虐待されてる令嬢『怪盗さん……私を、連れて行って……』→五年後『ェカーカカカカッ!! 温い、温いのう!! この悪鬼令嬢を討ちとうばあと五千は限界を越えてみよ!! カーッカッカッカッカー!!』
「ェカーカカカカッ!! 弱い、弱いのう!! 聖剣の名が泣いておるわ!! カーカッカッカッカカカカカー!!」
狂笑を撒き散らして少女は疾走する。その速度は何人足りとて視認できない、否!! 人間畜生悪鬼天道修羅畜生、この世のいかなる生命とて彼女を認識できるはずも無かった。
「ぐああああああああああああああああああ!!」
「もう、もう止めて……おねえ、きゃああああっ!!」
嬲られる青年の傍にいる女の子がゴミクズみたいに吹き飛ぶ。
「ピーピーピーピー喧しいわ劣等共ッ!! テメエは雛か!? アホ面ぶら下げて糞虫食って糞ぶちまけるしか能がねーのかぁ!? ああん!?」
「くっ……つよい、」
「テメエらがよえーーんだよ有象無象畜生以下のモンキー共がッ! 魔王さまに刃向かうなんざ千年早いわ!!」
酷い、酷すぎる。ここまで一方的な暴力などそうあるまい。
「カカカカカカカカ!! 女神の加護もあと僅かでございますなぁ!!」
少女は笑う、死ね死ね死に晒せと狂笑を撒き散らす。
だが、何故この少女はここまで頭がおかしくなったのか……それは数年前に遡る――――
「こんの無能がァ!」
「ひっ……お、おかあ、さ」
「黙れェ! 黙れ黙れ黙れェ!!」
そこはとある貴族の屋敷である。しかし一般的な貴族の屋敷と違う点がある。
それはこの屋敷には現在、少女とその母(?)しかいなかったのだ。
「お前さえいなければ、彼はッ! 私に振り向いてくれたのにッ! この役立たずがッ! 産んでやった恩を仇で返しやがって!!」
血飛沫が飛ぶ。
血飛沫が飛ぶ。
血飛沫が飛ぶ。
女は少女へ鞭を叩き付ける。少女の肩は白いものが見えるほど抉れていた。
◆◇
「…………」
少女の自室。あの日から数日が経つが、傷は癒えない。
いいや、この傷は一生癒えない。もう動かないのだ。彼女の身体は。
「うっ……うっ……わたし、が……おかあさま、から……おとうさまを、取っちゃったのが……いけない、んだ……ゴホッ……ごめん、なざ、い……ごめん、なざぃ゛」
彼女は一人でそう呟く。母への謝罪の言葉を。けれどもそれは誤りだ。彼女に非など存在しない。
と、いうより彼女は被害者である。
――――■■されて、足が動かなくなってしまった少女なのだ。
普通、そんな少女に対して頬を叩く親などいないだろう。しかしそれは少女には分からなかったのだ。
そんな時だ。少女の目の前に水晶が転がった。ビー玉サイズの水晶は酷く濁っていた。
その水晶をみた少女は――――
「…………死」
意味もなく心に浮かぶ一字を告げる。
そしてそれは詩となる。
「し、、びょうし、衰弱死、焼死、溺死、刺殺、毒殺、銃殺、圧殺…………圧殺? 圧殺……圧殺……うん、良い響き」
天使のような笑顔で悪鬼のような単語を口ずさむ少女。――――この子は心まで壊れ始めていた。その時だ。
「ぶんぶんはろーYou■be」
「うわあ、なんかキモイの出た」
「神だよ、君が可哀想で助けに来ちゃった」
「えっ……?」
神様が舞い降りた。チャラかった。
「君の願いを、一つだけ叶えてあげよう。さあ、言ってごらん?」
「じゃあ……叶えてくれる願い事の数を百個にして?」
「ごめん、それなし」
「ケチじゃん」「ケチじゃねーし」
神様は一つの願い事を叶えてくれるらしかった。優しい。
「さあ、願い事は何かな……やっぱり女の子だもんね、素敵な王子様とかがいいかn」
「世界を滅ぼす力を寄越せええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
「うえええええええええええええええええ!?!?!?!?」
しょうじょは かなり 手遅れだった。
神様は目を閉じた。
「……失礼、しまーす」
「殺すッ! この世界を全て殺し尽くす!! あはははははははははカカカカカカカカカカッ!!!」
「笑い方キモッ!? いやいやさっき君、キモイとか言ってたけど鏡みてあぴゅっ」
「お、神様が爆散した! 小腸零れてますよーーー!! 餉餉餉餉餉餉ーーー!!」
神様が爆発した。
「神様を殺しました! 怪盗です!!」
「わあ怪盗さま! 素敵! 攫って!!」
「うん!!!!!!!!!」
そして数年後。
「カカカカカカカカカカッ!! 殺人交尾こそ快楽の祖であろうよ!! カーカッカッカッカカーカッカッカッカ!!
魔王軍四天王が一柱!! 【狂った怪盗】さまの副官んんんんんッ!!
【悪鬼令嬢】!! ぉぉぉ推して参るッ!! カカカカカカカカ!!!」
「うぉ、なんかやべー奴おる」
意味が分からない