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第4話 欲求不満か?


(…………それで俺は何時になったら転生させてくれるんだ?)


メリリに信者認定されて、イヤイヤながらもメリリの信者増やしを努力することで話はまとまったのだが、それから結構な時間が経つが一向にこの世界に転生させられる気配がない。メリリは「ムムム」や「ヌヌヌ」など呻いているが、姿が見えない俺には何をしているのか全然分からない。恐らくアイドルや女神にあるまじき行為を――、


「違うわよ!? キミが我儘言うから下界を見て都合のいい男の身体を探しているんでしょ!!」

…………都合いい男を探している? 欲求不満か?


「ちーがーう! キミが貴族の子供はイヤだとか、大商人の子供はイヤだとか、女の子はイヤだとか、そもそも赤ちゃんに転生するのはイヤだって言うから困っているんでしょうが!!」

(いや、そう言われても俺はメリリの願望を叶える為に要望を伝えただけなんだが)


転生するに当たってメリリは俺を伯爵家の次男に転生させようとしていた。まだ生まれる前の胎児にだ。そもそもが貴族なんて規律とか礼儀とか絶対に面倒だ。だからもっと気ままに生きられるようにと別の転生先を求めた。すると今度は裕福な商家の三男を指定されたが、ポーションが作れる商家の三男って死ぬまでポーションを作らされ続けるだろう。両親や兄にこき使われるのは御免だ。すると今度は平民の中ではそこそこ裕福な家庭の第一子と言われたが性別が女性だった。転生で性転換はない事もないだろうけど俺は無理だ。

そもそも現在の記憶をそのままに転生してくれるなら胎児からスタートだと大きくなるまでに時間が掛かり過ぎるし、一年以内に成果を出すなど絶対に不可能だ。


そこで俺は結果を出す為だとメリリに言って要望を伝えた。

成人前後の男で、背後関係にしがらみがなく、種族差別に無縁であり、アルテミリナ様の信者ではなく、健康的で筋肉質で有り、そこそこイケメンで、街の近くに居て、その街に入る為の手段が有り、多少の路銀を持っていて、俺と入れ替わっても絶対にバレない天涯孤独な者であって死んでいることだ。


生きている者の身体を奪うわけにもいかないし、死んでいてもメリリが身体を修復して俺の魂を入れると言っていたので初めは直ぐに見つかると思っていたが、「アルテミリナ様の信者ではない」これが問題だった。成人している者はほぼすべてがアルテミリナ様の信者だ。

この世界では15歳で成人の儀式を教会で行うのだが、その時アルテミリナ様に祈りを捧げる。ここで信者になる。つまり成人しているイコール信者だ。成人していて信者ではない者は悪人や犯罪者だ。


そうなると成人前となるが、俺と入れ替わってもバレない未成年は孤児だけだ。背後関係がなく、健康である孤児。そして俺と入れ替わっても問題ない孤児。

孤児は孤児院で管理されているから入れ替わりでバレるだろう。後は可能性としてスラムや奴隷って線もあったが拒否させてもらった。


「流石に条件を全部叶えるのはムリかなぁ。うーん、入れ替わりでバレるのは記憶喪失で誤魔化すとして、健康面はワタシの加護でどうにかする。顔の形は忘れて、筋肉は自分でどうにかさせて、差別はポーション職人でカバー、ポーションがあるから路銀になるし街には入れるとして、――成人前で街の近くにいるアルテの信者じゃない死んだばかりの若者――居たぁ!!」


随分要望が削られたが、まぁ仕方がないか。記憶喪失で誤魔化せる程度の希薄な人間関係だろうな?

(――女じゃないだろうな?)

「男よ! それに隣の国から逃げて来た難民の最後の生き残りだったから天涯孤独よ! 祝福を受ける前で信者でもないし、今森の中で魔物に襲われて死んだばかりよ! 直ぐに体を蘇生してキミを転生させるわ! アルテにバレる前に急いで!!」


いや、俺に急いでと言われても、俺は身動きどころか視界も無いんだが? 


「そうだった! ワタシがしないと! えっと加護は魂に刻んでいるから、先ずは蘇生ね! 身体の異常もすべて取り除いて、ついでに古傷も治しましょう。ちょっとだけ身体を強化しておくわね。衣服の修復もしておいたわ。それじゃ、時間がないから後はお願いね!」


(待て! 近くにそいつを殺した魔物がいるんだろ! 俺が街に着けるまで俺の周囲に魔物除けを施してくれ!)

「そうだったわね、でも、アルテにバレるかも……。あまり長く持たないから急いで森を抜けてね。倒れている場所から大岩が見えるからそっちの方角進んだら街に着くわ」

(分かった。…………転生したらもうメリリとは会えないのか?)

「ええ。会えるとしたら使徒になる時だけよ。…………もし使徒になってくれるならワタシの教会を作って。そこで祈りを捧げてくれたらワタシがキミを迎えに行くわ」


(………………使徒になるかはまだ分からない。だけど今の俺はメリリの信者だ。――メリリサート様、この度は俺の無理難題な要望を叶えてくれてありがとうございます。約束通り、俺に出来るだけの事はします。…………信者が集まったら、また会いましょう)

「ふふ、ええ。待っているわ。貴方の未来に祝福を。また会いましょう」


地球の神様と別れた時と同様にメリリの気配が遠くなるのを感じた。


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