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明光寺学園

 UNACOM(ユナコム)管理の下、先進者(せんしんしゃ)の育成と教育を目的として設立された小中高一貫校である。

 生徒数は万人を超え、全生徒の7割は先進者(せんしんしゃ)、もしくは先進候補者(せんしんこうほしゃ)(素質はあるが、まだ力には目覚めていない者のこと)。

 残り3割は先進者(せんしんしゃ)関連の研究者を志している生徒である。

 全世界でも十数校しかない、日本唯一の先進者育成学校であるこの明光寺(めいこうじ)学園は世界的にも高い水準を誇っており、日本各地だけではなく海外からも生徒が集う学園である。


 

「こっちです。」

 女子生徒の案内で連れられた場所は本校舎に隣接する第2グラウンド。

 主に部活動で使われるそのグラウンドの中央には野球のユニフォームを着た男子生徒とサッカーのユニフォームを着た男子生徒が激しく言い争っていた。

「ふざけるな!今日は俺達野球部が使う手筈になっている。サッカー部はどっかに行け!」

「何を寝ぼけた事を。今日は僕達サッカー部が前もって前もって予約していた。退くのは君達の方だ。」

「横取りは許さないぞ。」

「それはこちらのセリフだ!!」

「そこまでよ!」

 一触即発の間に割り込んだのは肩甲骨辺りまで伸びている鮮やかな小麦粉色の髪をハーフポニーで纏めた美しい女子生徒。

 名前は冠木麗泉(かぶらぎれいみ)

 高等部2年で生徒会副会長である。

 彼女が介入したことで戦々恐々とその場を見守っていた野次馬達から安堵の声が。

 同時に彼女の背筋が真っ直ぐに伸びた立ち姿とその美しさに皆が目を奪われる。

「また貴方達ね。いい加減にしなさい。」

 麗泉に睨まれて一瞬言葉を失う両部活の主将。

 彼女は先天性の虹彩異色(こうさいいしょく)(しょう)で右眼が黄金(こがね)色、左眼がコバルトブルーと瞳の色が異なっている。

「お、俺は悪くない。俺達が使うグラウンドをサッカー部の連中が横取りしたから怒っていただけだ。」

「何を言っている。横取りしたのはお前達野球部だろうが!」

「はいはいはい、そこまでですよ。」

「お姉ちゃん。」

 パンパンパン、と手を叩きながら野次馬の人垣の中から姿を現したのは麗泉と瓜二つの女子生徒。

 冠木舞風(かぶらぎまいか)

 麗泉の双子の姉で生徒会会長だ。

 背丈と容姿は麗泉とほぼ同じ。

 しかし髪はきめ細やかで少しウェーブがある少しエメラルド色でそれをハーフツインで纏めている。

 そして彼女も先天性の虹彩異色(こうさいいしょく)(しょう)で右眼は翡翠色、左眼は黄金(こがね)色の瞳をしている。

「二人とも何勝手なことを言っているのかしら。このグラウンドは今日、女子ソフトボール部が使用することになっています。」

「それを貴方達が勝手に使用しようと騒ぎだしたからこの女子ソフト部の部長さんが私達に助けを求めてきたのよ。」

 冠木姉妹の反論に言葉を詰まらせる両部長。

「それに前々から言っているでしょう。使用したいなら前もって申請をしなさい、と。」

「貴方達二人とも、一度も申請を出したことないでしょうに。それでよく予約した、と豪語出来たわね。」

 容赦ない正論にぐうの音も出なくなった両部長。

「さ、分かったなら二人ともすぐここから去りなさい。女子ソフトボール部の邪魔よ。」

 項垂れてすごすごと立ち去る二人・・・・・・ではなかった。

「うるせぇええええ!」

「実力行使だ!」

 完全なる逆ギレ。

「普段をいがみ合うのに。」

「こういう時は息ぴったりなのね。」

 暴力で歯向かう二人に対して慌てる素振りを一切見せない冠木姉妹。

 このような状況は慣れっこなのだ。

 アイコンタクト一つ。

 それぞれの相手の前に立つ。

「くらえ!!!」

 インスピレティアによって熱せられた金属バットを振り回す野球部部長の前に立ったのは舞風。

 不規則なバットの軌道は近づきにくいはずなのに舞風は難なくすり抜けて懐へ。

 舞風のインスピレティアは『風』。

 風を発生させて自在に操ることが出来るのだ。

 舞風はバットの軌道を風の力で無理矢理方向を変えたのだ。

「悪い子にはオシオキよ。」

 すかさず腕袖と襟袖を掴んで一本背負い。

 背中から叩き落ちた野球部部長は泡を吹いて一撃K.O。

「これでもくらえ!」

 サッカー部部長の相手は麗泉。

 火花が発生している右足を難なく躱す。

「踏み込みが甘い!蹴りはこうするのよ!」

 お手本を見せるような綺麗な回し蹴りが炸裂。

 麗泉のインスピレティアは『水』

 大気中の水素から水を生成することが出来る。

 麗泉が自身の足に水の渦を作り出し放った蹴りはサッカー部部長の顔面にヒット。

 回転しながら吹き飛ばされる。

「おお~~~。スゲぇ!!」

「流石冠木姉妹だ!!」

「あの厄介部長達を瞬殺したぞ。」

 野次馬達からの大喝采に手を振り歓声に応える冠木姉妹。

 しかしそれはただのパフォーマンス。

(全くもう・・・。)

(いつも大袈裟なのよ・・・。)

 二人の内心は溜息でしかなかった。


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