50話 お母さんとお父さん
「はあ、今度の外出でちゃんと言えたらいいんだけどな……」
シャイニーナの指の細さに合わせて作られた小さな小さな指輪。
ほんの少しでも力をかけたら壊れていしまいそうなぐらい繊細。
彼女が付けたらどんなに似合うだろう。
想像しながら彼はまたため息をつきました。
「ぜくえんとさま!」
昼下がり。
シャイニーナがゼクウェントに話しかけます。
「どうしたの? ニーナ」
「あのね、あのね、」
本当に本当に小さな声で、聞こえるか聞こえないか分からないぐらいの声でシャイニーナは言いました。
「にーな、おかあさまとおとうさまにあってみたいの……」
「っ……!」
“シャイニーナ”にお母様はいません。
ベルリーナの母親はシャイニーナが来た年に亡くなったのですから。
だから。
彼女が言っているお母様とお父様というのは。
「本当のお母さんとお父さん……?」
こくんと彼女は頷きます。
「にーなね、いっかいあってみたいの。どんなひとなのかなって……」
ゼクウェントは考え込みました。
彼女の望みは何でもかなえてあげたい。
でも、国王が知っていた最小限の情報しか彼は知らないのです。
「うーん、考えてみるね」
「本当ですか?」
彼はにっこりと微笑むと書斎へと消え行きました。