受け止めるべき真実の欠片(3)
日に日に、僅かながらにも早まっていく夜明け。
朝一番の日の日差しを、咲月は寝不足の目を擦りながら眺め――その眩しさに思わず目をそらした。
布団の中、抱えた枕に顔を埋めれば、目に痛い眩しすぎる陽光は心地よい眠りに誘う闇に代わる。
しかし、一晩かけて淡々と語られた紅姫の言葉の数々は、脳裏を延々とシャッフル&リピートモードで再生され続けている。
吸血鬼とういう生き物の事。
朔海に下されたという命令の事。
……そして。
葉月が、朔海の心臓を流れる血を得たならば、半吸血鬼である己の血肉を純血のそれへと昇華する事が出来る。
朔海が、葉月の心臓を流れる血を得たならば「龍王の血」の力を手に入れる事が出来る。
――そして。
「吸血鬼に咬まれた人間は、吸血鬼になる。……よく聞く話だけど」
紅姫は言った。
「結論からいえば、単に血を吸われただけで吸血鬼になったりはしないから……正確には間違った情報よ。……だけど、あながちハズレ、とも言えない」
今ある、悪魔からの得た力を継ぐ吸血鬼一族の、吸血鬼たる力の全ては彼らの持つ血ゆえの力。ごく普通の人間と大差ないはずの肉体は、その力によって著しく強化され、身体能力は大幅に向上し、殆ど不死身と言っても過言ではない程の回復力を得た――が、全身を廻る血が持つ闇の力は。
「人間に限らず、こちらの世界に存在する生物にとってそれは毒にも等しいもの」
そして。その血を、咲月が得たならば。
「……それこそが。全てが上手くいく、たった一つの方法」