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「だ、か、ら! 通してって言ってんのッ!」


「身分の分からない者を通す訳にはいかない」


「ミブン? 何それ、見てわかんでしょ」


「分からんから通せんのだ」


 鎧と女は森を抜け広大に広がる街の門前まで来ていた。通過しようとした際に門兵に呼び止められた。ふたりの姿に怪しさを感じたからだ。特に鎧の方に。


「貴様は何者だ。その血はなんだ」


 門兵はその背の高い黒い鎧の頭部に人差し指を向けながら問い掛けた。鎧は微動だにせず、直立の姿勢を保っていた。


「おい、聞いているのか! なんとか言ったらどうなんだ」


 鎧は門兵を見つめたまま固まっている。わずかな沈黙がその場に流れたが女が口を挟んだ。


「ってかダーリン喋れんし」


「はぁ? じゃあお前でいい。この鎧は何者だ」


「ん? アタシのダーリン」


 時間が止まる。問いかけられた女は何を当然なことをとでも言いたげな表情をしている。


「……お前は」


「ダーリンのオンナ。これでいいっしょ? どいてくれる?」


「ふざけるな! 何ひとつ分からんわ! まず名を名乗れ」


「最初からそう聞けっての。アタシは"ドール"」


「年齢は」


「はぁ? レディのトシ聞いてくんの? あれじゃん、でり、()()()()()が足りなくない?」


「…………いいから答えろ」


「マジ? それ言わんといけないわけ?」


「ああ、早く言え」


「……なくても良くない?」


「規則だ。言え」


 門兵の問いかけにドールと名乗った女は表情を歪める。喉が張り付いたように言葉を詰まらせて、先ほどまでの強気な語気とは打って変わって、ボソリと消え入るような声で呟いた。


「……ゅうご」


「なんだって?」


「二十五だって言ってんのっ!」


「二十五ぉ!?」


 聞き直されて半ばヤケのような叫び声の内容に、門兵は驚愕した。


「なんだし、モンクあるわけ?」


 ドールは恥辱と怒りの混じった赤ら顔で門兵を睨んだ。


「随分とバカみたいな振る舞いと喋り方をしてるから、子供(ガキ)だと思っていたが、いい大人じゃないか」


「うっせぇ、ウザすぎ」


「職業は? 何しにここへ来た」


「ショクギョウ? えぇっと仕事? は、特に。タビビトとか? ここに来たのは、たまたま近くにあったから」


「旅人だと? つまり本当に身分を証明できる物が無いのだな?」


「さぁ、そうなんじゃね?」


「怪しい奴らめ。やはりここを通すわけにはいかないな」


「はぁ!? なんなんイミワカラン! トシまで言わせたクセに!」


 ドールは肩を怒らせて目をつり上げ大声で抗議した。門兵は頑として退かず、道を塞いだままふたりを警戒したまま睨みつけた。鎧はというと傍で怒り散らかしているドールをなだめようとしていた。が、ドールの視界には入っておらず意味はなかった。


 するとそこへ、複数の馬の群れが森の方から歩いて近付いてきた。


「何事だ」


 先頭の馬にまたがった、銀色の甲冑を身に纏った男が尋ねた。男の声はまだ若々しかったが、威厳をもった力強いものだった。門兵はすぐさま敬礼の体勢を取り、体を硬直させた。


「ご苦労様です! シルバ騎士隊の皆様方!」


 ドールと鎧はそちらに向き直る。両手の指で数えられる程度の馬が甲冑を着込んだ人間を乗せて、隊列を組んでいる。そして、最後尾の馬の後ろには灰色の獣の死体が縄で縛り付けられていた。


 その姿を見た門兵は目を見開き、伸びている背筋を更に伸ばした。


「やや、流石シルバ騎士隊長ですな。近頃この街を脅かしていた元凶をいとも簡単に仕留めてしまうとは」


 シルバと呼ばれた男は首を横に振り、バツが悪そうに言った。


「いいや、我々が見つけた時には既にこの姿だった。何者かがこの獣の首を両断したらしい」


「そんな、それほど実力者など───」


「それやったん、アタシら」


 門兵とシルバの会話に割り込んだのはドールだ。シルバは門兵から声のした方へと首の向きを変えた。


「この者達は?」


「怪しい旅人です。まったく身分を明かそうともせず街に入ろうとしてきたので、追い払おうとしておりました」


 門兵の回答にシルバよりも先にドールが反応する。


「はぁ? おっさんちょっとダマレって! アタシらはそこのチョーアブナイワンちゃんをやっつけたチョーホンニンなんだけど? お礼のひとつでもないわけ?」


「なんだと?」


 門兵に相変わらず突っかかるドール。シルバはふたりのやりとりを意に介さず、ドールと鎧の姿をジッと見つめたのち、呟いた。


「なるほど、どうやらそのようだな」


 その声に気づいた門兵は困惑した声で問い掛けた。


「本気ですか? この鎧に付いてる血だってその獣の血とは限りませんよ。もしかしたらその辺で人を襲ったのかも……」


「そんなことするわけねぇから!」


 シルバは鎧を真っ直ぐに見つめて続けた。


「血は関係ないさ。ただこの鎧の者からは強者の風格を感じる」


「はぁ」


「この街に入りたいそうだね。私が許可しよう」


「マジ? アリガトおにーさん!」


「ああ、ただししばらくは私たちと共に行動してもらうことになる。それでも構わないだろうか」


「入れるなら別にいいよねダーリン? それとご飯は? あと体もキレーにしたいんだけど」


「ああ、用意するとも。これは感謝の意味を込めた招待でもあるからね」


「やった!」


「そういうわけだ。門を開けてくれ」


「は、はい! 開門!」


 大きな門が重々しく開く。ドールと鎧はシルバ騎士隊の横に並び歩き、街の中へと入っていった。

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