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021 決着の時②

「あがあああ……あぎゃ」


 力の限り、蹴り飛ばしたおかげでエリオスは鼻を折り、苦痛で顔を歪ませていた。


 エリオスの胸ぐらを掴む。


「おい、俺の奪った記憶のことを教えろ」

「……」

「言いたくないなら吐かせてやろうか!」


 俺は精霊剣『スピランシェ』をエリオスの傷口に差し込む。


「ぎゃあああああああああ!」


「あんたの知ること、全てを教えてもらう。【自白(コンフェッション)】」


 政治スキルの1つ、相手の隠されたことを話しやすくするスキルを発動する。

 相手の精神状況によって効果は変わってくるため、可能な限り痛めつけた方が良い話ができる。


「奪った記憶とはなんだ?」

「あ、アレリウスとローデリアが言ってたんだ! ロードの記憶を使って……ある儀式をしたって」


 儀式だと……?

 だめだ、まったく分からない。

 何も思い出せない。


「その儀式で七英雄は大きな力を得ることができたんだ……。俺の【愚者の門(カオスティックゲート)】はその力が元なんだ」


「俺の記憶を奪うこととその力は何の関係がある。そしてなぜ俺の故郷を襲った。答えろッ!」


「し、知らない。全部はアレリウスが……、俺は言われるがまま略奪しただけだし!」


 スキルを使って得たものがこれだけか……。


「本当に使えないやつだな! それだけしか知らないのか、威張ってるわり無能だなァ!」

「ひい……」


 くそっ、やはり全てを解明するにはアレリウスから話を聞くしかないということか……。


「ち、治療を……このままじゃ死んじま……っごふっ!」

「言っただろ。この国の兵士は七英雄に人生を歪められたって。おまえ七英雄だろ? 生きてちゃ駄目じゃないか」


 俺は剣の平でエリオスの顔面を強く殴りつけた。

 胸の奥でうごめく【怨返し】が表面化し続ける。

 俺の全てを奪った七英雄をこの手で滅ぼしたい。俺の心の中はそれで支配されていた。


 俺の目を見たエリオスは恐怖に怯えたのか無理やり体を動かした。


「お、おい、女! こいつおかしい! 俺を助けろ!」


 自白の効果が切れて、エリオスにまた勢いが出てきた。

 縋るようにマリヴェラに声をかけてくる。


「おかしいのはあなたでしょ」


 マリヴェラはゆっくりと近づく。

 赤い瞳は魔力を帯び、【魔眼】の力が表に出ていた。


「話は聞いていたわ。ロードの故郷に私の家族。……全て奪っておきながら何を甘えたことを言っているの? 私達がこの24年、どれだけ苦しんだか分かって言ってるの?」


「なぁ、エリオス。もう一度言ってやる。おまえは今日ここで死ぬんだよ」


 俺は精霊剣を手に取り、エリオスの背中を思いっきり踏みつける。

 首をはねるんだ。動いてちゃやりづらいしな。


「ぜ、全部アレリウスのせいなんだ! い、いやだ死にたくない! 俺が悪かったから……だからロードォォォォ!」


 英雄らしく潔くと思ったがやはりこの男にそんなことは無理のようだ。


「痛い、痛い、痛いいぃっぃ!」


 10才の頃、俺が痛いと言って泣き叫んでも一切止めなかったじゃないか。

 だから止めなくていいよなぁ。


「助けてぇぇぇぇ!」

「今更命乞いか? もう充分いい夢を見ただろう。あれから24年経ったんだ。もう謝るには遅いんだよ」


 剣を振りかぶる。


「あの世で俺の家族に詫びろっ!」


 喚くエリオスの首を真っ直ぐ斬り落とし、この戦いに終止符を打った。


「っ!?」


 その時、俺の頭の中が何かで埋められていく……。

 これは記憶の欠片……?

 まったく思い出せなかった記憶が少しずつ補填されていく。


 エリオスを倒したことで記憶が蘇っていった。



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