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第48話 使用人候補3


「ツバキ、この二人の相手お願い出来る?」

「ええ。構いませんわよ。軽く揉んであげますわ」


「ッ、や、ヤマト様! 私達二人では相手にもなりませんよ!?」

「そ、そうです、力量ぐらい測れますがシオン様が相手でも触れる事すら出来ませんから!」


うーん、力量が読めるならやる前から文句を言うなって言うのは間違っているかな?


「別に勝てと言っているわけではありませんよ? 気概を見せてください。お二人には門番や屋敷周りの警戒を担当して貰います。ちょっとした強盗相手にそそくさと逃げられたら目も当てられませんから。…………心配しなくても大丈夫ですよ、先ほど僕より小さい少年少女が耐えていましたし」


「待って下さい! それ基準にしたらダメなヤツです! 私も遠くで伺っていましたけどそれでも体が動かなくなったんですから!」

「娘さんの事を思い浮かべれば耐えれますよ。……たぶん」

「それ走馬燈になりますよ!」


「――いい加減に主様に意見を言うのは止めなさいな。本気で殺しますわよ?」


「「失礼しましたッ!!」」


「では開始です」


「「ちょ!」」


二人が驚愕の表情を浮かべると共にツバキが俺の頭を抱き締めた。そして次の瞬間、ゾクッと体が震えた。

二度目だから何とか耐えることが出来たけどこれはアレだ、一回転するジェットコースターに乗った気分だ。


最初は落ちるんじゃないかと恐怖が体を支配したけど、二度目はシートベルトがしっかり付いた事を理解してジェットコースターに乗った気分だね。怖いけど安心して恐怖を楽しめる的な。

…………。まぁ、直接殺気を受けている二人はシートベルト無しで椅子にしがみ付いている心境だろうけど。


「…………。ギリギリ合格ですわね」


ツバキの腕から解放されると目の前に膝を付いて荒い呼吸を繰り返す男が二人いた。

うん。命からがらジェットコースターから降りた人みたいだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、こ、これで、正式に、雇って、頂ける、のですか?」

「…………。…………。…………」


一人は耳も尻尾も萎れて動かないぞ。意識はありそうだけど。


「ええ。ツバキが合格を出しましたから。今日から宜しくお願いします」

「おぉ! こ、こちらこそ! おっと、ハハハ、足に来てますね。流石です」


俺が差し出した手を握ろうと慌てて立ち上がろうとしたザルクさんが足をもつれさせていた。

足が不自由になっているのは間違いないかな。俺のポーションなら治すことも出来るだろうけど、会ったばかりの人にポーションの秘密を教えるわけにもいかないからな。…………今後の働き次第かな。


「宜しく、お願いします。…………お館様」


おっともう一人の犬さん、ダリオも復活したようだ。ツバキから微妙に距離を取っているのが気になるがしばらくは仕方がないか。

……それにしてもお館様か。斬新な呼び方が来たな。…………。ご主人様は女の子に呼んで貰いたいから良いか。


「旦那様、お待たせしました」


おっとシオンがもう帰って来た。随分と早かった…………。後ろの四人の目から生気が抜けているんだけど?

 …………。気にしたらダメ?


「ご主人様。メイプルにゃ。馬鹿でどうしようもない私を雇ってくれてありがとうございますにゃ」

「ご主人様、ヨウコです。料理しか能の無いどうしようもない愚かな女ですがこれからよろしくお願いします。……コン」

「ご主人さまぁ。スンスンですー。私がメイド長になりましたー。宜しくお願いしますー」

「ご主人様、ヤマヤマって呼んで良い? …………冗談ですごめんなさい。シルフィーネ・フィロイヤル。親しい人はフィーネって呼ぶ」


…………。最初の二人は何があったんだろう。気にしたらダメなのか? それにしても見た目が一番幼い子がメイド長? いや、エルフさんを除いたら一番年長だけどさ。


「……それでシルフィーネ・フィロイヤルさん。俺達は貴女を何と呼べばいいですか?」

「…………。ヤマヤマはフィーネ。他はシルフィ」


どうやら俺は親しい人と認められたみたいだ。愛称もセットみたいだけど。…………。ツバキさん、気にしなくていいから。シオンも笑顔が怖いよ?


さて、予想より人数が増えたけど広い屋敷だし問題ないだろう。…………。そう言えば賃金の話してないな。ザルクさんから聞いているかな?


「賃金はスンスン以外、一人一日銀貨一枚ね。スンスンは管理職だから銀貨一枚と大銅貨三枚ね」


「「「ッ!?」」」


なんか驚いているんですけど。ザルクさんまで驚くのはおかしいよね? ……フィーネだけは眠そうに見てるけど。


「休みは数日前に申告してください。管理はスンスンとシオンに任せるから適当に指示してね」


レベッカさんに聞いておいた話では使用人には基本的に休みはないそうだ。特に亜人は出稼ぎなどで来ている事が多いから無駄に休みを欲しがる人はいないみたいだ。

…………。週休ゼロはブラック過ぎるから一度ぐらいは交代で休ませるよ。後は休憩時間を多めに取らせるか。その辺りはスンスンと相談しよう。


「雇いはするけど、職務態度次第ではクビにすることもあると思っていてね。ザルクさんにも言ったけど仕事には誠意を持って勤勉に勤めて欲しい。休む所は休んで良いから不誠実な行いだけはしない事。…………とは言ってもいきなりクビにはしないから、何度か注意しても直らない場合だよ」


皆さんクビって聞いてから絶望的な表情をしているから少し猶予があることを伝える事にした。

でも真面目にやってくれれば良いって言ってるんだからそこで絶望するのはおかしいよね? 真面目にやる気あるんだよね?


「ご主人さまぁ、皆を代表して誠心誠意お仕えすることを誓いますー。ご主人さまが与えて下さった恩義に報いるだけの働きをお約束しますー」


スンスンが一歩前に出て宣誓して、他の人達も頭を下げた。


…………。うん、予定外に大人数雇うことになったけど、いい人達が見つかって良かった。これで一先ず最低限の準備が出来たな。


――さて、おもてなしの準備を始めよう。


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