第10犯 少子化事件
魔女って萌なの?
「少子化?」
「うむ、その通りなのじゃ」
俺は大魔女様の屋敷につれていかれ、そこでこの魔女街の現状をきかされた。
どうやら、魔女は年を止められるらしく、人間とはそもそもの種族が異なるらしい。正確には別種レベルで魔力の量が違うのだと。
魔法使いは人間が魔女に近づく訓練を積んだ男のことらしく、女は魔女と分類されるとか。
年を取りたいなら自由らしいが、それでも魔女は希少なのだと言う。
「で? 転生者の子種なら強い子が生まれると?」
「その通りじゃ、お前はレベルこそ低いがわしの見てきた転生者達とは明らかに異なる。きっと強い子が生まれる、だから好きな女を捕まえて孕ませるがよい」
「そう言うのは、スキルに美少女大好き、ハメ太郎、ハーレム史上主義者とか、ついている下半身モンスターズに任せるよ。俺は親父になる覚悟は無い。この紅茶にも睡眠薬が入っているんだろ?」
「ぐっ、感の良い若造じゃ」
「歳を取らないなら子供なんて要らないだろ?」
「この魔女街は逃げてきた魔女達の街じゃ。戦争でな、何人も殺されて数がめっきり減ってしまったのじゃ・・・・・・子供が欲しいのは皆の本音じゃ」
「知らね、魔石買いに行くわ。じゃーな婆さん」
「鬼か! お主が頼みの綱なんじゃ!」
「ふざけんな! そんなに養えるか!」
俺はそう言うと扉ではなく窓から外へ飛び降りた。下に待機していたアンドラスの背中に着地して俺は街へと逃げた。
*
「魔石ならお一つ金貨10枚です!」
「なぁ、金貨10枚ってどんな値段だ?」
「恐らく人間で言う勝ち組、例えば王宮付きの料理人の月給ではないか?」
「つまりインテリ勝ち組バスローブ族の月給か、高っけぇなおい!」
「お、お客様は久しぶりのお客様なので半額に」
たじろいた魔女のお姉さんを困らせてしまった。女性には出来るだけ優しく紳士的に丁寧に、それが俺、田中乙哉の人生哲学。
「あっ、驚かせてしまい申し訳ない。大丈夫です、では・・・・・・金貨がそう言えば盗賊からも剥ぎ取って、いや、寄付してもらったから」
所持金:金貨258枚
やったぜ!
「炎、氷、雷、風・・・・・・ん? 無属性?」
「無属性は、お客様によって性質を変化させる魔法属性です。こちらは希少なので、金貨30枚になってしまいますが」
「買った。全属性、キャッシュで値切りはしない。あっ、この魔具を修理、と言うか強く出来ないですか?」
「で、出来ますが職人の魔女に任せるので、しかもこんな凄い魔具を見るのは始めてです・・・・・・金貨50枚は」
「頼みます。お金はその場で値切り無しで払うので直ぐにでも見て下さい」
「はっ、はい!」
魔女のお姉さんは忙しいそうに魔石をかき集め、魔法で職人に連絡を取っていた。
「羽振りがよいな? 我は値切る」
「それが正解だろうが、そうしない理由がある。あのお姉さんが可愛いからだ」
「ん? 気に入った女が出来たか?」
「バカ言うな。男はな、下心無しに女には優しくするものだ彼女にもし恋人がいたり、子供がいたりしても俺の金で少しでも幸せに貢献出来るって良いことだろ?」
「女限定か」
「当たり前だ、野郎は死ね」
アンドラスとツインは不思議そうに聴いていたが、俺の人生哲学は納得出来れば損もするだ。
そうこうしている内にお姉さんが戻って来た。石を集めるだけなのに時間がかかったな。
「お客様へのサービスです。魔石にルーンを刻んでおきました。これで普通のよりも3割ほど強い力で魔法を発動出来ます!」
「ありがとうございます。貴女の人生に多くの幸せが訪れますよう」
そう言って魔石を受け取って俺は渡された鍛冶屋へと向かった。
そこには少し体格の良い魔女が待っていた。
「アンタか!? 珍しい魔具を持ってる外からの男ってのは」
「そうです。これが、例の品です。可能でしょうか?」
「うおーっ! なんじゃこりゃ!? わははは、面白い仕事を持って来たな。よし、見てやるよ金は半額でいいぜ? 面白い仕事させてくれる礼だ」
「いえ、それはお気持ちだけで。金貨50枚は前払いで、これは私なりの礼儀です。それに、お金を払わず逃げられたら困るでしょ?」
俺は賃金をしっかりと払う。
職人の魔女はへぇーっと言うと俺をまじまじと見る。
「大魔女様が子供生ませる為に呼んだ理由が解るよ。あんたは誠実だ、良い奴だが、女を囲って生ませるだけ生ませるって筋の通らないことはしたくねーんだろ?」
「当たり前ですよ。女性は物じゃありません、それに父親となるなら子供には一人の女性を母と紹介したのですよ」
「はははっ、良い男だねぇ」
「いいえ? 私の故郷にはもっと良い男達がいましたよ」
俺はそう言うと鍛冶屋を離れた。
かなり金が消し飛んだが、どうこうできない。宿屋を探そうにも、たぶん無い。
隔絶された土地ならば宿屋を開いても意味ねーからな。
「アンドラス、町外れで野宿としようか」
「そうだな。お前が女に襲われる姿も見てみたいがな」
「ふざけるな。さて、どうしたものか」
俺達は適当に人気の無い墓地の近くで焚き火をしてそこに街で買っておいたテントを張る。
テントなんて言っても屋根が作れる程度で、雨か降れば雨漏りしまくりなゴミ使用の物だ。ブルーシートって偉大だな、こんな布屋根に比べたらバッキンガム宮殿だ。
「はぁ、この墓が死んだ魔女たちの。どうやらまだ十代なのに死んだ奴もいるみたいだな。石碑にご丁寧に書いてありやがる」
俺は焚き火に木の枝を放り込みながらぼんやりと呟いた。
日本では戦いで死ぬ十代の女の子なんて、アニメの中にしかいねーって感じなのにな。まぁ、なんだ。嫌なもの見たな。
「ねー、ご主人。僕、お姉ちゃん達に甘えて来るね! 魔力切れしそう!」
「良いぞ、教えた様に薄い本はダメ。守れよ? 破ったら殺す」
「はーい!」
ツインを見届けて、俺は岩に寄りかかってアイテムボックスから魔石を一つ取り出す。
火の魔石か。
「ファイヤーボールとか撃てるのか?」
「撃てるだろうが、ルーンで強化されたから撃てる程度だ。普通なら炎を一瞬だけばらまく位だな」
「憧れ! 今ここで実現するか!」
墓の方角は失礼だから、霧の方角へぶっぱなすか。どうせ、誰もいないだろ。
「ファイヤーボール!」
俺が唱えると手のひらからバスケットボール位の火の玉が打ち出され、霧の方角へ消えて行った。
「うおっ! すげぇ! 俺、魔法使っちまった! でもこの守れよ名前、捻りが無いな」
「あまり叫ぶな、恥ずかしい」
「何を言っているんだ? 男の大人ってのは、子供と一緒に遊べる心を持っているもんだ。大人であって子供にも帰れる! それが、男に生まれた事の特権だ!」
俺は炎を腕にまとう。全く熱くないし、服も燃えない。いいな、カッコいい!
「火拳!」
「なんかわからんが、その名前はやめろ」
「スターバースト! ストリー・・・・・・なんか気にいらねぇ。ファイヤー!」
遊び心を子供のままにしておける、これは子供を生ませることしかしできない男が持つ子供との繋がりだ。俺の父親が、そう言う人だった。
お前を生む仕事を母さんに、全て任せてしまった。なら、俺は少しでもお前の側にいよう。友人として遊んで、父親として精一杯頑張る背中を見せようってな。
「親父が野球ボールに火を着けて投げて来たのを思い出すな」
「お前の親父はどうかしてるぞ?」
「悪魔のお前が言うのか? 笑える冗談だ!」
俺は今度は雷の石を取ると、炎と電気をまとってポーズを取る。
「カッコいい! ははっ! あ、そうだ」
俺は岩を召喚して見ると、思った通り岩に属性が付与された。
「俺は神になったぜ! 人間様の秘奥義じぁああ! くたばれぇい!」
「ぎゃああああ!」
ん? なんだ? アンドラスの声じゃないな?
俺は岩を投げた方角を見ると、そこには結構な人数の鎧を着た兵士たちがいた。その一人に岩が直撃したのだろうな、死んではいないけどHPがかなり減っている。
属性ってやべーなおい。
「貴様! 魔法使いか!」
「また面倒事だぜ? クソ悪魔」
「我は慣れようか悩み中だ、脆弱な者よ」
それが、男の特権だ




