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009 守りたいもの

 攻防一体の攻撃技、踊るように攻撃を避けつつ、ロングソードの腹で的確に男達の急所にダメージを与える。

 もはやこの舞を止めることなどできない。

 1人、2人、3人……。相手の攻撃を避けて、そのまま相手を気絶させていく。


「な、なんだ! いったい何がどうなって」


 残るは大男の1人のみとなった。


「あんたの敗因は……。俺の娘に手を出したことだ」


 大男の顔面に刃のないなまくらロングソードで一撃を与えて倒すことに成功した。


「2人とも本当に大丈夫だな」


 ポーラとペリルを下ろして、もう一度両手でしっかりと抱きしめる。


「うん! うん!」

「パパぁ……ありがとう!」


「ぐっ……くそ」


 やはり大男だけは体力が高いな。

 気を失わせることができなかったようだ。

 子供達に背を向けて、大男に近づく。


「て、てめぇ……覚えておけよ! 絶対に復讐して」


「だったら」


 俺は大男に顔を近づけた。


『魅了』『政治』スキル、【威圧(プレッシャー)】【恐喝(ブラックメイル)】発動。


「次に俺の前に現れたら只で済むと思うなよ。絶望させてやる」


「あががががが……」


 大男は泡を吹いて気絶してしまった。

 やはりスキルの効果は絶大だな。これで大男の心を折ることができた。


 ってか政治に【恐喝】ってどういうことなんだろう。

 俺の息子……帝国の政治家になったと言っていたが何を覚えているんだ。


 気絶している大男を見据える。

 娘を奪った罪は万死に値するが……彼らも被害者とも言える。


 すべてはエリオス・ガルバス。七英雄の1人……あの男が元凶だ。


 七英雄達に追放されたあの日、エリオスに蹴られ、背中を踏まれた記憶を思い出す。

 あいつらだけは絶対に許さない。

 俺の記憶を奪い……追放し、マリヴェラの全てを奪ったあいつらは……。


「パパ?」


 ポーラを抱く手が少し強くなってしまったようだ。

 怒りを押さえないと……。一国を相手取るなど不可能に近い。怒りの矛先を沈めないと……。


 まずは早く2人の元気な姿をマリヴェラに見せないとな。



 ◇◇◇



 孤児院に戻ってきた時、門の前にマリヴェラと子供達みんなが待っていた。

 ポーラとペリルに声をかけて、元気な姿を見せるように言う。

 2人は飛び出していってマリヴェラに抱きついた。


「ママーーッ!」

「ああ……ポーラ、ペリル。本当に良かった!」


 マリヴェラは精一杯2人を抱きしめる。

 涙を流して、ずっと離さないかのように抱きしめた。


 やっぱりこういう時、ママの存在が一番だな。

 マリヴェラの愛情は本当に尊い。卒院したあの子達もマリヴェラのことは大好きだからな。

 理想的な母親に育ってるよ……本当。


 ポーラとペリルを離して、マリヴェラは俺の元へと来た。


「もう……あなたも心配させて!」

「すまなかった。だがポーラとペリルも助けられたし、結果オーライじゃないか」

「でももしものことがあったら」

「その時は俺が命をかけてでも2人を守ったよ。死んでも守ってみせるさ」


「バカ!!」


 俺が和ませるために言った言葉にマリヴェラが深く憤慨した。


「私はロードも心配したの! 命かけるとか死んでもなんて言わないでよ!!」

「……っ」

「家族をみんな失った私はもうあなたと子供達しかいないの……。あなたまでいなくなったら私もう耐えられない」


 マリヴェラは俺の胸をドンドン叩き始める。


「俺を恨んでいたんじゃなかった……のか」


「子供の時はね……。でもあれから20年も経ったのよ……? 寂しい時は一緒に側にいてくれた。雷の日は手を握ってくれた。あなたがいない生活なんて考えられないの! バカァ!」


 ああ、そうだ。

 さっきの戦いでも魔眼スキルを使えたじゃないか。思った以上にマリヴェラは俺に情を抱いてくれていたようだ。

 本当はもう……許されているんじゃないかと思っていた。でも……聞くのが怖かった。大事な家族に許さない、死んでしまえばいいと思われ続けるのは恐ろしかったんだ。

 30にもなったのに恥ずかしいな。

 俺もマリヴェラに家族の情を抱いていたんだ。

 マリヴェラと同じように俺の家族ももうマリヴェラと子供しかいないんだ。


 俺の胸でわんわんと泣く、マリヴェラを慰める。

 本当に俺はバカな男だったようだ……。


 魔の国を滅ぼした罪は消えないけど……マリヴェラと子供達と一緒に幸せになるくらいは望んでもいいのかもしれない。

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