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 魔法の使い方は、セピアが授業で習っている。でも悪魔の魔法は勝手が違うのか、簡単に使えるものではなかった。


 力を込めてみても、心の中で念じてみても、魔法は発動されない。


(やっぱり闇堕ちしないといけないのかな……)


 とにかく使いこなせるようにならなければ。自分の身を守るためにも。


「何してるの?」


 体力をつけるために自分の家の近くを走っていると、学園から帰ってきたリオに声をかけられた。


「リオ、話しかけないでって」

「今はクラスメイトもいないでしょ」

「……そうだけど」

「セピア。授業もサボって、何してるの?」


 リオの口調が怒っている。だらしない娘を叱る母親みたいで、私は思わず苦笑いする。


「体力作りしてるの。いつ世界が滅ぶか分からないからね」

「……またそれ? 悪い夢でも見たんでしょ」

「とにかくリオには関係ないから。私のことは放っておいて」


 リオにはある程度、私を嫌ってもらおう。そしたら距離を置いてくれるはず。


「関係なくない。セピアは僕の大事な幼馴染だ」


 こういう言動が、セピアの恋心をくすぐるんだろうね。他人事のように思いながら、私は呆れたようなため息を吐いた。


「あのねえ。私だってリオが大事だよ。できれば幸せになってほしいの」


 そう言うとリオは目を丸めた。彼の透き通った緑色の目は、柔らかい赤色の髪によく似合っている。


「そのために私、頑張るから。邪魔しないでね」

「……恋の邪魔をしないでって言ったり、体力作りの邪魔をしないでって言ったり。セピアは忙しいね」


 ああ、そういえばそんな事も言ったなぁ。


「そ、忙しいの。じゃあね!」


 ちょっと強引気味に会話を途切らせ、私はジョギングを続けた。まずは基礎体力をつける。恋愛なんてしている場合じゃないのだ。


 走って走って、大きな橋の近くまで来た。この橋を渡った先には深い森がある。そこまでは行くつもりがなかった、けれど。


(なんだろう、この感じ……)


 不思議と胸がざわざわする。大きな橋の向こうに、何かあるような気がする。森に行くのは危ないし、もうすぐ夜になる。


 行かない方がいい。でも、好奇心が止まらない。


「……ちょっとだけ」


 私は橋の上を走った。

 森の入り口まで来て、再び引き返そうか迷ったけれど、結局進むことを選んだのだった。



 


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