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ナンバーズ

 明光寺学園本校舎4階。

 最上階であるその場所は選ばれた者しか立ち入る事が許されない、円卓の間が存在する。

 そこには入れるのは明光寺学園で最も優れた先進者達だけ。

 その者達はナンバーズと呼ばれている。


 その場所へ足を踏み入れようと階段を登っているのは舞風と麗泉。

 彼女達もナンバーズの一員。

 緊急招集を受け、円卓の間へ向かっている途中だ。

 本日は休日。

 生徒は殆どおらず、学園内は静けさが充満している。

 4階の大きな扉の横にある機械に手帳型の学生証明書をかざす舞風。

 厳重なセキュリティーが解除され、扉が開かれると中には大きな円卓が一つと11個の椅子が置かれていた。

「おそいじゃねぇか、No.5、No.6。」

 冠木姉妹に乱暴な言葉を投げつけてきたのはⅩと記された椅子に座っている髪を金色に染めた男子生徒。

 両足を円卓に乗せてガムをくちゃくちゃ噛む音を部屋に響かせている。

「申し訳ございません。」

「構わないよNo.6。定刻前だ。」

 窓に一番近い、Ⅰと記された椅子に座っている男子生徒が舞風の謝罪を制する。

 彼はNo.1。

 巨大な体格から発する威圧感はその場にいる誰もが息を呑み萎縮する。

「二人とも席に座りたまえ。11よ、二人にお茶の用意を。」

「かしこまりました。」

 No.1の傍に控えていた眼鏡をかけた男子生徒が深く一礼し、準備に取り掛かるのを見届けて二人は所定の席にそれぞれ座る。

(相変わらず重苦しい空気ね。)

 心の中で毒吐く麗泉。

 彼女はこの場所が好きではなかった。

 ナンバーズとはインスピティアのみの成績上位10名と研究科主席の11名で構成されている。

 ナンバーズには多くの恩恵と権限があり、その力は生徒会以上。

 本来であればナンバーズの主席であるNo.1が生徒会長を兼任するのが習わしなのだが、数年前にNo.1の称号を勝ち取った生徒が生徒会長就任を拒否した事で一変。

 今では外れくじの扱いとなっている。

「定刻だ。諸君、緊急の呼び出しにも関わらず参加してくれた事に感謝する。」

 舞風と麗泉の前にティーカップが置かれ、眼鏡をかけた男子生徒がⅪの椅子に座ると同時にNo.1が声を張り上げる。

「参加者は八人、過半数参加により本会議は成立となる。」

 ちなみにこの場にいるのは舞楓と麗泉を含めて7人。

 一人はモニター参加でⅡの席には小さな画面が置かれている。

 Ⅲに座るツギハギのウサギのぬいぐるみを抱えた女子生徒とⅧの席に座るガスマスクを装着している女子生徒は舞風達やNo.1の言葉にも目をくれず自分の世界に入り込んでいる様子。

「そんな建前はいいからよ。さっさと本題に入れよNo.1。」

「諸君達に集まってもらったのは他でもない。先日、学園内で起きた決闘についてだ。」

 No.1の発言にピクリ、と身体を震わす麗泉。

(麗泉ちゃん、平常心。)

 アイコンタクトを送る舞風は態度を表に見せなかったが、内心は穏やかではなかった。

「又聞きしている者達がいるだろうが詳しく説明しよう。」

 No.1の視線を受け、No.11が起立、報告を始める。

 内容は冠木姉妹が予想していた通り、立川装と忍久保優磨との決闘について。

「けっ!装のやつ、無様だなぁ。」

「No.10よ。敗者を貶すではない。彼は君の直属の後輩だろう。」

「だからだよ!アレだけ目をかけてやったのにこのざまぁだ。使えねぇな!」

「立川装は次期ナンバーズ候補。そんな彼が負けた。いや、ただ負けたのならここまで問題視はしない。問題は忍久保優磨という人物がインスピティアを使用しなかった事が問題なのだ。」

 No.1の最後の一文がその場の空気を重くする。

「この情報は学園内で留めている。我々先進者は旧人類を導く者。そんな我々がインスピティアなく負けた事が公になれば大問題だ。」

「ダスト・クリーンに知られる訳にはいかないわね。」

「その通りだNo.3。」

 ダスト・クリーンとは反先進者活動団体の名称である。

 前身は先進者の躍動に嫉妬したとある資産家が私財を投げ打って設立させたNPO団体で先進者の保証問題と権利剥奪を盾に様々な嫌がらせを行ってきた。

 当初は悪戯な嫌がらせと正当な抗議活動であったが、規模が大きくなり過ぎた事で収拾が付かなくなり、活動が激化。

 誘拐や暴行など悪質な犯罪を行うようになった。

 その結果、結成した代表は逮捕。

 ダスト・クリーンは解体に追い込まれるが、その後も秘密裏に活動しているのである。

「奴らに好材料を与える訳にはいかない。故に彼を見極めなければならない。」

「そういう事ならこの俺様に任せてくれ。」

 自信満々に名乗りを上げるNo.10。

「チョーシにノッているあの野郎を叩きのめしてやる!」

「ちょっと待って下さい。」

「何だね、No.5。」

 会話を遮ったのは麗泉。

 居ても立っても居られず、思わず声を出したのだ。

「この件は私に任せてもらえませんか?元々は近くにいた私の監督不届です。汚名挽回の為、私が解決に導きます。」

「いいだろう。」

 麗泉の訴えにNo.1が大きく頷く。

「この件はNo.5、そしてNo.6の両名に任せる。あの男について徹底的に調べるのだ。」

「はい。」

「分かりました。」

 素直に頷く麗泉と舞楓。

 No.1の下した決定に大多数は賛同。

 ただ一人、不信感を示すNo.10を残して。

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