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65話 悩めるゼクウェント
「ずるいじゃん! 酷いよ!」
「してねえ」
呆れたような顔で答えるソル。
遠くから声が聞こえてきました。
「ぜくえんとさまー! ひよー! そるー! はやくはやく!」
「今行くー!」
「ぜくえんとさま、おはなきれいですね!」
「そうだね」
「あ、あっちにも!」
「うん」
初めて来たところだというせいでずっとはしゃぎ回っているシャイニーナ。
あっちに行ったりこっちに行ったりと、ゼクウェントは追いかけるのが精一杯です。
(どうしよう……このままじゃ確実に切り出せないよなあ……)
今日の本当の目的はシャイニーナに想いを伝えること。
なので何とかして彼女を落ち着かせないといけません。
「あれ? ぜくえんとさまどうかしたんですか?」
考え込んでいるゼクウェントにシャイニーナは声をかけました。
彼はそっと彼女の手を握ります。
「ちょっとこっちに来てくれる?」
4人に見えない辺りまで移動した2人。
木陰で彼は彼女を真っ直ぐ見つめて言いました。
「話があるんだ。聞いてもらってもいい?」
「もちろん……」
いつになく真剣な表情の彼に彼女は心配そうにそう答えました。