「開く」と「閉じる」
思考というものには、拡散的な思考と分析的な思考という大まかな分け方ができますね。総合的と分析的でもかまいませんが。
拡散的とは、でたらめに無関係そうなものでも繋げていく、芸術的な思考。夢のメチャクチャさのようにアイデアを探して、とにかく広げていくマインドマップ。
分析的とは、すでに対象は決まってあって、それに対して理性的・論理的に詰めていく思考。アイデアを発想するというよりそのアイデアに基づいて、形作っていく冷静なツリー。
小説で言えば、ストーリーを作るときに展開の先をどうしようかと考えていれば、拡散的に何か発想を探している。
その展開が決まれば、それを分析的に構築するための展開の辻褄を決めていく。
短編小説の場合、展開を早期に閉じる必要があるので、ストーリーの起承転結の起と結をこしらえるために、分析的な思考回路がぐるぐると回る。初めの発想はありますが。
長編小説の場合、展開は展開をもたらすという一連の流れを意識するので、次の展開のために拡散的な思考を、起承転結の承と転のために機能させる。
追加のキャラクターを入れる、背景を利用する、黒幕のさらに黒幕を作るーー、ライトノベルのヒロイン増殖や過去の謎のように、展開を広げるための楔をたくさん拵えておく。必然、お話は長くなる。
短編小説はあまりキャラを足したりしないし、過去話に飛ばしたり、裏の裏の話を付与しない。付与すると、ストーリーは開きを得て、閉じる時の美しさが減衰する。結婚や死で終わる大団円のような長編クライマックスを演じる必要はないが。
ということで、前談終了。
ストーリーの開かれ具合。
ストーリーが開かれるには、世界観や設定の裏側がストーリーの内部で息づいている必要性がある。現実恋愛ならば、ヒロインの過去や家族問題とか。
こういう後から解決されるだろう伏線的なものがストーリーを開きにかかる。
メインヒロインのライバルを出せば、それもストーリーを開いてくれる。開いたドアは分かりやすく、それは閉じることが必要になる、いずれ……。
開かれたドアは目立つ。
それをそのまま放置すれば、隔靴掻痒となる。
あえて、一度軽く開いてすぐにパッと閉じておくという手もある。その話はまた今度ということ。忘れた頃に再度開く。少しだけ扉を開くという表現でもいいのかもしれない。そこにドアがあると分からせるだけ。
ドアをいっぱい開きまくれば、文字数は指数関数に上がっていく。ストーリーは肥大化して閉じるべき100もの扉で右往左往し出すかもしれない。いくつかのドアは連結していて、勝手に同時に閉まる構成になってしまっているかもしれないし、今さらどうでもいい扉となっている可能性もある。
ドア作りーー発想、問題。
ドア閉めーー分析。筋道作り。整頓。
単純なストーリーで良ければ、ドアを一つ、そのドアを閉める、以上で話は起承転結で終了する。
ドアという発想をしてしまうと、ドアの先には部屋があって、さらに奥にはドアがーーという形で、「開く/閉じる」論をしたくなるけど、とりあえず、ドアはただのドアとしておこう。先はない。開けば、闇に光が刺すように存在が見えるというだけのこと。そして閉じて終了。
あえていうならば、閉じ方が、部屋の内部を探り、そして調べ終えるという操作となる。開けたドアをどうやって閉じるのか。
閉じるために別のドアを作る必要も出てくる。単一では閉じれないドア。お助けキャラや主人公の友人を追加して、それを利用してドアを閉じる。このキャラの扉は放置しておいてもいい扉かもしれない。メインストーリではない扉を放置してしまう。まぁ、サブキャラにも物語はあるのだろうが、さして放置しても問題はない、と。
ストーリー展開を開く。
ストーリー展開を閉じる。
ラノベだと、「新ヒロイン登場→一悶着→メイン展開→ヒロインが主人公に好意を抱く」
ストーリーを外に開くために、メインのドアである新ヒロインを入れる。
そうすれば、他のドアをいくつか形成する必要が出てくる。新ヒロインに関連するドア群を。
それからメインとなる今までに形成されてきたドア群と新しくできたドア群との関わりの下、メインのストーリー展開が進められる。
そして、メインストーリーの展開の中で、今までに溜めたドアを閉じていく。
新ヒロインと主人公の関係となるメインのドアは閉じられる。
開く/閉じるという用語を用いてみたのは、結局、何を自分が展開上差し込んだのかをイメージしやすくするためぐらいのもの。
アイデアカードをプロットカードと結びつけるように。
開いたら閉じないと。
このアイデアは閉じるのにどれくらいの大変だろうか、簡単だろうか。
いっぱいのドアをエピソードをパンパンと閉じていくか、一つの大扉、大きな起承転結をじっくり閉じていくか。
ドアはいつ閉じるのか。いつ閉じた方がいいのか。
ドアというチープなイメージに、開く/閉じるというシンプルな操作。
短編小説のドアは少なく、長編のドアは多い。
さらに長編には大小いろいろなドアが散りばめられることになる。そして最後まで開けっぱなしのドアもいくつか残るだろう。
短編は基本、すべてのドアを閉め終えて、続きが気になる、とはならず、宙吊りのサスペンスのない終結を迎える。
展開に困る。ドアの閉じ方が思いつかない。
それには分析的に、ドアの閉じ方を必死に考えるということもできるし、総合的に、新しいドアを作り、それを使って閉じるということもある。
ありものだけで解決する展開もあれば、新しいものを足さないと解決できない展開もある。「好意」の気づきを与えるために、女性の親しいキャラを入れたり、異世界恋愛ならば従者やメイドを入れたり。お嬢様にはメイドや付き人がいないと、彼女の行動範囲と違うキャラクターの利便性。学生だと後輩キャラや先輩キャラ、他校の生徒は行動範囲の相違により新しい情報を運んでくれる便利な存在。クラスの事情に詳しい男友達も生徒会メンバーとかも。
ドアの新規性。
今までのドアと種類の違う系統のドアが、閉じづらいドアを閉めやすくする。ドアを作りそして開くとき、他のドアを閉じやすくするかを考える。
閉じることを考えないドアは厄介なことになる。閉じようのない大きなドアを開いてしまうと。
小さな小さなドアを利用して、今まで開いてきたドアを閉じるのも美しいものだ。