瞬きの中で
周囲の木々に絡みつく、無数の白い蔦。
それらはすべて――シラセが具現化した魔法だった。
「……なるほどねぇ。セイレーンちゃんたちは、もうとっくにシラセちゃんの魔法で包囲されてるってわけか」
アシュクラは愉快そうに目を細めると、抑えきれない笑い声を森に響かせた。
「あはははは! いいねえ、本当に!」
歪んだ笑みが、その口元に貼りつく。
「でもさぁ、もし術者が意識を失ったらどうなるんだろうね?
シラセちゃんが動く前に、セイレーンちゃんたちが――八つ裂きにしちゃったら……ねえ?」
その言葉を合図にしたかのように、セイレーンたちが一斉に羽を打ち鳴らした。
空気が爆ぜ、突風と化した影が、一直線にシラセへと襲いかかる。
――疾い。
猛禽の持つ凶悪な瞬発力。
本能的な殺意と威圧が、刃のように迫る。
普通の人間なら、なすすべもなく引き裂かれていただろう。
だが――シラセは違った。
自覚していたのだ。
自分の魔法が持つ、本当の強さを。
脳裏に蘇るのは、かつてエイムが向けてくれた、まっすぐな言葉。
『こんなに一瞬でものを作り出せるって、すごいと思う!
私は人形に魔法を込めるのに時間がかかるけど、シラセの魔法は一瞬だった!
それって、本当にすごいことだよ!』
ふっと、自然に口元が緩む。
――ありがとな、エイム。
あの時から、お前はもう……俺の魔法のことを、俺以上に理解してたんだな。
次の瞬間、シラセの周囲に光が満ちた。
――イメージしろ。一瞬の成長を。
そうだ……お前はもう見ている。
生命が持つ、その驚異的な神秘を。
具現化しろ――
あの魔法植物を。
――――フラッシュバインド。
それは、かつて魔獣ガルムとの戦いで、エイムが足止めに用いた魔法植物。
種子が空気に触れた瞬間、爆発するように成長し、周囲すべてを絡め取る蔦。
この世界のすべてが、自分の糧になる。
シラセは、その感覚を、確信として掴んでいた。
――刹那。
セイレーンたちを囲んでいた蔦が、まばゆい光を放つ。
大気を引き裂く轟音とともに、時間そのものを圧縮したかのような急成長。
蔦は伸び、伸び、瞬時にセイレーンたちを絡めとる。
そして次の瞬間――
ズシャシャシャシャッ!!!
からめとった蔦から、無数の鋭利な棘が突き出し、容赦なくセイレーンたちを貫いた。
「ア……アギャァァァァァァァァァッ!!」
甘美だった歌声は、見る影もない断末魔へと変わる。
その蔦に絡まれた体はやがて崩れ、塵となり――
最後に残ったのは、乾いた音を立てて地面に転がる、白い骨だけだった。
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