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008 七英雄との繋がり

 大男の顔が卑しい顔つきになる。こちらが不利であることを見破られてしまった。


「避けるなよ。避けたらガキどもがどうなるか……な!」


 大男は床に落ちている棍棒を拾い、俺の体に全力でぶつけてきた。

 衝撃が全身に伝わる。


「ん?」


 俺が立ちすくんだままなのを大男が不思議そうな顔で見ていたが、俺は頭をフル回転させた。

 一番頭の回転が早いの息子のスキルを使用し、最も理想的な手順で事が進むように考える。


「俺を殺す前に教えてくれ」


「あ?」


「あんた達は何者なんだ。……なぜこんな田舎の街にやってきたんだ」


「ふん、俺達はよぉ……。エリオス王に追い出されたんだよ!」


 その名は!?


 過去のフラッシュバックが脳内に映り込む。

 七英雄の1人、エリオス・カルバス

 勇者パーティの【支援職(サポーター)】の役目を持っていたエリオスは魔王討伐後、アテナス王国が攻め落とした小国の王を引き継いでいた。

 それがカルバス王国だ。


「何をしたんだ? 何がそんなに悲しい」


「何もしてねぇ! 年頃の娘をあの王に取られて刃向かったらこのザマだ! ここにいる奴はみんなそうだ」


 エリオスの執政は素人が見てもお粗末だった。

 わずか20年で国としての規模は縮小し、崩壊寸前の状況なのに王は未だ権力を振りかざしやりたい放題していると言われている。

 七英雄としての実績と英雄王アレリウスの加護で大いばりといった所だ。

 年頃の若い女性はエリオスに召し使わなければならない。


 カルバス王国は今いるガトラン帝国の隣国にあり、最近亡命者が後を絶たないと問題になっていた。


「みんな大切なものを奪われた! 心の傷を癒やすにはより弱えぇやつから奪うしかねぇんだよ!」


「だからといって他国にやってきて略奪をするなんて」


「娘を返して欲しければ他国から女を持ってこいと言われたぁ! 孤児院のガキなら誰も悲しまないだろ!」


「ふざけるな! あんたの境遇には同情するがそれは理由にはならない!」


 この口ぶり、他でも人さらいをしているということなのか。

 みなしごだけを狙っているのは慈悲のつもりか、ふざけている。


「服はボロッちいが見た目は悪くねぇ。この世は弱肉強食! 帝国なんて生ぬるい国でぬくぬくと暮らしてたやつらに俺らの気持ちはわからねぇんだよ!」


 大男はゆっくりと近づいてくる。


「避けるなよ……避けたらガキがどうなるか、悲鳴は聞きたくねぇだろ?」


「ちっ」


 ポーラとペリルの前には男が4人。目の前の大男と後ろに2人、計7人。

 目の前の大男は大斧を従えて力を込め始めた。


 避けることはできない。100叩きなどより娘達の傷つけられた悲鳴の方が応える。

 ここは耐えるしかない。


 大斧が今、最高点に到達して、そのまま一気に振り下ろされた。


「死にやがれええええええっっっ!」


 俺の肩筋にキツイ一撃が加えられる。


 その衝撃は充分に伝わって。


 斧の刃先が砕けてしまい、……柄がバキリと折れることになった。


「な、なんだと!?」


 大男はその光景に思わず声をあげた。

 まぁそうだろう。自慢の大斧が俺の肩に刺さらず、柄が折れてしまったのだから。


 吹き飛んだ刃先は俺の側面に突き刺さる。


「随分肩が凝ってるだろ? 子育ては大変なんだぜ」


 タネは極めて簡単だ。

 この戦闘が始まってすぐに防御系スキルを発動してやった。


 基本的にスキルというのは1度に1つしか発動できない。使用後待機時間(クールタイム)が始まるまでは別のスキルを発動することはできない

 ただしレアスキルに位置する【スキル同時発動】のスキルを習得していると複数のスキルを同時に発動することができる。


 2つや3つ同時発動のスキル習得はかなり難しく、戦闘メインの娘達も3つ同時が関の山だ。

 しかし1人だけ4つ同時にスキルを発動できる娘がいる。そのおかげで俺は恩返しによる複製で4つまでスキルを同時に発動することができるのだ。


 体を硬化させ防御力に強い補正をかける【鉄壁(アイアンアーマー)】や物理ダメージを一定量軽減する【物理防御(プロテクト)】を発動。

 防御力にも補正がかかる。おまけにしれっと物理ダメージを軽減する魔法【バリア】を使用していた。

 魔法による補助効果はスキルとは別枠となるので共存することができる。

 これら2つのスキルと魔法の効果で、スキル効果時間内は無敵の堅さへと変貌する。


 この前試しにオークの巣にいってボッコボコにされてみたけど傷一つ負わなかった。

 防御を極めた時の楽しさを理解する。


 さて……弱いフリをして動機を聞き出すことはできた。

 こいつらの境遇には同情する。


「でも……俺の娘達に手を出したことは絶対に許されない」

「は?」


 大きく息を吸った。

 俺は4つスキルを同時に発動することができる。あと2つスキルの発動の余力を残していた。

『魅了』カテゴリーのスキル【注目(アテンション)】を発動する


「こっちを見ろおおおおおっっ!」


 腹から声を出し、7人の男達全員の視線を俺に集めた。

 プロのアーティストとして活躍する娘のスキルを恩返しで手に入れたんんだ。

 全員が俺と目が合う。


 これで大丈夫。だけど次にやることに対して不安があった。


 本当は俺を今でも恨んでいるのではないかと……だから怖くて聞けなかった。

 だけど……信じたい、20年近くを共に過ごした彼女の情を! マリヴェラの力を使う!


「【麻痺眼(パラライズアイ)】」


「ガアアアアアアアア!」


 たくさんの眼のスキルを持つ【魔眼】の力。ユニークスキルは恩返しで複製できないが、魔眼の中の一部のスキルは通常のスキルと同じのため複製することができる。

麻痺眼(パラライズアイ)】は眼が合った対象を麻痺にさせるスキルである。

 7人の男達は俺の瞳を見ていたため麻痺で体が動けなくなった。


 そう【恩返し】スキルは15歳以上で俺に対して情がある人のスキルを複製し習得するスキルである。

 マリヴェラが何かしら情を持ってくれているなら彼女の【魔眼】スキルが成長した時、一部のスキルを俺も習得することができるのだ。


 成功してよかった。


 俺は急いでポーラとペリルに近づく。


「パパぁ……」

「怖かった……です」


 泣いている娘達を抱きしめて、傷がないことを確認する。

 無事で本当によかった。

 片腕で2人の娘を抱えて、なまくらロングソードを抜いた。


「な、なにしやがった」


 麻痺がそろそろ解ける頃だ。

 逃げてもいいが、そうすればまたこいつらは子供達を奪う。

 ここで叩きのめさなければならない。


「ガキを抱えて戦えるわけねぇ! てめえらやっちまえ!」


 7人の男達が武器を構えて近づいてくる。

 こっちは2人の娘を抱えて動きづらい状態。


 だが……問題ない。


 子供達の恩返しで得た『武道』スキルと『魅了』スキル。

 1つ1つは子供達にかなわないかもしれない。

 だけど全部を習得している俺はスキルの数なら誰にも負けない。

 麻痺眼と注目の効果時間は終わっている。別のスキルを使用できる!


『武道』スキルの【剣聖(ソードマスター)】と『魅了』スキルの【舞】を組み合わせる。


「蝶のように舞い、蜂のように刺す」


剣の舞(ソード・ダンス)】を発動!

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