200文字小説集 『メリークリスマス』
【サンタさんへの手紙】
「サンタさんにとって、思い出深い出来事って何ですか?」
「そうですねえ。四歳の男の子の家にプレゼントを置きに行った時の事なんですが。枕元に、手紙が置かれてたんです。結構いるんですよね、サンタに手紙を書く子供って」
「ほう、どのような内容だったんです?」
サンタさんへ
いもうとがほしいので、ふとんのなかでは、おかあさんとなかよくしてください。
「……四歳なのに、ずいぶん色々知ってますね」
「色々知ってましたね」
【リア充の真理】
「お前は彼女いるんだろ。いいよなあ、リア充は。クリスマスが楽しみでさあ」
「お前たち、クリスマスの度にそうやってひがんで俺に絡んでくるけどな。別に俺の彼女、クリスマス限定じゃないから。年中いるから。つまりリア充ってのは年中リア充であるからリア充と言われる訳であって、別にクリスマスだけ特別リア充って訳じゃねえんだよ。非リア充が、年中非リア充なのと一緒だって」
友人の姿を見たのは、この日が最後でした……。
【チート能力】
地球の端っこに住む女が、日本中の避妊具に穴をあけた疑いで逮捕されました。
女は避妊具に穴をあける能力をチートと称し、更には神様から貰った能力だと主張したうえ、
「クリスマス間近に避妊具に穴をあけておけば、少子化防止に役立つと思った」
「避妊具に穴があいていれば、恐怖で不貞行為等の問題も減ると思った」
「地球のためを思ってやった」
「リア充が羨ましかった訳ではない」
等と供述している事から、精神鑑定の必要が――
【将来の夢】
「ぼく、将来はサンタさんになる!」
息子が突拍子もなく、そんなことを言った。
「え、どうして?」
「だってサンタさんは、ほとんど無職に近いと思うんだ! クリスマスイブの晩だけ頑張れば、あとの三百六十四日は無職状態のはずだ! なのに生活が成り立ってるってことでしょ? すごいよね! 羨ましい! だからぼくはサンタさんになりたい! ていうかなる!」
私は唖然とした。
今年四十歳の息子(ニート)は、何を言っているのだろうか。
【サンタさんへの手紙2】
引きこもりがちな男の子のところに、プレゼントを届けに行った。
彼は枕元に手紙を置いてあった。無論、サンタの私宛てだった。
その場で開封して中を読んだ。
サンタさんへ
ともだちをください
私は懐から万年筆を取り出し、その場で返信を書いた。
年に一度しか会えないけれど、サンタさんが君の友達第一号だ。
友達第二号は、トナカイさんだよ。
第三号は、君が勇気を出したら見つかるはずさ。
友達は君の部屋ではなく、外にいるんだよ。