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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー守護英雄の村編ー
10/60

焚火の灯と運命の夜明け

山のふもとまでたどり着いたエイムたち。

夕焼けがあたり一面を染め上げ、目の前の山肌は橙と紅の淡いグラデーションに包まれている。


「今日はここらへんで野宿しよう。さて、どうしようかな…」

シラセが少し考え込んで言う。

シラセは旅の経験がないので、野宿の方法もよくわからないようだ。


「じゃあ私は、テントの骨組みにできそうな木の枝を探すね!

 シラセは、焚火に使えそうなものを探してきて。」

旅慣れたエイムは、てきぱきと指示を出した。


「あ、ああ!わかった!」


二人はそれぞれ手分けして野宿の準備を始めた。


エイムは木の枝で骨組みを作ると、持ってきた布をかぶせ、簡易的なテントをこしらえた。

シラセは集めた小枝や落ち葉をばらばらと一か所にまとめ、焚火の準備をしている。


やがて夕闇が辺りを覆い始める。空の茜色は深みを増し、地平線が夜の帳に溶け込んでいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


パチ…パチ…


周囲は暗闇に包まれ、焚火の炎だけが、二人と一匹の顔をゆらゆらと照らしている。

二人は持ってきた食料を食べ終え、ぼんやりと焚火を眺めていた。


「いよいよ明日だな…」

シラセは少し不安が混じった声で、ぽつりとつぶやいた。


「うん。絶対に原因を突き止めなきゃ。」

エイムは決意を固めた様子で言う。


「そうだな…そうと決まれば、早めに寝ちまおうぜ。

 朝一番に出発して、さっさと解決しよう!」

シラセは自分を鼓舞するように、声を張って言う。


「うん、そうだね!」


「それじゃあ、俺がまず見張りをするから、エイムが先に寝ろよ。」

シラセは少し見栄を張った様子で言い、続ける。


「この山にはそれほど危険な動物はいないと思うけど、絶対に安全とも言い切れない。

 交代交代で見張りをしよう。」


「あ、それなら大丈夫だよ!

 私が眠ってるときは、いつもピーちゃんがしっかり見張っててくれるの!」


「ピー!!」

ピーちゃんが胸を張って鳴く。


「え…ピー助ってずっと動いていられるのか!?」

シラセは少し驚いた様子で尋ねる。


「ピー助ってなに?」

エイムが笑いながら言う。


「ちゃん付けするの恥ずかしいんだよ!俺はピー助って呼ぶからな!」

シラセは少し赤くなりながら答える。


「ピーちゃんってオスなのかな…?」


「わかんねえよ、どっちでもいいし!

 てか、ピー助はエイムの魔法で動いてるんだろ?

 エイムが寝たら、普通は魔法が解けるんじゃないのか?」


「うん、前はそうだったんだけど、いつからか私が寝てる間もピーちゃんが動けるようになってたの!

 私も不思議なんだけどね…

 小人たちは私が眠ると魔法が解けちゃうから、ピーちゃんだけ特別みたい。」

エイムは首をかしげながら答えた。


「そうなのか…お前、一体どうなってんだろうな…」

シラセはピー助を見ながら、怪訝な顔でつぶやいた。

ピーちゃんは素知らぬ顔で、エイムの肩に止まっていた。


「さて、それじゃあ寝よっか。ピーちゃん、いつもみたいによろしくね!」

「ピー!」


ピーちゃんはエイムの肩から飛び立ち、テントのてっぺんに止まった。

エイムはガサゴソとテントの中に入って、さっそく寝る準備にかかっている。

さすが旅慣れた様子、といったところだ。


エイムとシラセはそれぞれ布に包まって、黙っていた。

エイムはすぐに眠ってしまったようで、そのうち「スゥー…スゥー…」と寝息が聞こえてきた。

シラセはというと、初めて女の子と二人で寝るので、緊張しているようだ。


(なんでエイムは何ともなくすぐ寝れるんだ…)

(明日、大丈夫だろうか…俺はしっかりエイムを守れるのか?)

(ピー助、ちゃんと見張ってんだろうな…本当に大丈夫か?)


落ち着かない様子で、ごちゃとちゃといろいろなことが頭を巡った。

ただ、一日中歩いた疲れもあってか、そうこうしているうちにだんだん瞼が重くなり、気づかぬうちにシラセも眠りに落ちていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


チュンチュン


外から鳥のさえずりが聞こえ、気づくとテントの外が白んでる。

いつの間にか、朝が来たようだ。



いよいよ、水源の調査が始まる。

そしてこの日が、二人の運命を大きく変えることになるとは、その時二人は知る由もなかった。

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