表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
393/622

1.黄金の谷、雲の城<1/4>


 其は、東方から来し龍が身を休める場所

 龍が横たわる青白き川には砂金が流れ、棚田には黄金を実らせ頭を垂れる穂が揺れる、豊麗たる黄金の谷



 ※ ※ ※



 明け方、馬の蹄の音で目が覚めた。

 野営地を半分、地震と火事とで避難してきたラレンスの住人の避難所として明け渡しているので、昼夜問わず多少賑やかなのは否めない。それでも、危険さえなければ多少の騒がしさも不便さも問わず眠れてしまうのが、旅慣れた者の利点であるとも言える。

 ただ、さすがに夜も明けきらない頃合いに馬を動かされれば、理由が気になるものだ。

 グランは寝静まった天幕の中で静かに身を起こした。

 ほかに、目を覚ました者はいないようだ。使える天幕が減った分、割り当てられた人数が増えて、同じ天幕を使う兵士の数が倍になったため、ランジュはユカと一緒にルスティナの天幕に預けられている。場所が近くなったエレムも、寝ている間まできっちりとしたもので、腹の上で手を組んで姿勢良く仰向けに眠っている。

 人数が増えた分、天幕の中は熱がこもって、夜明け前だというのに蒸し暑い。念のために様子を見に行くか、と思ったところで、外に人の気配を感じた。天幕の向こうがぼんやりと明るくなる。小さなランプを手にした誰かが近づいてき、グラン達の天幕の入り口の布をがわずかに押し開いた。そよりと風が通る。

 顔をのぞかせたのは、エスツファの使いぱしりに最近よく使われている、赤毛の若い兵士だ。

赤毛は顔からランプを遠ざけて中を見回すと、グランを見つけてそっと手招きをした。

 グランはエレムの腕を一瞬掴んで放し、無言で立ち上がった。気がついたエレムは戸惑った様子で目だけを動かした後、枕元の剣を片手に出口に向かうグランを見つけ、半分寝ぼけた様子ながら同じように静かに後に続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ