瞬で捕まっちゃった」

視線を揺らし、試すように続ける。

「でも、シラセちゃんもだいぶ……お疲れみたいだね。大丈夫かな?

……って、聞こえてないか」


事実、シラセは急激な具現化を繰り返して、マナを激しく消耗していた。

視界がわずかに揺れる。体が、ふらついていた。


「まあ……ここで捕まるのも面倒だし」

アシュクラは軽い調子で肩をすくめる。

「悪いけど、今日はここでおいとましようかな。いや~楽しかったよ、ありがとうね」


そう言って、ローブの内側に手を差し入れる。

取り出したのは――白い骨から削りだされた、一振りの剣だった。


「ッ!」


その挙動を見た瞬間、シラセの背筋に冷たいものが走る。

この状況でも、なお何かを仕掛けてくる。


一瞬、人を傷つけることへのためらいがよぎった。

だが――次の瞬間、エイムの顔が脳裏をよぎる。


下手をすれば、自分だけじゃない。エイムまで命が危なくなる!


シラセは歯を食いしばり、決断した。

蔦に絡みつく両足から、電光石火の速さで棘を具現化する。


しかし――


ギィン!!


鈍く、異様な音。

突き出した棘は肉を貫くことなく、硬質な何かに弾かれ、欠けていた。


(なんだ……!? 刺さらねえ!!)


その一瞬の隙を逃さず、アシュクラは骨の剣を振るう。

刹那、剣身から業火が噴き上がり――


蔦は、一瞬のうちに焼き払われた。


(こいつ……!!

魔獣を召喚するだけじゃねえのかよ……!?)


「シラセ!! いったん下がって!! 危険だよ!!」


叫びと同時に、エイムがマナブーストで距離を詰める。

シラセの体を引き寄せ、強引にアシュクラから引き離した。


二人は距離を取り、警戒の眼差しで敵をにらみつける。

対してアシュクラは、相変わらずの薄笑いを浮かべたまま、またローブの中を探っていた。


取り出されたのは、拳ほどの大きさの骨。


そこにマナが注がれた瞬間――

骨は深い紫色に輝き、空間が歪む。


そして現れたのは、大人一人を悠々と乗せられる、巨大な翼竜だった。


「な……こいつは……ワイバーンか……!?」


思わず漏れたシラセの呟きに、アシュクラは楽しげに目を細めた。


「ふふ、ご名答。ずいぶん詳しいんだね♪」

軽やかにワイバーンの背へとまたがり、言葉を続ける。

「じゃあ、もうわかるだろう? 今日はこれで、ばいばいってこと」


強靭な両翼が地面を薙ぎ払う。

砂と風が舞い上がり、次の瞬間――彼らの姿は一気に上空へと舞い上がっていた。


「……おい、待て……!」


駆け出そうとしたシラセの体が、ぐらりと揺れる。

エイムがすぐに支え、何も言わず首を横に振った。


「いやー、今日は楽しかったよ! ありがとう、また遊ぼうね~♪」


どこまでものんきな声を残し、アシュクラたちは空を駆け、遠ざかっていく。


その背が完全に見えなくなったあと――

森に残されたのは、エイムとシラセだけだった。


戦いが終わった。

そんな安堵は確かにあった。

だがそれ以上に、予想を遥かに超える敵の存在が、二人の胸に重くのしかかっていた。


言葉を交わすこともできず、

ただ立ち尽くしたまま――二人は、沈黙の中にいた。

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