女性連続暴行犯
「くそっ!」
と人気がない公園内で一人悪態をつく針金のように痩せ細い小柄な男性。
彼の名前は高松聡。
今世間を騒がせている女性連続暴行犯の犯人である。
「俺の事をコケにしやがって!」
衝動的に手にする小型ゲーム機を地面に叩きつけようとするのを寸前で思い留まる。
「まあいい、相手は俺がどこにいるか分かっていない。」
彼は手にしている携帯ゲーム機を使いカマキリの化け物(彼はそれを蟷螂と呼んでいる)を召喚、犯行を及んでいた。
蟷螂の眼が捉えた映像が画面に映し出される事でその場の状況を把握することが出来る為、現場から離れた場所でも犯行可能な為、捜査の網に彼自身が捕まる事がなかったのだ。
「そうだ、相手は俺の存在に気付いてない。いくら邪魔しようと俺まで辿り着くことは出来ない。」
声に出すことで自分の優位性を確認し、気持ちを落ち着かせる。
「蟷螂の残機はまだある。アイツに邪魔されたのは癪だが、獲物は他にも沢山いる。」
ゲーム機に目を移す。
画面には蟷螂×10の文字と召喚と書かれた赤いボタンが一つ表示されていた。
「さて、次の獲物だ。」
召喚ボタンにカーソルを合わしてAボタンを押そうとした時、背後から「そこまでよ!」と鋭い声が飛ぶ。
驚く高松聡が振り返るとそこには金属製で二本のアンテナが付いたリモコンを手にしたシルフィアの姿が。
「見つけたわよ連続暴行犯。」
「なんで俺のいる場所が?」
「あなたがその化け物を操る際にそのゲーム機から発生している脳電子波を傍受して居場所を突き止めたのよ。」
過去の犯行から犯人の先進者は遠隔操作型だと気付いたシルフィアは相手が放つ脳電子波を解析し、手にする機械を作製し、犯人を特定したのだ。
「さあ、ここまでよ。観念しなさい。」
「くっ。」
奥歯を噛み締める高松聡。
だが彼は諦めていなかった。
(すでに電源は入っている。蟷螂を召喚して背後から襲えば―――。)
心の中でほくそ笑む高松聡。
(イライラする。そうやって偉そうにするアンタを見ていると、な。)
勝ち誇ったその顔が蟷螂に襲われ、泣き叫ぶ表情に変わる事に高揚を抱きながら、Aボタンを押そうとしたその刹那、暗闇から伸びる手。
「ぎゃあ!」
瞬く間に関節技を決められ、地面に倒される高松聡。
ゲーム機が地面に転がる。
「自分自ら囮になるとは捜査官の鏡だな、シルフィ。」
背後から高松聡に襲い掛かったのは侑磨。
シルフィアに意識が向いている隙に背後に回り込み、捻じ伏せたのだ。
「見事だわユーマ。作戦通りね。」
「そいつはどうも。」
軽口をたたいているように思えるが、感情は一切ない。
そしてその間も高松聡を押さえつける力も視線も緩める事はしない。
「っ~~、は、放せよ。」
「成程、これであの化け物を召喚していたのね。」
地面に転がるゲーム機を回収、隅々まで観察。
「とにかくこれは後でじっくり分析させてもらうわ。アナタの供述も踏まえてね。」
「っ!!何だよお前らは!」
痛みを堪えながら叫ぶ高松聡に向かってシルフィアは胸ポケットから手帳を取り出し目の前に突きつける。
「UNACOM本部特務捜査官、シルフィア=デュナミス。」
「同じくUNACOM本部特別捜査官、忍久保侑磨。階級は軍曹。」
「ユ、UNACOM本部、だと!!」
「アナタを連続暴行罪の容疑で逮捕・拘束します。」
「観念しろ。」
「くそ~~~。」
こうして連続女性暴行犯である高松聡は呆気なく逮捕された。




