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シルフィア教授と忍久保侑磨の関係

「大したことではないわ。ユーマとはただ遠い親戚で保護者代わりよ。」

 大きめのパーカー一枚と白衣を着て戻ってきたシルフィアが侑磨との関係を簡潔に答える。

「17歳とは言えまだ未成年。私が彼の身元引受人。この学園に転入してきたのもその関係。」

 椅子に座り、足を組む。

 綺麗な生足とチラリ見え隠れする下着に麗泉は内心ドキドキ。

 教育上宜しくない格好だが、これ以上は着込みたくないと抵抗するシルフィアに何も言えず。

「一応、学園側には只の教師と生徒で通しているから。私達の関係性を知っている人は殆どいないわ。」

「そう言うならさ、夜中まで晩酌に付き合わさないでくれよ。」

「煩いわね。私はうだつが上がらない同僚の愚痴に毎日疲弊しているの!ストレス発散に付き合ってくれてもいいでしょう。」

 部屋の後片付けをする侑磨からの反論を一蹴。

「ま、そういう事よ二人。私達の関係をあまり言いふらさないで―――どうしたの?」

 複雑な表情を見せる麗泉の顔を覗き込む。

「あの、そのシルフィア先生がこんなにもスタイルがいいなんて・・・。」

 麗泉の回答に隣の舞風も無言で頷く。

 シルフィアがここまでスタイルが良く整った顔立ちをしているとは麗泉は愚か、舞風も知らなかったのだ。

 だがそれも無理もない。

 普段のシルフィアは長い髪に櫛を通さず、ぐしゃぐしゃでレンズが厚い眼鏡と相まって綺麗な顔立ちを隠しているのだ。

 そしてサイズに合っていない大きめなブラウスをだらしなく着てその上から白衣を着込んでいるので身体のラインは完全に隠されており、その容姿から学内では『不細工な女性』と認識されているのだ。

「ま、それは仕方がない。シルフィは無頓着だからな。」

「煩いわねユーマ。研究や学園の雑用で忙しいのよ。それに公の場でちゃんとしているわ。」

「はいはい。それよりも二人はどうしてここに?」

「私達は教授に呼ばれたのよ。」

 ゴミ袋の口を縛り、端へ放り投げた後、シルフィアに視線を向ける。

「二人を呼んでんでいるのなら昨夜あんなにも酒を飲むなよ。」

「別にいいでしょう。それにあれぐらいしないとユーマを引き留めれなかったし。」

「俺を引き留める?それはどういう事だ?」

「さてと、二人を呼んだのは他でもない、生徒会のことよ。」

「おいシルフィ!」

 侑磨が語気を荒げるがシルフィアは無視して話し続ける。

「まずは立川装書記について。彼はユーマとの決闘後、病院に搬送。全身の筋肉断裂で全治1年の診断が出たわ。」

 冷淡な口調には感情がない。

「さらにリハビリも考慮すると2年は戻ってこれない。これにより彼の休学が決定。生徒会の役職も解任と決まったわ。」

 ふう、と大きなため息を落とし、コップに手を伸ばす。が、それを侑磨が遮る。

「まだ朝。向かい酒は駄目だ。」

「ケチね。で、舞風会長。今後3人だけになるけど手は周る?」

「無理です。現状の4人でも遅れが生じています。運営に支障をきたします。」

「でしょうね。なので人員を補充する事にしました。」

「誰ですかシルフィア先生。」

「ユーマよ。」

「「え?」」

「はああああ~~~~?」

 驚いたのは冠木姉妹岳ではなく侑磨本人も。

 どうやら何も聞かされていないらしい。

「ちょっと待てシルフィ!どういう事だ?」

「どうも何も、今回はユーマが原因よ。」

「俺は絡まれただけだ。何も悪くないぞ。」

「二人ともこう見えてユーマは使えるわ。普段から私の研究の手伝い(雑用)をやらしているから書類整理に長けているし、腕っぷしもある。人員不足は解消されると思うわ。」

「おい、勝手に話を決めるな。無視するな。」

「私は大丈夫です。今は猫の手も借りたい状況なので。麗泉ちゃんは?」

「ま、まぁ、私も表立っての反対はないですけど‥‥。」

 冠木姉妹は二言返事。

(好都合。ナンバーズから侑磨君の処遇を言い渡されていたし。)

(生徒会に所属させれば侑磨を上手く匿えるわ。)

 眼を見合わせ、力強く頷く。

「じゃあ決まりね。煩いわねユーマ。とにかく週明けから正式に入会させるように手配するわ。ユーマ()の説得も兼ねてね。話は以上よ。」

「分かりました。それでは失礼しました。」

 そそくさと退出する冠木姉妹。

「さあユーマ、お話よ。この決定に不満を抱いているようだし。」

「不満だらけだ!何勝手に決めている。俺はヤダだからな。」

「ええ存分に話し合いましょう。徹底的にね。」

「上等だ!」

 激しい口喧嘩は廊下にも響き渡るが、冠木姉妹は部外者と成りすましてその場から立ち去った。

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