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 ワイバーンを狩り、街へと戻ったシルバ騎士隊とドール達。その後、着替えを終え、城内部の騎士達の宿舎へと集合した。


「それではこちらを」


 シルバ騎士隊全員が注目している中、銀で作られた、手のひらに収まるほどの大きさの紋章を鎧とドールに手渡した。そこには剣と盾の模様が彫られていた。


「本来であれば、皇帝陛下への忠誠を誓うと共に賜るものなのですが、おふたりは少々特殊なのでこのような形で渡すことになりました」


「お~」


 ドールは目を輝かせて、渡されたそれを意味も無くひっくり返し、眺めた。シルバの言葉は右耳から左へと通り抜けていった。形式など気にしないドールにとってはどうでもいい話だった。


「それがシルバ騎士隊員である証です。門兵に見せれば街へも自由に出入り出来ます」


 念願の身分証明のすべを手に入れた鎧とドール。やや浮かれ気味な様子が見て取れる。鎧と共に持っている証を見合わせている姿は、おそろいのものを喜んでいる子どものようだった。


「これでふたりはお客様から私の部下ということになります。訓練への参加は約束通り免除しますが、それ以外ではシルバ騎士隊員であるという誇りと自覚を忘れずに行動を心がけてください」


 ドール達は相変わらず顔を見合わせていた。その様子に向かってシルバがひと言。


「返事は!」


 唐突な大声にドールと鎧は背筋を伸ばし、シルバの方へと向き直った。


「は、ハイッ! タイチョー!」


 思わず返事をしてしまうドール。シルバは表情を瞬時にゆるめて、


「よろしい」


 とだけ言った。


 証の受け渡しが終わり、堅苦しい話を長々と続けるつもりのないシルバは手を叩き、注目を集めた。そして、


「さぁ、新たな仲間を迎えたシルバ騎士隊を祝って」


 皆がその手には当然のようにマコットラガーの注がれたジョッキを持っている。騎士のバカ騒ぎの一杯目はこれと決まっている。堅苦しい騎士達の頭も浮かれさせるイチゲキだ。


 シルバ騎士隊全員は街に出て、酒場に集まっていた。食堂でも料理に文句の付けようはないが、やはり祝い事は店でするのだ。木造建築に、内装も木造で統一されている。店内は明るく、清潔で上質だ。


 店員のいるカウンターの背後には数え切れないほどの酒瓶が並んでいる。その傍の床には巨大な酒樽が置かれている。


 そんな中全員の注目を集めているシルバは手に持っているジョッキを高く突き上げて、声を響かせた。


「乾杯!」


 シルバの声と共に全員がジョッキを高く掲げ、手に持っているそれを勢いよく流し込む。


「この場は全て私持ちだ。皆、大いに飲んで食べてくれ」


「おー! タイチョー太っ腹ー!」


 運ばれてくる料理に豪快にかぶりつき、酒を飲み干し、少しずつ夜が深くなっていく。見事に酔いも回っていく。


 ドールが鎧に向かって、てきとうなことを話しかけながら酒を飲んでいると、どこからか発せられた大笑いする声が店中に広がった。


 そちらに目を向けるドール達。すると渦中のひとりが何やら騒いでいた。


「一発芸、腹踊りやりまぁすっ!!!」


 などとのたまって服を脱ぎだした。周りの面々は笑いながら、手を叩きはやし立てている。


 ひとりを除いて。


「おい、お前酔いすぎた。節度を持ってだな……」


 副隊長ゴルダだ。ゴルダは腹踊りをしようとしている、酔っ払っている仲間を制しようとする。だが多勢に無勢、ゴルダの声は騒ぎ立てる周りの声にかき消された。


「……ですからね、副隊長聞いてますか? 隊長ほど素晴らしい人間はこの世にはいないんですよ」


「わかった、わかったから。お前はもう飲むな。すみません、水ください!」


 さらに初めの一杯を飲み終えてから、延々と何故か涙ながらにシルバを褒め続けるロンへの相づちを欠かさない。


 そうこうしているうちに、机を打楽器の代わりに音楽を奏でる隊員が現れ、それに合わせて足踏みを鳴らして、果てには歌い出す者まで現れた。


 もはや収拾はつかないところまで来ていた。


「すみません、すみません。後でよく言い聞かせますんで……」


 店員に頭を下げるゴルダ。髭を生やしたこの店の主は口を大きく開けて笑って答えた。


「いつも気にしすぎだゴルダ。俺たちの騎士様が楽しんでくれてるんだこっちだって嬉しいさ」


 その様子を離れたところで見ていたドール。あまりの騒ぎっぷりに若干引いた。


「う~わすっご、ってか騎士の誇り的にいーわけ?」


 誰に言うわけでもなく呟いたあと、この騎士のまとめ役は何をしているんだと視線を移すと、


「アーハッハッハ! じゃあ()は手品を披露しちゃおうかな!」


「いいぞー! 隊長!」


「うぅ、笑いながら手品をする隊長も素敵です……」


 大笑いしながらはっちゃけていた。


「タイチョーもソッチ側なの!?」


 そうして、驚きながらシルバの稚拙なしょうもない手品を眺める。そんなものでも酔っぱらい達は楽しそうに笑い、野太い歓声を上げる。机を叩く音も足音も歌声もさらに熱を帯びる。


 すると、鎧が不意に立ち上がり、ドールの傍を離れ、騒がしい中に入っていき、踊りだした。


「ダーリンまで!?」


 ドールは困惑した。唐突な行動だ。唐突な行動だが、もはや周りの人間は知能を持っていないのでそんな姿を見て「いいぞいいぞ」と騒ぎたてる。シルバも相変わらず大声で笑いながら踊る姿を見ている。


 鎧は当然何も口にしないので酔っているわけがないのだが楽しそうに音に合わせて回り、踊る。


「じゃあアタシも!」


 そんな様子を見ていてもたってもいられなくなり、ドールは立ち上がると鎧と共に踊り出した。何を表現しているわけでもない、楽しいままに体を動かすだけのバカ踊りだ。


「いいぞ新人! もっと踊れ!」


「いやほんとすみません……」


「いいっていいって」


「アーハッハッハ! ゴルダさっきから謝ってばっかりだぞ! 酔ってるのか!」


「うるせぇぞシルバ!」


 その騒ぎは夜が深く沈むまで行われた。




 某所にて。そこにはふたつの影がある。


「ついに見つけました」


「ええ」


「気まぐれな妖精界の住民が随分と人間に干渉していますね」


「そうね、あまりに過度だと私たち天使が取り締まらないといけないわ」


「怪物の大量虐殺。やり過ぎです」


「ええ、それを問題だと言うのなら人間達が解決するべきもののはずね」


「では……」


「妖精には妖精界に帰ってもらいましょう」


「かしこまりました」


「そうだ。ねえ、私、あれが聞きたいわ」


「あれとは」


「今回の件はどうなると思う? "予言者"の言葉を聞かせて」


「予言するまでもありませんよ」


「あらどうして?」


「説得し、抵抗され、そして……」


「そして?」


「人間界から追放する。それだけです」


「そう、そうね。あんなに人間に入れ込んでるからちょっと可哀想だけど」


「私はただ任務を遂行するだけです」


「そうね。"エルメタ"」


「はい。"アフィネル"様」


「天法七三四条において、人間界の異物を取り除きなさい」


「アフィネル様」


「どうしたの?」


「七三()条です」


「…………」


「…………」


「そうだっけ……?」


「はい」


「……」


「……」


「もう! せっかくカッコ良く決めてたのにっ!」


「そのようなところも可愛らしいかと」


「……さっさと行きなさい!」


「仰せのままに」

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