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第47話 使用人候補2


「連れて来ました!」


ザルクさんに家事が出来る人の心当たりを聞いたら直ぐに集めてくれるって言ってくれたのでスラム傍の広場で待っていた。

スラムに居ると襲って来る人が多いからね。経験値もゴールドも入らないのに戦っても意味ないし。


ザルクさんが連れて来たのは男性二人と女性四人。全員ザルクさんよりスラム歴が短い新人ばかりだそうだ。

スラムに長くいる人より入ったばかりの人の方が悪事に手を染めた確率が下がるしスラムから出たいと思う気持ちが強く残っているらしい。

長くスラムに居ると希望を無くして悪事に手を染めたり、スラムの生活が当たり前に感じてしまう事があるそうだ。


男性は二人とも獣人でザルクさんと余り変わらない。元冒険者かな?

女性は二人が獣人で十代後半から二十代前半ぐらいかな? 残りの二人は人間の十代前半と後半ぐらいかな? 女性の年齢は分かり辛いんだよ。


「では面接をします。名前は結構。雇うと決めてから聞きます。覚えるのが面倒なので。種族と自分が何が出来るのか教えてください。他にもアピールポイントがあるならどうぞ。ではそちらの男性から」


俺が一番右の青年に手を向けると一歩前に出て姿勢を伸ばす。


「俺は犬人のダリオ、あ。ちが、え、ええっと」

「あー、いいから続けて下さい」


「は、はい。えぇっと、犬人です、人間より鼻が利きます。えっと元冒険者でDランクでした。左腕を骨折して盾が持てなくなり止めることになりました。えっと、スラムに来て二か月ぐらいで、ザルクさんには冒険者の時に世話になりました。あ、あと、ダダンガさんのトコで働いたこともあります!」


ふむふむ。家事のかの字もなかったな。では次。俺が視線を向けると次の男性が入れ替わりで前に出て来る。…………立ち方が悪いな。怪我か? 片足に重心を置いてるけど。


「狼人だ。元Cランクの冒険者兼傭兵。戦いには向いてるぜ。坊ちゃんのムカつくヤツを倒すぐらい簡単――ぐぇッ!!」


…………審査員のツバキさんが不合格を叩き付けました。ザルクさんが青ざめているけど、俺は信頼できる人って言ったよね? なにコイツ? 家事が出来なくても審査はするけどこれはないわー。


さて、気を取り直していよいよ本命の女性陣です。先ずは獣人族の二人から行ってみよう。


「猫人で17歳にゃ。田舎から畑仕事が嫌で出稼ぎに来たけど仕事が無くて困ってるにゃ。家事は苦手だけど頑張れるにゃ。処女にゃ」

「狐人です。コン。21歳です、コン。先日まで宿屋の厨房で料理をしていました。コン。人間のお客が増えたからクビになりましたコン。仕送りが必要なので困ってますコン。処女です。……ぁ、コン」


…………とりあえず面接に処女は要らないね。あと語尾を無理やり言うのは止めよう。


「小人族ですー。これでも24歳なんですよー。家事は得意ですー。以前は宿の清掃員をしてましたぁ。今はたまに馬小屋の清掃をしてますー。掃除は大得意ですー」

「……エルフ。これでも160歳。人間の街で40年は生活しているから大抵のことは出来る。苦手なのは夜伽で――、…………冗談」


…………。ちょっと待とうか。

女性陣はツッコミ待ちなの? ツッコミどころ満載なんだけど! 

とりあえずツバキさん、その殺気は止めて上げようね。皆怖がっているから。


ふぅ。えっと結局人間は居なかったのか。そうだよね、亜人差別しているのにザルクさんが連れて来たらおかしいよね。


猫人は頼りないけど猫耳だ。アピールポイントがないけど尻尾がシュンとある。ケモ耳と尻尾を除けば年相応の女の子だな。


狐人は何だか疲れた感じの未亡人染みたお姉さんだ。人間の客が増えたからってクビになるんだな。亜人には働き辛い環境だよな。料理の腕には問題ないんだから俺は大歓迎だけど。


小人族の子は人間の子供と変わらない外見だ。俺より小さいし。これで24歳か。12歳で通るぞ。…………詐欺だな。


エルフさんはよく見ると耳が少しだけ尖っているね。それにかなり美形だ。ツバキとシオンで慣れているから気にならなかったけど、普通に見ると異質なほどの美少女だな。ただ猫さんより若く見える。これで160歳は詐欺だな。 


ふむふむ。つまり猫人は能無しで。狐人は料理人。小人は家政婦。エルフは万能か。


…………。よし、全員雇うか。

いやだって、猫耳撫でたいし。


…………あ、男もいた。狼は退場になったけど、犬人はザルクさんと交代で組ませるか。


「ツバキとシオンはどうだ?」


「私はそこの狼以外は問題ありませんわ」

「私もお姉さまと同意見ですが、皆さんはお住まいはどちらになさるのですか?」


「俺はスラムから通いたいです。いずれは共同宿舎に移動するつもりですけど」

「私は住み込みがいいにゃ。スラムは臭いにゃ」

「わ、私も住み込みがいいです、コン。村に仕送りをしているので節約したいですコン」

「私も住み込みがいいですー。その代わり休憩時間以外は働きますのでー」

「……私はどっちでもいい。スラムでも、ご主人の寝室でも。…………ごめんなさい冗談です」


…………エルフさんはツバキの殺気が好きみたいだ。わざと煽っているのだろうか?


「住み込みとなるなら人柄を把握する機会を頂きたいです。私かお姉さまが皆さんと一対一で少しお話をさせて頂ければ済みますので」

「なら住み込み希望者はシオンと対話をして許可を得ることが条件ね。使用人についてはシオンに一任するから。シオンが認めれば俺も認めるって事で」


ツバキとシオンなら間者が紛れて居ても見抜いてくれるだろう。間者じゃなくても使用人にはポーションに関わらせないけどね。ツバキとシオンは短い付き合いだとしても信頼している従者だ。使用人とは一線を画すからな。


「シオン様との面談はいつするにゃ? 出来れば今日からでも住み込みに行きたいにゃ」

「ならそこの宿を一部屋借りよう。シオンお願いできる?」

「はい。お任せ下さい。皆さま、着いて来て下さい」


シオンが女性陣を連れて近くの宿に向かって行く。銀貨以下の硬貨は全部渡しているから十分足りるだろう。

さて俺は残った犬人二人の最終審査をしようかな。女性陣だけ審査して男性陣をしないのは不公平だからね。


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