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第2話 女神メリリサート様



(――ここは?)

 意識が戻って来ると今度は真っ白な空間にいるみたいだ。相変わらず身体の感覚も視覚もないのだが、先ほどとは違って白い空間だと認識は出来ているみたいだ。


「おおっと? 気が付いたのかい? ようこそぉ! 迷える子羊よー! ワタシは慈愛の女神! メリリサート! ワタシは君を歓迎するよ!」


 白い空間から妙にハイテンションな声が聞こえてきた。さっきの神様と同じで姿は見えないけど話方から言って幼女が大人ぶったような姿が目に浮かぶな。きっと天然お馬鹿キャラ女神か、ぶりっ子気取りの痛いメルヘン女神だな。


「ちょっと!! いきなり人のことディスるのやめてー! 君が思っていることは全部伝わるんだよ! 本音が駄々洩れでワタシ傷つくよぉ!」

 …………うぜぇ。


「ぐはッ! 女神ショック! こんな可憐で清楚で気品と美貌を兼ね備えた世界のアイドル! 女神メリリサートに対してヒドイよ! ここが教会だったらキミ! 信者にフルボッコにされているからね!」

(…………慈愛の女神とか言っておいて信者にリンチさせるのか。あぁ自称か。)


「ほあぁ!! ヒドイ! こんな酷いことゼウスの星の子にしか言われたことないよ!!」

(…………言われているんだな。むしろこの世界の住人が言わないって不安だな。この世界大丈夫か?)

「大丈夫だよ!? みんな元気に楽しく生きてるよ! 女神様、女神様ってすっごい称えてくれるよ!」

(なるほど。メリリサート様以外にも女神様がいてそっちの女神様は人々に崇められているってことか)

「ぎっくぅ! な、なぁーんのことかしらねぇー、ほほほほ」


…………マジで大丈夫か、この世界。これが神の一柱なのか? 駄神の一柱じゃないだろうな。もう一人の女神がよほど優秀なんだろうな。


「そ、そんなことないよ! 女神はびょーどーなんだからね! 信者の数が人口ほど違っていても女神の格は同じなんだから!!」

(人口ほど違うって、全人類が信者の女神様と信者ゼロのメリリサート様ってことか? …………チェンジでお願いします)  


「待って!! お願い待って! 異世界人にまで見捨てられたらワタシがいる意味が本当に無くなっちゃう! アルテミリナにまたため息つかれちゃうよ! 「少しは私の負担を減らしてくれないかしら?」って目を細めて言われるワタシの気持ちにもなってよ! あれって結構傷つくんだよ!? ワタシだって好きで信者が少ないわけじゃないんだよ! そもそも唯一神として崇められているアルテにどうやってワタシが勝てばいいの! ワタシ、アルテの信者の子に邪神扱いされたんだよ!? 同じ女神だよ? そりゃほんのちょっとはアルテの方が優秀だと思うよ? でもワタシの方がおっぱい大きいんだよ! アルテは星の異変とかがある時は神託を告げたりしているけど、ワタシの方が若いんだよ! アルテは大陸の大半が死滅しそうな疫病が起こった時とかは降臨して人々を助けたりしているけど、ワタシの方が可愛いんだよ! アルテは――」


(分かった! 分かったからもうやめとけ! 何か聞いてて悲しくなる。それで自称アルテミリナ様より胸が大きくて若く可愛いお馬鹿なメリリ様は俺に何が言いたいんだ?)

「なんでワタシの方がアルテよりおっぱいが大きいの知ってるの!?」

(お前大概にしろよ!? 話が進まんだろうが!!)



それから混乱しているメリリから詳しい話を聞くのに結構な時間を要した。

簡単に言えばメリリはこの世界で女神を名乗って行動するのはかなり難しいようで、アルテミリナ様より異世界からやってくる異世界人の対応を任せられているらしい。…………完全に上下関係だな。本人は認めないけど。


それでたまに来る異世界人のお世話をメリリがしているらしいのだが、大抵が怒って何の措置もしないまま世界に転生しているそうだ。それをアルテミリナ様が探し出して改めてお世話しているらしい。

「うぅ、こんなにまともに話を聞いてくれた人は500年ぶりですぅ。前回の人なんてすっごく怒って武器だけ寄越せって言ってすぐに転生したから大変でした……アルテが。だから今回は頑張ろうって気合を入れたかいがありました。お蔭でこんなにちゃんと話せましたよ!」


(ここまで聞くのに数十回はキレそうになったがな。一々人を馬鹿にしたように話すのはそういう仕様か?)

「仕様とかないよ! これがワタシの魅力でしょ? キミも虜になっちゃったね! きゃるるん♪」


イラ。ッと我慢だ。俺。ここでキレたらここまでの努力が無駄になってしまう。いや、話を聞いているとさっさとキレた方がアルテミリナ様にチェンジできるみたいだからそっちの方が良さそうだけどアルテミリナ様はメリリと違って真面目そうだから融通が利かないイメージがあるんだよな。その点メリリはお馬鹿な分融通が利きそうだしな。ここは我慢だ。社畜で培った精神力で耐えきってみせる。


「だから聞こえているんだよ! ワタシはそんなお馬鹿じゃないよ!? アルテも「うんうん、メリリは賢いもんね。うん、きっといつかは…………」ってメリリのこと褒めてくれるんだからね!」

(最後の沈黙まで表現出来るならそこに籠められた想いを汲んでやれよ!)

あー、頭痛くなってきた。肉体が無いのにダメージを与えるとは流石は女神だな。


「てへへ。褒めてもスキルを優遇したり、生まれを良くしたりしかしないよ?」

(…………、ならそろそろスキルをくれないか? 俺の要望は向こうの神様から聞いているんだよな?)

貶しても勘違いされたどうしようもないな。もうさっさと済ませて転生しよう。


「あ、あれ? 何かいつもの感じになってきたような? あははは、ワタシの気のせいだよね! キミはワタシの信者だもんね!!」

(いつ俺が信者になったんだッ!! これまでの話の中でアンタを敬う要素がどこにあったんだ!!)

「ええええ!! だってあんなにワタシと会話してくれたんだよ!? もうこれは運命だって思ってもうキミの魂にメリリの加護を与えちゃったよ? 拒絶もされなかったからキミも受け入れてくれたって思ってたよ!」

(そんな神々の超常の力をただの魂の俺がどうやって防ぐんだよ!? 何も気付かずに受け入れただけだろ!)

新手の詐欺か? カミカミ詐欺。被害者は気付かぬうちに加害者の信者にされている。信仰の自由はありません。


「待ってよ!? アルテとワタシは女神の位的には本当に同格なのよ! アルテは信者が多いから加護を授けることは稀だし、女神の加護を授かれただけでも凄いことなんだよ!」

(でもアンタはこっちの世界では邪神扱いされているんだろ? なら俺は邪神の信者ってことにならないか? 邪神の加護持ちって思われないのか?)


「……………………、さぁ! スキルの時間よ! キミは何のスキルが欲しいのかな!?」

(おいコラ! なに話を流してんだよ! 邪神の加護なんていらねぇぞ!!) 

「ええぇ、でもキミが問題も起こしていないのに加護を取り上げたら、またアルテにお説教されちゃうよぉ! 本当に加護事体には問題ないから! 黙っていたら誰にもバレないから! だからお願い! 私の信者のままで居て! お礼にスキルは超絶スペシャルなパワフルレジェンドスーパーファイヤーレアなスキルにするから!」


(…………俺、スキルは目立たず簡単に稼げて楽して尊敬されるスキルが良いって言ったはずだが?)

「それってワタシが言うのも何だけど結構凄いスキルだよね? 目立たないのに尊敬されるようなスキルがあるならワタシが欲しいよ」

(泣き言は良いよ。この要望に応えられるならメリリサート様の信者でもいいですよ? マイナス要素を上回るスキルが手に入るならメリリサート様の加護も受け入れるッ!)


「ワタシの加護は罰ゲームでもマイナス要素でもないからね! でも、言質は取ったよ。キミにはこの魔法をあげる!!」



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