第三話 本田茜
「すみません。お隣に座ってもよろしいでしょうか?」
そう言ってきた少女は紛れもなく美少女だった。ウェーブがかった金髪。愛らしい顔立ち。女の私でさえ一瞬息が止まってしまった。
「……ええ、どうぞ」
なんとか口を動かして返事する。
「ありがとうございます!この学校には私の知り合いがいなくて心細くて……」
「いいですよ。私も一人でどうしようかと思っていたところですから」
「!そう言ってもらえると嬉しいです。……あっ、自己紹介が遅れたんですけど、私は本田茜と言います」
「私は如月玲奈って言います。よければ玲奈って呼んでください」
「まあ!では私のことも茜と呼んでください」
「わかりました。よろしくお願いいたします、茜」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします、玲奈」
私たちは顔を見合わせてクスッと笑った。
「こんなに早くから友達ができるとは思いませんでしたわ」
「私も。私は人付き合い苦手なタイプだから……」
「そうなんですの?玲奈って活発で明るい女の子って感じがするのですけど」
「あー。それはよく言われる。私はどちらかというとマイペースなほうだから、活発とかとは違うんだよね。でも自分から行動することは多いから、そう思われることは多いかな。もし私が話聞いていないようだったら、結構強めに言ってね。そうしないと私絶対話聞かないと思うから」
「わかりましたわ」
「……ところでさ、茜ってどっかのお嬢様?喋り方が……」
私がそう言うと茜は若干肩をビクッと動かした。
図星か……。だがあの様子を見るにばれたくないってところかな。
「もし、私の喋り方が気に入らなかったら、『そのままで大丈夫ですわ!』」
茜は勢い良くそう言った。だが、少し恥ずかしかったのか、縮こまって下から目線でお願いしてきた。
「私、今まで仲良くできた子なんていなくて。父と母が厳しくて普通の友達ができなくて。……だから、高校では誰も知り合いがいなくて親に干渉されないここを選びましたの。……もちろん、別の理由もありますけど……。だから……私とはその普通の友達が使うような言葉遣いで話してくれませんか?」
かわいい。私が男だったら恋に落ちているぞ。
内心ではそう考えながら返事をする。
「もちろん。茜とは仲良くなれる気がするよ」
「私もです。よろしくお願いしますわ」
「よろしく」
私が手を差し出すと茜も手を出して握手をしてくれた。
嬉しい。可愛い子と仲良くなれるとは。ついてる。
「間もなく、入学式が始まります。皆さん、静かにお待ちください」
思ったよりも楽しい高校生活が送れそう。