闇の商人
秘密裏に武器や道具を製造・売買している裏社会の人間達の事。
その相手は個人から国・反乱軍など多様で様々な武器を取り扱っている。
以前までは銃や兵器・薬などに手を染めていたが、先進者の存在が確認され、軍事利用される事が分かるとすぐさま方向転換。
先進者を拉致・監禁しては薬物などで廃人化させて商品として売り捌き始めた。
現在UNACOMは最重要事項として逮捕・壊滅へ総力を尽くしているが、数が多く又中々尻尾が掴めず、かなり停滞しているのが現状である。
「じゃあ、今回の事件にはその闇の商人が関与しているって事?」
「その可能性が高いだろうな‥‥。お、コレ美味しいな。」
手作りの卵焼きを一口食べた感想が自然と出る。
「良かったね麗泉ちゃん。侑磨君のお口に合って。」
「~~~。」
唸るのは下手な反論で侑磨からの感想を汚したくないから。
今は昼休み。
侑磨は舞風、麗泉と一緒に高等部校舎の屋上で昼食中。
冠木姉妹の手作り弁当のご相伴に預かる侑磨。
他者が見ればとても羨ましがる光景だ。
今までは昼休み中も生徒会の雑務に追われる程であったが、侑磨が来た事でこれも解消。
現在ではゆっくりと食事を楽しめる程の余裕が生まれた。
そんな中、侑磨が昼食をカロリーメイトやサプリメントだけで済ましているが判明。
それを知った舞風と麗泉が食事改善の為に侑磨へ弁当を作るようになり、現在に至るのだ。
「手先が器用なのに料理が出来ないの、おかしくない?」
「作る機会がなかっただけさ。」
聞く話によると保護者であるシルフィアがサプリやカロリーメイト等で食事を済ませるタイプ。
家事全般も苦手で無頓着な性格を見事引き継いでしまったようだ。
(ねえお姉ちゃん。このままシルフィア先生に侑磨を任せたら――――。)
(絶対にダメね・・・。)
アイコンタクト後、深く頷き合う。
常日頃から侑磨の身の回りについて目を光らせよう、と強く誓った瞬間であった。
「つまり私達の次の仕事はその闇の商人達の逮捕、となるのね。はいどうぞ侑磨君。」
舞風から食後のお茶を頂く。
至り尽せりのこの環境に感謝しながら答える。
「いや、二人にはこの事件には関与させない。この話をしたのは俺がこの事件で学園を休む可能性があるから前もって伝えただけだ。」
「え、何で?」
その決定に不満をぶつけていたのは麗泉。
自分達は頼りないのか、と眼で訴える。
「頼りない訳ではない。ただ二人との相性が悪いからだ。」
「相性が悪い?」
「闇の商人にとって先進者を金になる『商品』としか思っていない。今まで数多くの先進者達を拉致され『商人』として作り変えている。その中にはかなりの実力者をもいた。」
「先進者を捕える術を熟知している、という事ね。」
「その通りだ舞。」
「でもどうやってその人達は先進者を捕まえているの?闇の商人の大多数は旧人類だと聞いているけどーーーってごめん。深掘りし過ぎてよね。」
侑磨の表情が曇るのを見てすぐに謝る麗泉。
「いや構わない。二人なら話してもいいだろう。」
周囲に人がいない事を確認して小声で訳を話す。
「ここだけの話にしてくれ。インスピキャンセラーだ。」
「「インスピキャンセラーですって!!はっ!」」
咄嗟に口を両手で塞ぎ、周囲をキョロキョロ。
その仕草は寸分狂わず、全くの一緒。
おもわず侑磨の口から笑みが溢れる。
「インスピキャンセラーって確か、先進者が発する脳の周波数を狂わせてインスピレティアの発動を無効させる装置の事よね。」
「それって条約で使用禁止になってその装置は全て回収、破壊されたはずーーー。」
「随分前にインスピキャンセラーの設計図が流失した事がある。ある程度の知識と技術さえあれば簡単に作り出せる事が可能。これは世間には知られていない情報だ。心の中に留めてくれ。」
コクコクと頷く。
「それにしてもインスピレティアの無効化。確かにそれは厄介ね。」
「インスピレティアに依存している先進者が多いからな。舞や麗みたいに護身術を身につけている訳ではないから封じられればただの人と同じだ。更に相手は銃などの武器も使用してくる。」
「インスピレティアを封じられたうえでの飛び道具はちょっと無理だわ。」
「二人とも学園で荒事になれているとはいえ、本当の現場とは比べようがないほど危険だ。戦場だ。正直な話、その現場で二人を護る余裕は俺にはない。」
「そうね。侑磨君の話を聞く限り、私達は行かない方がいいわね。」
姉同様に理解を示す。
「今回は大人しく留守番するわ。因みにいつから学園を休むの?」
「もう少し先かな。今シルフィが相手の正体とアジトの場所を調査している。それがわかり次第だ。」
ここまで話し終え、大きく背伸びする侑磨。
「おかげで午後の先進者実習は自習になったし、のんびりするかな。」
「ふ〜ん。」
「成程、ね〜。」
「え?な、何?」
唐突にほくそ笑む冠木姉妹。
「実はね侑磨君。」
「私達、いい事を思いついたの。」
同じ考えに至ったのはやはり双子だから。
両サイドからジリジリ迫る二人が不気味で後退するも柵がそれを邪魔する。
「「勿論、手伝ってくれるよね、侑磨(君)。」」




