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第2犯 辺境伯による勧誘フルスイング事件

まずは職探し、お金集め、拠点探し、情報収集に最低限の装備ですよね。

いやー、ゲームですね

1


 街に入ったは良いが、何処もかしこも偉い騒ぎだ。一重にこの鳥のせいだが、俺はこいつに魔力を使わせたくない。

 回復には俺の思い出話と、俺の故郷、つまりは日本の食い物が必要だ。そんなものが存在するかなんて知らないけど、とにかく今は金が必要だ。


「皆さん、落ち着いて! 無害化してますから、この鳥は俺の従魔です!」

「あ、悪魔! なんて恐ろしい!」

「こんなのただの鳥ですよ。ほら、旋回して降りてこい」

「何故我が!」

「飯も食えなくなるかも知れないんだ! やれぇ! 俺と心中してぇのかぁ!」

「くそ! 腹一杯喰わせんとその素っ首切り落としてくれよう!」


 アンドラスは文句を言いつつも俺の言われた通りに飛んで、石畳に着地する。俺はそいつの頭を撫でると、両手を広げる。


「ご覧下さい、この通り! そもそも誰が悪魔を従魔に出来ましょう!? 巨大な鳥を手懐けただけの事! どうか、ご安心下さい!」


 俺はわざとらしくお辞儀をすると、街の人々は納得したように拍手を送ってきた。このスーツも異世界では珍妙なもので、大道芸人とでも思って納得したんだろう。


「さて、職探しだ。定石通りなら冒険者だろ!」


 俺は適当に街の人にギルドの場所を聴くが、相手を間違えたようだ。

 明らかにチンピラ、世紀末にいるヒャッハーのファンタジーバージョンだ。アンインストールしたいなぁ、もぉ。


「へぇ、兄ちゃん大それた鳥を飼ってんなぁ?」

「悪魔だって!? へっ、俺達が何年冒険者してると思ってんだ! こいつはアークイーグルだ! 騙されんぞ詐欺師め!」

「あ、すみません。邪魔して申し訳ありませんでした。では、私はこれで」

「待てや、金ある? 少し懐が寂しくてよ。儲けてる大道芸人様の施しが欲しくてね」


 ガシっと太い腕が俺の肩を掴んだ。それだけでも少し痛い。流石はヒャッハー、筋力が違う。

 まぁ、恐れる事は無い・・・・・・正当防衛ってこの世界で通用するか?


「おい、矮小な屑よ。その穢れた手を我が僕から離すのだ」

「あ? おい、アークイーグルって・・・・・・人間の言葉、話したかよ?」

「聞こえんのか? 我が僕から手を離すのだ。肉塊となり虫に喰われたくはあるまい!」


 アンドラスは翼を広げると恐ろしい表現でヒャッハー達を睨み付ける。鳥なのにスッゲー怖いなこいつ。


「う、うそだ! ホンモノ!? やべぇ! 逃げ」

「金をよこせ。有り金全部だ、よこせ」

「なんでだ! 貴様! この悪党め!」

「俺を人殺しにしないでくれよ。こいつにお前達を餌にしなくていいならそれに越したことない」

「く、くそぉ! 呪われろぉ!」


 ヒャッハー達は布製の財布と慌てて紙を一枚放り投げて逃げて行った。合計で金が2枚、銀が6枚、銅が30枚か。


「ふん、こんなものか。小物が持つ財などたかが知れてる」

「これだとどんな程度だ?」

「明日には宿無しだ」


 アンドラスは鼻で笑う。


「無いのなら奪えば良いのだ。さっきの貴様は我の下僕に相応しい振る舞いだったぞ?」

「ざけんな、ボケ。ギルドに行こう」


 俺はアンドラスに掴まるとまた空に舞い上がる。すると、少し離れた所に大き目の建物から煙が立っているのが見えた。とりあえずはあそこに行こう。



「え、えっと・・・・・・登録、ですか?」

「はい、冒険者ギルドへの登録が必要でして」

「そ、その・・・・・・鳥? は、モンスターですか? 私には悪魔に見えるのですが」

「なぜ? 悪魔とモンスターに違いでも?」

「悪魔は身体に特徴的な紋章があります。その、鳥には・・・・・・炎の様な模様がありまして、その模様はかつてこの地でドラゴンを退けた、アンドラスと呼ばれる悪魔と酷似しています」

「カッコいいので俺が描きました。偶然です、偶然。そんな悪魔をこんな細腕の男が手なずけるなんて、不可能です」

「懐かしいな、あのドラゴンは歳をとっており中々に手こずったものよ」

「だーっう! いぇえええええい! ああああああああぃ!」


 俺は叫んで後ろのバカの発言を誤魔化す。ギルドの中は広くなっており、アンドラスも入って来られたのだがそれでもコイツはデカい。今は翼を畳んで床に着地しているが、それでもデカい。俺はコイツ以外のモンスターは見ていないがコイツぐらいと考えればいいか?

 

「とりあえず! 登録お願いします! ランクってのは最下位で!」

「え? あの、仮にその鳥がアークイーグルでも凄い事ですよ? E~Sの中でもBの位は約束されますよ!?」

「ぜひとも最下位で! ノウハウも無い力だけの素人がベテランと肩を並べろと?」


 俺は食い気味でそう言う。

 この手の話しには「俺の実力はSクラスだ。キリッ」とか言うバカがいるかもしれないが。俺の経験上そんなタイプの人間には悲劇が降りかかる。真の天才なら底辺を甘んじて受け入れ、あっという間に下積みを済ませてしまうだろう。

 近道するのが天才じゃない、足踏みしないのが天才なんだ。

 まぁ、俺は腐れ凡人だし。危険な任務に就きたくないだけだが。


「我の力が底辺!? ぬかせ! 今すぐ上位の冒険者達を連れて来い! 全てのパーティーを瞬で壊滅せしめようぞ!」

「あーもう! うるせぇ! この鳥! 石喰わせるぞ! 石!」

「ひっ! や、やっぱり喋ってますよね!」


 ギルドの受付嬢が何かを言い終える前にギルドのカードに文様が浮かぶ。そこには俺の偽名「ククルス・ゼァーク」の名が彫られていた。


「珍しい喋るアークイーグルです! あーははは、じゃぁ依頼でも探しに行こうかなー! ははは!」


 俺は周りからの目線を感じながらいつの間にか背後に出来ていた人の群れをアンドラスで飛んで抜けると、ギルドを出た。


「喋るな!」

「我を愚弄するか! あんな野鳥と一緒にされたらたまらんわ!」


 そんな事を話していたら俺とコイツに1人の男が話しかけて来た。


「おおっ! なんて荘厳な佇まい、そして何とも凛々しい青年であろうか!」

「なんだ? 誰ですか?」


 見た所金持ちだ。それ以外の情報が無い、服装も街の住民とは違うし何より体形がふくよかだ。贅沢三昧の生活してますって感じだな。


「私はこの街を統治するウォール・グレーブ・ガイヤール辺境伯様の使いである。ニンベルと言うものです。この度はその魔獣を従えた人物である貴方様に、我が主が会いたいという事でお向かいに上がった次第でございまして! 是非、私と共に主に合ってはくれませぬか!?」

「お断りします」


 冗談じゃない。指名手配されるかと思ったが、まさか抱き込もうとするなんてな。

 コイツが威嚇射撃した事もあるが、俺は騎士団長殴り飛ばしたし。だが、確実にヤバい。俺の世界でもそうだが権力や、他人をある程度操れる立場にある人間はルールで縛らないといけない程の屑揃いだった。


「そ、そう言わずに! 辺境伯との謁見などと言う名誉はそうそう有るモノでは!」

「豚よ、消えるのだ。この男は其方の主人には会わん、目的は我とこの下僕の力であろう? 見え透いた嘘とおだての裏に脅しと悪意が見える。隠せると思ったのか? その気になれば、我はこんな土地など直ぐに焼けるのだぞ?」


 アンドラスは豚を睨み付けると、俺も断る。


「この鳥も嫌だと言ってます。私も事を荒立てたくない、ですのでお互いに引きましょう?」

「金ならいくらでも払います! 望とあらば美しい娘も! お望みの物は全て!」


 おーっと? 俺の地雷を踏み抜いたな? 金はともかく女だと? 俺は獣か?


「失せろ。コイツに命令してお前を焼きたくなった」

「ひっ!」

「それか、潰れるか? コイツで」


 俺は掌に巨岩を召喚するとそれを高々に掲げる。それを見て豚は腰を抜かしてしまう。

 通行人も絶句している。


「ひぃ! ひぃいいいい!」


 まともな言葉も発する事なく豚は走り去っていった。よしよし、走れそうすれば少しはスリムになれるだろうさ。

 さて、この辺にはヤベー噂が広がるだろうな。


「中々気に入ったぞ、貴様の名は何だ?」

「そうか、名乗って無かったな。俺は田中 乙哉。今は、ククルス・ゼァークで通す事にした」

「ふふふっ、貴様は息をする様に罪を犯すな? 騎士団長への暴行、国内への不法侵入、冒険者への強請りに、ギルドへの偽名加入、そして辺境伯の顔に泥まで塗った」

「うへぇ、大犯罪者だな。だが、顔に泥を塗った? どういう事だ」

「貴族はメンツを重んじる。その辺境伯とやら、貴様を殺すかさらおうとするかもな」

「うおおおおおおい! マジか、この街出るぞ! 死ぬ!」

「ふん、我が力を持てば貴様を暗殺など不可能だ。その結界は一撃では破れん」


 さて、どうしたものか。登録したが、依頼とかどうしろと言うんだ?

辺境拍とは貴族の一種で兵隊を囲える程の財力と領地を国王から許された貴族って認識です。間違ってるかも

能力抜きなら王の次にチートですね。

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