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 さて、どうしようか。

 ノディスより強くなるために、体を鍛えるのは続けている。何せ、自分の命と星の運命が関わっている問題なのだから。


(この星の運命、ねぇ……)


 よくよく考えたら、この星って私にとってそんなに大切なものだろうか? 自分の正体がバレたら殺される場所なのに?


 でも、星が滅ぶということはみんな死ぬということ。私の大切な家族、友達、リオだって、みんな死んでしまう。


 正義のヒーローになるつもりなんてない。自分の命を犠牲にしてまで、世界を救うつもりはない。だって私の人生は私のためにある。


 でも、失いたくない人は確かにいる。

 どこまでできるか分からないけれど、私にとってのハッピーエンドを目指して足掻こうか。


「セピア、おはよう。……今日は何してるの?」


 学園の教室の中、自分の席でノートに文字を書き殴っている私に、リオが不審者を見るような目を投げかけてくる。


「おはよう。勉強してるの」

「何の勉強?」

「魔法の書、六十八章目から七十六章目」

「えっ? それ理解できるの?」


 私はゆっくりと顔を上げ、ペンを置いた。

 へらりと笑ったつもりなのに、リオの顔は失礼なくらいギョッとする。


「目のクマが酷いけど、もしかして寝てない?」

「眠れないの。だからここ最近、ずっと勉強してる」

「ずっとって?」

「3日くらいは寝てないかな……」


 セピアの体は思ったより頑丈みたいだ。

 それに記憶力が良いらしく、覚えるのが早い。加えて前世の私の理解力を合わせると、そこそこハイペースで勉強を進めることが出来た。


「何でそんなに無理するのさ」

「これから先、知識も必要だと思って」

「だからって……さすがに体を壊すよ」


 リオは私のノートに目を向けて、指先で文字をなぞる。


「この内容はまだ習うには早すぎる。本当に理解できてるの?」

「逆に聞くけど、私がただ文字を書いているだけに見えるの?」

「……セピアは成績優秀だったけど、ここまでじゃなかったよね」

「だから努力してるんだってば」


 運命を変えるために。

 そう思った自分が滑稽だった。

 なんて漠然としていて、野望のような理由だろう。……だけど小説の主人公ならこれくらい望まないとね。


「僕も強くなれるよう努力してるけど……あの日以来、あの男は現れないね」

「……うん。何してるんだろう」


 この星を滅ぼそうとしているのは間違いない。でも今じゃない。多分、彼がそうしたいのは運命の日である来年の2月17日。まだ猶予がある。


 リオは偶然あの場でノディスを見てしまったから殺されそうになったけど、あれから襲ってこないということは、ひとりくらいに見つかったところで別に構わないと思ってくれたのかも。


「全員、席につきなさい」


 教室の中で、担任の教師の声が大きく響く。教室といっても、大学の講義室のように広く、席が多い。教壇に向かって低くなるように段差ができている。


 好きな席に座って良くて、私とリオは一番右側の後ろの方に座った。


「今日は転入生を紹介する」

(え?)


 先生の言葉に私は目を見開いた。

 セピアの恋敵になるはずの彼女が転校してくるのはもう少し先のはず。どうして早まったのだろう?


 そう思いながら開かれた教室の扉を見つめているとーー


(えええええ!!?)


 もっと驚いた。

 この叫びを声に出さなかっただけ褒めて欲しい。


 扉の先にいたのは彼女ではなくーーー、あの日、私にノディス・サウディアと名乗った男だった。


(なっ……な、な!?)


 さりげなくリオの顔を見ると、当然ながら私と同じように驚いている様子だった。


 周りの生徒達は特に女子がきゃあきゃあ騒ぐほど、彼の容姿の良さに盛り上がっている。


(あいつ、何を考えているわけ!?)


 簡単に挨拶を済ませると、ノディスは先生に好きな席に座るよう言われた。


 そして目を伏せながら淡々と歩き、ーーー彼は当たり前のように私の左隣に座ってきた。


「よぉ。会いたかったぜ、セピア」

「……私は死んでも会いたくなかったよ」


 誰でもいいから夢だと言って。

 私の右隣にいるリオは彼を威嚇するように睨みつけている。そして私が聞こうとしていた事を先に口にした。


「何を考えている?」

「お前には話さない。俺はセピアに用がある」

「……セピアには近づくな」

「あんまりうるさくしてると殺すぞ」


 人を挟みながらバチバチするのヤメテ。

 一見、イケメン2人に取り合われているヒロインに見えるけど、全然違うんだよな。


 だからその痛い視線をこっちに向けてこないで、女子達。私は前世で2回イケメンに浮気をされたので、もう絶対にイケメンとは付き合わないと心に決めております。


「ノディス……、話って何?」


 でもまあ、余計な心配はいらないだろう。

 彼らが私を好きになるようなことなんて、絶対にないだろうし。



 


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