56話 魔王
エイレンとレオドルスはゼクウェントのほうを向きました。
「娘を再び私たちに会わせてくれた心優しいあなたはいったい……」
「ああああああああ! そうだよね。となると僕は誰ってなるのは必然的だよね。予想してたよ。うん」
はああと彼はため息をつきました。
「私は」
急に、彼の目つきが変わりました。
国王アンドランジェの前で見せた、あの厳しい顔つき。
それは、彼の“魔王の顔”。
「魔王だ。魔王、ゼクウェント・ダークセイレーン」
威厳のあるずっしりと重い声。
「魔……魔王……?」
「魔王ってあの魔王?」
「え?」
めったに聞かない魔王という言葉を聞いて動揺する村人たち。
そして、彼らははっと我に返りました。
「まっ、魔王おおおおおおおおおおおおおおおお!?」
魔王。
魔界の王。
魔族の王。
強くて怖い。
畏怖なる存在。
その魔王がこの村に、私たちのまえにいる。
驚かない人なんていないことでしょう。
「あの……なぜ魔王様がシェ、シェンのことを……?」
「聞いていないのだな。国王から何も。無能な王だ。勝手に奪っておいて何も話さないなど」
「え……?」
「シェン――シャイニーナは魔界捧げられた。魔王への生贄である」




