ex-1 厄災の目覚め
星泥に揺蕩う少女、その名はステラ・ヴィヴィ。
赤子のように膝を抱えて、覚醒の時を待っている。
主が眠りにつく中、星泥は進む。
チキュウから遠く離れた銀河の海を、宇宙の果てを越えた『虚無』の世界を。
幾星霜を経て、小さな光に辿り着く。
暗闇の中、煌々と。
ステラの白いまつ毛が浮く。
目をこすって、あくびを一つ。
まなじりに涙をためて、ようやく目を覚ました。
(んっ……眠い…………)
クネクネと身じろいで、怠けた身体をほぐす。金色の瞳は眠そうな猫のよう。
夢うつつのステラ、そんなぼやけた視界に暁星が一つ二つ。
───メラメラと燃えるように、星泥に浮かぶ星々が輝き出したのだ。360度のきらきら星に囲まれて、うっとりと唇が緩む。
星泥が暖かくて、心までポカポカしてきた。
「…………うん、そろそろ行こっかな」
ニコッと笑って準備万端、ステラは人魚のように泳ぎ始めた。星泥の中をスイスイと。
長い白髪を後ろに靡かせながら、目指すのは外の世界。
(どんな世界が、待ってるんだろう?)
『イセカイ』に思いを馳せるステラ。イセカイは彼女が住んでいたチキュウとは、全く異なる世界だと言う。
なんでも色々な動物がたくさん住んでて、おっきな水槽みたいな『海』があり、夜に終わりがあって『太陽』が昇る『朝』がある!…らしいのだ。
(そんな世界、あるのかなぁ。テラーの話、嘘じゃないといいな)
『海』も、『太陽』も、かわいい動物も、おとぎ話のようなでっかいお城も見てみたい。
それで、美味しい空気とやらを吸って、透き通った水を飲みたい。
(へへっ、ワクワクが止まらないね!)
ステラはパッと目を開き、星泥を思いっきり掻きわけながら泳ぐ。目指すのは当然、豊かな外の世界だ。
自らの使命を果たせたのなら、イセカイをのんびり幸せに生きたいと、少女は願う。
ギラギラと、星泥が光った。