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043 娘からの夜這い ~メリシュ編~

「昨日、式典で会ったばっかだろ。そのまま一緒に帰らなかったのは気になったけど」

「そうだったわね」


 メリシュはクールに笑った。

 実はメリシュと久しぶりに再会したのは昨日の式典の時だった。

 姿を隠していたのに急に現れてびっくりだった。


 テトラのように子供っぽくなく、フィロのように丁寧でもない。

 メリシュは19歳組でもっとも大人びている。医者として各地をまわっているらしいし、必然的に大人っぽくなるのだろうか。

 十手、百手先のことを考えているからびっくりするんだけどな。


「率直に聞くけど、俺達がおかしな体質になっているのは君の仕業か?」

「そうよ。意外に気付かないものなのね。でもパパやママにとって悪いことではないでしょ」

「ってことはアレか。毎日服用しろって言われているあの錠剤か」

「ご名答」


 メリシュが卒院する頃から栄養剤だから毎日欠かさず飲むようにしてねって言われて、渡されている錠剤だ。

 メリシュは薬剤にも精通しており、孤児院で発生する病気は間違いなく2日以内で治る。

 教養 SSSランクの成長率から生まれる知識は際限なく、世界の難病の治療薬を卒院からわずか4年で開発しまくったと言われている。


「あの薬が……そんなことに」


 マリヴェラも困惑していた。


「アンチエイジングの薬って言ってたじゃない! ずっと若いままでいられるって私信じてたのに!」


 おいおい。


「ウソではないわよ。細胞の老化を防ぐ成分もあって、ママが20代前半の美貌を維持できてるのもそれのおかげよ」


「ならいいわ」


 単純……。まぁいい。


「体力増強とあとは魔力増強だな。魔法を撃ちつくしても尽きる気がしない」

「あ、そういえばそうかも」


「ええ、世界樹の根、ベヒモスの心臓、エリキシル剤、ユニコーンの角、アンブロシアの果実、たいりょくのたね、まりょくのたねを煎じて合成させた秘薬よ。飲ませた人の体力と魔力を無限に上昇させることができる」


「なんかエライ素材使ってんなぁ」


「少なくとも30年分のストックがあるけど、飲み忘れたらどうなるか分からないから絶対に飲み忘れのないようにね」

「わ、分かったわ!」


 飲まなかったら急速老化するかのような言葉ぶりだな。

 さすがにそれはないと思うが……飲み続けることにしよう。


「今日から私も魔王国に参加させてもらうわ。仕込みも終わったし、パパやママを支えたいと思ってる」

「そうか。頭のいいメリシュが側にいてくれるなら安心だよ」

「ほんと? ふふ、嬉しい」


 さて、今日もいい時間だ。夜にもなってしまったし、このままお開きという形となった。


「ねぇ、パパ。明日改めて健康診断をするわ」

「そうだな。体力には問題なかったけど見てもらうとするよ」


 廊下を歩いている所、メリシュも横についてくる。


「しかしあの薬、フィロやテトラも欲しがったじゃないか」

「うーん、でもあれは採取量が限られてるよ。パパとママを優先させたかったから諦めてもらったわ」


 自室のある院長室へ入る。


「しかし体力が有り余ってしかたないな。何回戦闘しても疲れないんだ。下手すればまる3日戦い続けられるかもしれん」

「ふふふ、パパには死んでもらっちゃ困るんだから」


 そのまま布団に入ることにした。


「んじゃおやすみ」

「おやすみなさいパパ」


 そしてメリシュもふとんに入ってきた。


「おい、待て」

「体力有り余ってるんでしょ。大丈夫、私が疲れさせてあげる」

「君らなんなの!? 登場したら俺のふとんに入ってくるって決めてんの!? って脱ぐな!」


 メリシュは服を脱いでいく。

 スタイルとしてはフィロと同等レベル。

 顔立ちは美しくなり、大人びた顔立ちは正直ぐっとくるものだ。


 しかし。


「フィロやテトラにも言っているが俺は子供には手を出さない! 絶対にだ!」

「ふふふ、でも手を出しちゃうんだな」


 っ! こいつ、俺の体に注射器を!


「体が痺れるお薬を入れてるわ。これでパパはもう」


 俺はメリシュの体を持ち上げてドンと床に下ろした。


「甘いな。薬物耐性(アンチドラッグ)のスキルを発動させてもらった。メリシュのやることなんてお見通しなんだよ」

「さすがパパね。でも……これならどう!?」


 メリシュが強硬手段で上に乗っかってきた。

 4本の注射器を構えて、俺に刺そうとしてくる。


「筋弛緩の注射ならスキル関係なく動けなくなるわ! そのままパパのムスコが巨大化する注射とムスコのムスコが5秒で飛び出してくる注射を連続で」

「強硬手段取ってくるところまでそっくりだな! ほんと君ら似たもの姉妹だよ!?」


「安心してパパ。パパの子供を私が産んであげるから……力を抜いて……ねっ」

「へぇ……随分とオイタが過ぎるわね。メリシュ」


 院長室のドアの方に顔を向けるといつものようにマリヴェラが腕を組んでいた。


「ふふ、ママが来ることなんて想定内よ。私は百手先まで見えている」

「そう……だったら」


 マリヴェラは大きく息を吸った。


「メリシュ、こっちを見なさい!!」

「は、はいっ!」

「【魔眼】スキル、麻痺眼(パラライズアイ)

「し、しまっ!」


 メリシュはマリヴェラの麻痺眼の直撃を受けて、ピクピクと体を震わせた状態で床に落ちてしまった。


「さすがねママ。百手先を読んでいたけど、心に染みこまれたママへの恐怖を上手く利用したわね」


「だめよ、メリシュ。パパにそんなことをしちゃ。これはきついお仕置きが必要ね」


「ふふ、パパ。私は諦めないわ。アルヴァンを覗く4人の中で絶対パパを先に落としてみせる。その時まで……」


 マリヴェラが手をワキワキさせて、麻痺で動けないメリシュの体をかけめぐった。


「うひゃひゃひゃひゃ、なにこれ!? ママ、やめ、やめぇ! 耐えられないって、きゃああああぁぁぁぁいやあああああああ」


 ああ、もううるさい。

 メリシュが笑い過ぎて泡を吹いて気絶するまで、マリヴェラによるお仕置きは長々と続くのであった。


 そして翌日、アルヴァンは孤児院へ来た頃へ時間は進む。

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