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魔法の言葉 ~灰かぶり令嬢の恋は、焼き立てスコーンとイチゴジャムから~  作者: 壱邑なお


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18/22

やりたい放題の報い

「国境を越えてマルト王国に入った所で、馬車が『がけ崩れ』に巻き込まれたんだ」

 2年前の出来事をゆっくりと語り始めた、ロージーの父、フローレス男爵。


「わたしは馬車から放り出され、川に落ちて岸に流れ付いた所を、助けてもらったらしい。

 身体のケガは大したこと無かったが、頭を打ったせいで記憶を失って」

 それでも薬品や薬草の知識が、豊富な事が分かり。

 運び込まれたこの病院で、助手として働くことに。


「そしてつい先ほど。運び込まれたロージーの顔を見た途端、記憶が戻ったんだよ!」

 腕の中の愛娘を、嬉しそうに見つめる男爵。

「夢みたいよ、お父様!

 あらっ……だったらどうして、亡くなったって知らせが?」

 ロージーの問いかけに


「当時の担当者に聞いてみたら――他に何人も亡くなった人がいて、現場がかなり混乱してたらしい。

 身元不明の遺体の傍に、たまたま『フローレス男爵家の印章指輪』が落ちていて、それで」

「年恰好の似たその遺体を、男爵だと勘違いしてしまった訳だな?」

 エルムが説明して、アッシュが付け足す。



「『もう現地で、埋葬は済ませたから』って……届いた遺品は、その指輪だけだったわ」

 当時を思い出して、ぽろぽろと涙をこぼす愛娘を

「辛い思いをさせたね――本当にごめんよ、ロージー!」 

 父親がまた、しっかりと抱きしめた。

「印章はいつも、懐中時計に付けていたはずだが。事故の衝撃で落ちたんだろう」


「お父様のせいじゃないわ……! 確かに辛い二年間だったけど……あらっ?」

 はたと顔をあげて、

「それじゃ――あの『お義母様とお義姉様達』は、一体誰なの!?」

 男爵令嬢は叫んだ。



 愛娘と元執事が、『グエンダ・フローレス男爵夫人(自称)とその娘たち』の悪行を、口々に語ると


「そんな女性とは会った事もない! わたしと結婚したなど――何故、そんなでたらめを!?」

「2年間も俺のロージーを、そんな酷い目に……!? 今すぐ、ひっ捕らえる!」

 男爵と警備隊長が、揃っていきり立ち、


「うーわっ……それだけ、やりたい放題やった(むく)いは――たっぷりと、(つぐな)わせないとだね?」

 エルムも、悪魔が裸足で逃げ出すような、冷たい笑顔を見せた。



 数日後、エルム・コリンズ中尉の元に

『自称グエンダ・フローレス男爵夫人は、事故当時、遺品の回収を手伝っていた安宿の女将(おかみ)

 馬車に残された、男爵の手荷物を盗み。

 その中にあった旅券等から結婚書類を偽造、男爵夫人になりすました模様。


 なお令嬢と使用人達が逃げた同日から、娘2人と共に行方不明』

 と報告が入った。


「どうやら逃げたレディ・ローズマリーの代わりに、フランク王国に拉致(らち)された様です」

 すっと暗がりに潜み、顔を隠したまま報告を続ける、コリンズ侯爵家の密偵。

「ふーん……自業自得だね?」

 つまらなそうにエルムは、報告書を放り投げた。



「その後、ヴァルド伯爵の元から何とか逃げ出し。

 フランク王国の中でも最下層、治安の悪い一帯に(ひそ)んでいる――という情報も。

 いかがいたしましょう……エルム様?」

 密偵の問いかけに


「捨ておけっ――!」

 ただ一言、冷たい声で、エルムは吐き捨てた。

「わたしの可愛い『従姉妹』を、粗末に扱った(むく)い……残りの一生かけて、償うがいい!」



 その翌日の午後、体調も回復したロージーの病室に、ノックの音が響いた。

「お姫様、ご機嫌はいかがですか?」

 密偵との会話の名残を全く見せず、明るい笑顔のエルムが顔をのぞかせる。


「まぁ、エルム様! もうすっかり元気です!」

「それは良かった! 実は君に、会いたがってる人が……案内してもいいかな?」


「『会いたがっている人』?」

 少し首を傾げてから、

「えぇ、どうぞ!」

 にっこり、ロージーは(うなず)いた。


 元執事の連絡を受けて、ディビーとナイトを連れて飛んで来た、ルイーズとメイジーが、『旦那様』との再会に嬉し泣きした後で。

 キレイに髪を整え、レースで飾られた新しい夜着とガウンを、着せ付けてくれたばかり。

「お客様が来る事、知ってたの?」

 ベッドの脇で微笑む元家政婦に、小声で(たず)ねたとき。


「失礼……」

 ゆっくりと杖を突きながら、一人の初老の男性が入って来た。

 白髪交じりの銀髪をぴっちりと撫でつけ、最高級の黒いスーツを身にまとい、鋭い右目には片眼鏡(モノクル)


 威厳のあるその姿に、はっとロージーがベッドから降りようとすると、

「そのまま……! そなたが、エリノアの娘――ローズマリーか? 」

 手振りで留められて、問いかけられる。


「はい、ローズマリー・フローレスにございます。母をご存じで、いらっしゃいますか?」

 驚いて、伏せていた目を上げると、

「おぉ、その瞳……エリィに生き写しじゃ!」

 片手で顔を覆い、涙ぐむ男性。

「おじい様……」

 その肩を優しく、エルムが支えていた。



「ロージー、この方は私の祖父。

 マルト王国のコリンズ侯爵だよ」

「侯爵様!?」

「そう、そして――君の『おじい様』でもある」

「えっ……?」

 目を見開いたロージーに、エルムが続けて


「きみのお母様は、おじい様の娘で、わたしの父の妹……つまり、私たちは『従兄弟同士』なんだよ!」

 特大の、びっくり爆弾を落とした。


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