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第71話 絶滅危惧種

「…………ただいま戻りましたコン。何やら賑やかですね、コン」


メイプルが喜びの踊りを披露していると両手に荷物を持ったヨウコが帰って来た。

…………。簡単に皆の分も言ったけど荷物が多くなるよね。明日からはメイプルを荷物持ちに一緒に行かせよう。木箱を軽々持ってるし大丈夫だろう。


「ヨウコにゃん! 今日はお魚パーティーにゃ!」

「え? お肉、買ってきたんですけど…………」

「こら、メイプル、デマカセ言うなよ。大丈夫、俺達は最初の予定通りで良いから。メイプルの食事だけは魚を使ってあげて。他の皆の分はヨウコに任せるよ」


魚は五匹しかないからね。どうせ全員分はないから。……。レベッカさんは俺、ツバキ、シオン、メイプル、ヨウコの分と思ったのかな?


「分かりました、コン。……そちらの子は?」

「うん? あぁ、そうだったこの子はミーシア、今日からウチのメイド見習いって事でお願い。この子の分も用意してあげてね」


ミーシアの分を考えていなかったな。でも魚が増えたから問題ないだろう。丁度良かったかな。


「シアはお肉が良いの!」

「はい。分かりましたコン。……あとご主人様、食事はみんな一緒に食べるのでしょうか? こん?」

「うん、そのつもりだったけど、何かある?」

「いえ、準備のやり方がありましたので。あと、ザルクさんとダリオさんは家で食べるそうなので夕食は良いそうです、コン」


ザルクさんの娘さんもいるからそうなるか。ならどっちにしても食材が余るのか。


「食材が余るならザルクさん達に渡しても良いから。あと、明日からは買い出しの時は荷物持ちにメイプルを連れて行って良いからね」

「分かりました、コン。それでは食事の準備をしてきます、コン。あ。あとスンスンさんのメイド服もついでに受け取って来ました。コン」


ヨウコが両手に抱えていると思ったらスンスンの服まであったのか。ハールさんは約束通り仕上げていてくれたみたいだね。次はミーシアの分が必要になったけど。って、そうだった。


「ヨウコ、ストップ。ギルドで何があってレベッカさんから賄賂貰ったの?」

「ッ!? わ、賄賂では……。…………。――申し訳ありませんでした! 私がレベッカ様の質問に答えたせいです!」


いや、頭を下げられても。質問に答えたせいって意味が伝わらないからね?


「ヨウコさん。旦那様に分かる様に報告してください。……メイプルさんもですよ?」

「うにゃ!? わ、私もにゃか?」

「そうだな。事と次第によっては魚は抜きだ。ありのまま報告してくれたら明日の晩御飯も魚にしてやるよ」


「ギルドに行ってミリスにゃんを呼んでも取り次いでくれなくて騒いでいたらヨウコにゃんが来て奥の部屋に案内されてご主人様に付いて質問を受けたにゃ、それに答えていたら巾着袋と魚を貰ったにゃ! 明日はもっと大きい魚が良いにゃ!」


…………。ぶちまけたな、この猫。ヨウコの「この猫信じられない」って顔を見るに真実なのだろう。それはいいけど、ただ、さ。


「――ヨウコさんは俺に嘘の報告をするつもりだったのですか?」


メイプルの報告を賄賂を貰った癖に全部喋ったっと思っているなら俺の使用人には必要ないよ? 


「ッ、い、いえ。ただ語弊もあります、質問に答えたのは私で、メイプルさんのお陰でご主人様に付いての質問には殆ど答えていません。巾着袋はレベッカ様からお近づきの印として頂きました。お土産に関しては私達の時間を使ったお詫びとしてご主人様へ送られた物です」


「それなら帰って来て直ぐに報告するべきではありませんか?」

「メイプルさんが報告していると思っていました。…………木箱を抱えていましたし」


嘘では無いのかな。ただ全部喋っているとも思えないけど。


「メイプルは他に付け加える事はある?」

「にゃー、今後は使用人が受付に来る際はロロナにゃんかファルナにゃんを呼んで欲しいそうにゃ。使用人用の受付嬢らしいにゃ。あとヨウコにゃんがギルドに来た理由はご主人様が金貨を渡したから買い物が出来なかったせいにゃ」


うん? 俺が金貨を渡したから? 


「旦那様、だから言いましたでしょう? 市場で金貨は使えないと」

「露店では無理かもしれないけど普通の店で使えばいいんじゃないの? 買い物は一か所でするわけじゃないだろう?」 

「……普通、平民は金貨を持たない。怪しまれるし、狙われる危険もある。……ヨウコの行動は間違っていない」


そうなのか。狙われる危険まであるのか? スラムの悪人か。ならヨウコを責めるのはお門違いか。

俺のせいでギルドに行ったからそう言った事態に巻き込まれたわけだし。…………メイプルが騒動を起こしていたのを解決してくれていたわけか。


「そう言った事情があるなら先に言って欲しかった」

「金貨を受け取ったのは私ですのでご主人様に非はありません、コン」

「要望があるなら言ってくれれば考えるよ。全てを通せるわけではないけど努力はする。皆も言いたい事は分かり易く言ってくれないと分からないからね?」


ただでさえ俺はこの世界の人間じゃないんだから。変な行動をしているなら止めて欲しい。

…………完全防御態勢は止めないよ?


「明日は魚が良いにゃ!!」

「え、え、お、お肉がいいの!」

「……ヤマヤマと同じ寝室が良い」

「お酒が欲しいですわ」

「お姉さまにお酒を飲ませないで欲しいです」


「…………要検討の上、後日結果を報告します。ご希望に添えない事もありますが、ご容赦ください。特に後半部分」


お酒が飲みたいと飲ませないで、って相反する要望が混じってますよ。


「……私のは真ん中だからギリギリセーフ?」

「アウトだよ」

「……がーん」


打ちひしがれているフィーネはほっといてヨウコに今回の件は俺の責任もあるので不問にすることを伝える。どうせヨウコ達が話せる内容に核心を付ける事があるわけないし。世間話まで規制するつもりはない。

ただ今後は俺の情報を外で話すのは控えるようには伝えて置く。俺が気付かない内になにかやらかしている可能性があるからね。


それからヨウコが再度謝罪してからメイプルを引き連れて食事の用意をする為に台所に向かった。落ち込んだまま。

…………後でスンスンにフォローを頼もう。俺はレベッカさんにクレームを入れるとしよう。この世界にクレーマー文化を生み出すのだ。なんてな。


ヨウコ達と別れて食事が出来るまで手持ち無沙汰になったのでダダンガさんが仕上げてくれた工房を見に行くことにする。


「――ミーシアはここまでですわ。スンスンに部屋の場所を聞きなさいな」


二階へ上る階段の前まで来た所でツバキがミーシアに待ったを掛けた。

そう言えばミーシアに部屋を指示するの忘れていたな。トコトコついて来るから普通に来させていたけど、よく考えたら働くから屋敷に置いてくれって言ってたな。よし、では働かせようではないか。と、その前に。


「ミーシアはスンスンに部屋を決めて貰ったらその後はスンスンの指示に従ってくれたら良いから」

「……シアもお兄ちゃんと一緒に居たいの」

「それはもう効かないよ。働くって言って付いて来たんでしょ?  ――スンスン、任せるよ。荷物を置いたらお風呂にも連れて行ってあげてね」


子供達をメイプル達に任せたのか近くにスンスンが来ていた。俺達の会話は聞こえていただろうから後は任せよう。


「分かりましたー。ではミーシアさん、こちらへどうぞー」

「…………うんなの」


肩を落としてミーシアがスンスンに付いて行った。…………ふぅ、ミーシアの相手は気を張らないといけないから疲れるな。


「主様、気付きましたか?」

「ミーシアの事? うん、孤児院でツバキが気付かせてくれただろ?」


孤児院で元気になったミーシアと会話をした時に異常に可愛く、ほっとけないと思ってしまった。

ただミーシアが可愛いだけなのかと違和感が拭えなかったけどツバキが抱き締めてくれた事で頭がスッキリして、改めて見たミーシアは年相応の幼い女の子であった。


魔法なのか何なのか分からないけど、ミーシアと話す時はしっかり気を張っとかないと流されてしまいそうになる。

現に孤児院に居た少年達はミーシアを特別視していた様に感じたからね。あのままほっとくのはマズイと感じてしまった。既に傾国のお兄ちゃん殺しとか言われているし。


「……。……。……まさか魔族?」


魔族? そう言えば魔族もいるってメリリが言っていたな。でも獣人とかと同じ亜人扱いじゃなかったっけ?


「あの年で魔法を使えるはずがありませんから魔族の生き残りでしょうね。私も初めて見たので確証はありませんけど」

「魔族って珍しいの?」


「……魔族は絶滅危惧種。……昔、人間族に狩られまくった」

「人間を惑わす者が多いと言う理由で魔族狩りが行われたと聞きました。確か魔法とは別の特性があると聞きました。その為、邪神の遣いとして忌み嫌われていると」


「……一部の魔族は種族による特殊能力が使えた。炎を生み出したり、幻術を操れたり、姿を変化させたり様々な能力があったとされる。……過去に人間の国王が魔族に操られる事件があったらしい。……それから魔族狩りが始まり、現在でも魔族を見つけたら王国が褒賞金を出しているはず」


…………。良かった。差し出せばお金になるとは言わないでくれたか。

ミーシアはさしずめ淫魔か? チャームの特殊能力が使えるとか?


「彼女はまだ子供ですから無意識に力を使っていると思いますわ。制御させれば主様に迷惑を掛ける事もないですわ」

「心配しなくても俺はメルメル達にミーシアを一端の女性に育てると言ったからね。追い出したりするつもりはないよ。ただミーシアが力を使っていると感じた時はそれを止めさせてね。自分でも薄々理解はしていると思うけど」


俺に効かなかった事を理解しているみたいだからね。…………。これまでは子供が相手だったから問題も少なかったかも知れないけど今後はどうなるか分からないからね。


「……魔族は容姿が異形の者と人間と変わらない者といる。……ミーシアは後者。能力が明るみに出ないなら人間で通せるはず」


ツバキやフィーネも魔族と確証が持てないぐらい人間と変わらないなら一先ずは問題ないかな。

能力がバレないなら異様に可愛い女の子って事だからむしろ好意を抱かせる事が出来るよね。

…………本物の傾国の美女になりそうだな。


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