一日目?(2)
鏡の方がむしろ鮮明であって、私の顔はというと、これはどうも朧げである。いいや、というのも誤りで、それが鮮明過ぎるのであって、私は普段通りの顔をしている。いや、どうもおかしいではないか。全く私は己が顔を直接に見ているとしか思えなかったのである。鏡はというと、これもまた鏡としてしか見ていなかった。それは私を映すものとしてではなく、ただの銀の膜として私の眼前に飛び込んで来たのである。
そのような混乱は珍しくはあれど、長い夢の副作用として、当然に許容すべきであるのだと、きっと、夢を放って一人目を覚ましたことへの罪悪感がそうさせているのだと、私は納得することにした。すると確かに、殊のほか朝の諸動作は事なくて、結局拍子抜けである程に全く普通に済んだのであった。
途端切なくなって座り込んだ。このようなことはきっと初めてなのだろう。ああ全く分からない。私は確かに死んだのである。目覚めの情報の多さに、すっかりと捨て去ろうとしていたそれを拾い留めた。今朝の夢を思い起こすことへの恥ずかしさや、抵抗などは最早全く無い。最早そんなことでは全くないようだ。