焚火の灯と運命の夜明け
山のふもとまでたどり着いたエイムたち。
夕焼けがあたり一面を染め上げ、目の前の山肌は橙と紅の淡いグラデーションに包まれている。
「今日はここらへんで野宿しよう。さて、どうしようかな…」
シラセが少し考え込んで言う。
シラセは旅の経験がないので、野宿の方法もよくわからないようだ。
「じゃあ私は、テントの骨組みにできそうな木の枝を探すね!
シラセは、焚火に使えそうなものを探してきて。」
旅慣れたエイムは、てきぱきと指示を出した。
「あ、ああ!わかった!」
二人はそれぞれ手分けして野宿の準備を始めた。
エイムは木の枝で骨組みを作ると、持ってきた布をかぶせ、簡易的なテントをこしらえた。
シラセは集めた小枝や落ち葉をばらばらと一か所にまとめ、焚火の準備をしている。
やがて夕闇が辺りを覆い始める。空の茜色は深みを増し、地平線が夜の帳に溶け込んでいった。
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パチ…パチ…
周囲は暗闇に包まれ、焚火の炎だけが、二人と一匹の顔をゆらゆらと照らしている。
二人は持ってきた食料を食べ終え、ぼんやりと焚火を眺めていた。
「いよいよ明日だな…」
シラセは少し不安が混じった声で、ぽつりとつぶやいた。
「うん。絶対に原因を突き止めなきゃ。」
エイムは決意を固めた様子で言う。
「そうだな…そうと決まれば、早めに寝ちまおうぜ。
朝一番に出発して、さっさと解決しよう!」
シラセは自分を鼓舞するように、声を張って言う。
「うん、そうだね!」
「それじゃあ、俺がまず見張りをするから、エイムが先に寝ろよ。」
シラセは少し見栄を張った様子で言い、続ける。
「この山にはそれほど危険な動物はいないと思うけど、絶対に安全とも言い切れない。
交代交代で見張りをしよう。」
「あ、それなら大丈夫だよ!
私が眠ってるときは、いつもピーちゃんがしっかり見張っててくれるの!」
「ピー!!」
ピーちゃんが胸を張って鳴く。
「え…ピー助ってずっと動いていられるのか!?」
シラセは少し驚いた様子で尋ねる。
「ピー助ってなに?」
エイムが笑いながら言う。
「ちゃん付けするの恥ずかしいんだよ!俺はピー助って呼ぶからな!」
シラセは少し赤くなりながら答える。
「ピーちゃんってオスなのかな…?」
「わかんねえよ、どっちでもいいし!
てか、ピー助はエイムの魔法で動いてるんだろ?
エイムが寝たら、普通は魔法が解けるんじゃないのか?」
「うん、前はそうだったんだけど、いつからか私が寝てる間もピーちゃんが動けるようになってたの!
私も不思議なんだけどね…
小人たちは私が眠ると魔法が解けちゃうから、ピーちゃんだけ特別みたい。」
エイムは首をかしげながら答えた。
「そうなのか…お前、一体どうなってんだろうな…」
シラセはピー助を見ながら、怪訝な顔でつぶやいた。
ピーちゃんは素知らぬ顔で、エイムの肩に止まっていた。
「さて、それじゃあ寝よっか。ピーちゃん、いつもみたいによろしくね!」
「ピー!」
ピーちゃんはエイムの肩から飛び立ち、テントのてっぺんに止まった。
エイムはガサゴソとテントの中に入って、さっそく寝る準備にかかっている。
さすが旅慣れた様子、といったところだ。
エイムとシラセはそれぞれ布に包まって、黙っていた。
エイムはすぐに眠ってしまったようで、そのうち「スゥー…スゥー…」と寝息が聞こえてきた。
シラセはというと、初めて女の子と二人で寝るので、緊張しているようだ。
(なんでエイムは何ともなくすぐ寝れるんだ…)
(明日、大丈夫だろうか…俺はしっかりエイムを守れるのか?)
(ピー助、ちゃんと見張ってんだろうな…本当に大丈夫か?)
落ち着かない様子で、ごちゃとちゃといろいろなことが頭を巡った。
ただ、一日中歩いた疲れもあってか、そうこうしているうちにだんだん瞼が重くなり、気づかぬうちにシラセも眠りに落ちていた。
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チュンチュン
外から鳥のさえずりが聞こえ、気づくとテントの外が白んでる。
いつの間にか、朝が来たようだ。
いよいよ、水源の調査が始まる。
そしてこの日が、二人の運命を大きく変えることになるとは、その時二人は知る由もなかった。
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